みなさんこんにちは。毎回香港の教育事情についてお届けしているネイホウシリーズですが、今回は香港での多くの日本人児童が学びの場として通っている日本人学校についてレポートしたいと思います。
現在香港には、1つの日本人学校があります。この香港日本人学校は香港島に小学部1校と中学部1校、そして新界の大埔に小学部1校があり、全ての学校は香港日本人学校維持会をはじめとする組織によって運営されています。(大埔校には国際学級English Sectionがあります。)
日本人学校は香港特別区政府から私立校として認可されています。平成17年度現在、3校併せて約1700人の児童生徒が香港内の日本人学校で学んでおり、今回わたしが取材に訪れた香港日本人学校小学部香港校(浦幸子校長)には、630人ほどの児童が在籍しています。生徒の転出入によって入れ替わりが激しいのが特徴だそうで、今年の9月の新学期からは63人もの児童が編入学してきたというからその多さに驚かずにはいられません。
学校では、日本の文部科学省から無償で配布される日本の教科書を使って授業が行われます。教師達の大半は、文部科学省から2~4年間の期限付きで派遣されてきます。わたしが小学部香港校を訪問した際に学校を案内してくれた立野教頭先生は、2回目の派遣で香港にきたそうです。応募の時点では、行き先となる国の希望を出すことはできません。
学校の中にひとたび足を踏み入れると、そこはまさに日本の学校。掃除の行き届いたきれいな校舎は気持ちが良く、児童の「こんにちは」という元気の良い挨拶で身が引き締まりました。校舎は地下2階、地上5階建てですが、山の斜面に建っているために地下からも木々が見え、太陽の光が入ってくる設計になっています。児童たちに日本の文化をふれさせようと、広々とした和室も備え付けられています。この部屋には炉も切られており、本格的なお茶会もできるそうです。この和室の他に、畳が一面に敷かれている多目的教室もあり、学級ごとにたたみの上でお弁当を食べることもあるといいます。
教頭先生は「ただ畳の上で寝転んで、体で日本を感じてもらえればいい。」とお話してくれました。『国際社会の中で互いの違いを認め合い尊敬し合いながら、自己を確立し、心身ともに健康で豊かな心と確かな学力をもった児童の育成を図る』というのがこの日本人学校の教育目標ですが、国際人を養成するというだけでなく日本人としてのアイデンティティーを忘れさせないようにというのが日本人学校ならではの取り組みであると感じられました。また、この学校には10台もの和太鼓を所有している和太鼓クラブもあります。このクラブは日本の文化交流会などで引っ張りだこなのだそうです。
また、この学校の授業の特色として、英会話の授業の他には図工イマージョンがあげられます。イマージョンとは、外国語で各教科の指導にあたることを意味します。ここでは、第4学年から図工の授業は英語で行われています。ネイティブの教員一人と、日本人の教員一人によるTT(ティームティーチング)形式で授業が行われます。日本人の教員は、アシスタントに徹することを指示されていると言いますから、児童に少しでも多くの英語に触れさせよう、親しみを感じさせようという学校側の強い意図が感じられます。実際に児童が制作した木製の船を見せてもらいましたが、各々英語で名前やメッセージを書いており、児童が英語に親しみを感じている様子が伝わってきました。
校舎や授業の見学をさせてもらった後に、立野教頭先生がご自身のモットーをお話してくれました。「人に尋ねることができさえすれば、なんでもできる」というお言葉が大変心に残っています。多くの児童は近い将来、中学・高校・大学等の受験のためにいわゆる机上の受験勉強に取り組むことになるでしょう。確かな学力のみならず、自らの考えていることを正確に伝えることや、相手の気持ちを言葉や表情から汲み取ることのできるようなコミュニケーション能力をつけることもまた、学校での大切な学びであるのだ、と立野教頭先生のお言葉から再確認しました。
香港日本人学校小学部香港校
HONG KONG JAPANESE SCHOOL PRIMALY SECTION
取材・文 須藤 綾子
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