2024.01.22

キャリア教育の視点からの取り組み『キャリア・タイム』

勤務校では、学校教育目標を「心～魅力ある生徒の育成～」と掲げ、その実現に向け、基礎的・汎用的能力の育成を目指した、様々なキャリア教育の取り組みを進めています。その成果が認められ、平成31年１月には、キャリア教育優良学校として、文部科学大臣表彰を受けました。今回は『キャリア・タイム』について紹介します。

大阪市立中学校教諭、日本キャリア教育学会認定キャリアカウンセラー　青木　信一

『キャリア・タイム』とは

キャリア・タイム

本校では、土曜授業や特別活動の時間を中心に実施している、キャリア教育に関する取り組みを総括して『キャリア・タイム』とよんでいます。その一例を紹介します。

１年生
・職業講話……各業界で活躍されている職業人の方に来校いただき、仕事をしていくうえでの苦労や、やりがいなどのお話を聴かせていただく。地域の方や卒業生など、本校にゆかりがある方に講師を依頼。（保育士・歯科医・調理師・介護士・司法書士・美容師・弁護士など）
・笑育……アナウンサーや漫才師・芸人などを学校に派遣し、プロのアドバイスの下、子どもたちが実際に台本から漫才を作り、人前で発表するという活動を通して、キャリア教育の視点からの基礎的・汎用的能力の育成や21世紀型スキルの育成をめざす、松竹芸能と学校との協働プログラム。（過去記事で紹介）
２年生
・出前授業……大阪企業家ミュージアムを活用した「企業家精神」の醸成、大阪ユニセフ協会と連携した「100人の村から」ワークショップ、ＮＰＯ法人ＪＡＥと連携した「らしさ発見プログラム」など。
・職場体験……元々は多くの企業や事業所、官公署や教育機関、福祉施設などでの職場体験学習を実施していたが、コロナ禍以降は、企業やＮＰＯ法人との協働で「リモート職場体験学習」を実施。今後については検討中。
３年生
・高校授業体験……多くの高校と連携し、将来のさまざまな職業を視野に入れた、出前授業を実施。自分自身を内観させ、将来への展望を持たせるための取り組み。

キャリア教育の目標は、次の３点です。
➀自分自身をしっかりと内観させ、将来への展望を持たせると共に、社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てる。　
②３年間を見通した、系統的・横断的なキャリア教育を推進する。
③学校外の教育資源（保護者・地域・産業界・関係団体等）と積極的に連携したキャリア教育を推進する。

この目標を達成し、子どもの基礎的・汎用的能力を育成するため、それぞれの取り組みは独立したものではなく、マニフェストや年間指導計画に基づき、学校全体として、系統的で横断的な取り組みを実施しています。

「キャリア・パスポート」と「キャリア・ファイル」

「キャリア・パスポート」とは、子どもたちが小学校から高等学校までのキャリア教育に関わる諸活動について、特別活動の学級活動及びホームルーム活動を中心として、各教科等と往還し、自らの学習状況やキャリア形成を見通したり振り返ったりしながら、自身の変容や成長を自己評価できるよう工夫されたポートフォリオのことで、現在は全ての小・中・高等学校で導入されています。
本校では「キャリア・パスポート」とは別に、学校独自の「キャリア・ファイル」を作成しています。この「キャリア・ファイル」には、それぞれの取り組みの事前・事後に、子どもたちが書いたアンケートや感想、振り返りなどを全て綴じています。世界で１つだけの、そして自分だけの「キャリア・ファイル」は、卒業時に持ち帰ります。成人したある卒業生は「キャリア・ファイルは一生の宝物です」と言っていました。人のキャリアは「ある年齢に達すると自然に獲得されるものでなく、発達を促すには、外部からの組織的・体系的な働きかけが不可欠である」といわれています。そう考えると、組織的・体系的な外部からの働きかけである、さまざまな取り組みと同時に、事前・事後の活動を充実させ、その成果物をきちんと蓄積していくポートフォリオによる振り返りと見通しの繰り返しは、とても大切なことだと考えています。

「らしさ発見プログラム」とは

また、４年前より「キャリア・タイム」の一環として、ＮＰＯ法人ＪＡＥと連携した「らしさ発見プログラム」を展開しています。このプログラムは、全国にいるキャリアコンサルタントと、子どもたちをオンラインで繋ぎ、一人ひとりに寄り添った対話を通して、将来に向かっての歩みを応援するというプログラムです。
次回より、この「らしさ発見プログラム」を紹介していきます。