ネイホウ! 香港より教育事情探訪記(vol.5)
今回のテーマは香港の大学生の留学について。香港では海外留学が盛んに行われていますが、どうやらそれは就職活動と密接に関係しているようです。
香港内で大学は7つありますが、定員数は生徒の数に対して十分でなく、大学進学を果たすことは決して容易なことではありません。定員割れが目立つ日本の大学とは大分状況が異なるようです。
そして、香港の人々は、良い仕事に就くためには"大学進学"と"英語"は必須条件だという意識が強くあります。最近はこれに普通話、つまりスタンダードな中国語をプラスする傾向が強いそうです。
このような背景があるからでしょうか、セカンダリースクールの7年目を終了後に海外の大学に進学する生徒も多いのが現状です。
◆香港の学生の主な留学先
主な留学先としては、アメリカ合衆国、カナダ、イギリス、オーストラリアがあげられます。そして、その4カ国の中でも、近年はアメリカ合衆国とオーストラリアに人気が集中しています。(表を参照)
海外の大学へ進学する香港の学生数(人) | ||||
1997年 | 1998年 | 1999年 | 2000年 | |
アメリカ合衆国 | 4426 | 4106 | 4433 | 5392 |
カナダ | 1962 | 2121 | 2429 | 2198 |
イギリス | - | - | - | - |
オーストラリア | 3542 | 3467 | 4396 | 5534 |
2000年 香港教育省調べ |
香港の学生がイギリスへ留学に行く際には学生ビザは必要ありません。この調査は学生ビザ取得状況の調査であったため、イギリスへの留学生数は定かではありませんが、イギリスも人気上位4カ国内であるようです。
◆留学先として人気の高いアメリカ合衆国
アメリカ合衆国で留学している学生の出身地として、香港は10年以上トップ10に入っています。人気の高いアメリカ合衆国の中でも、最も人気がある州はカリフォルニア州。次いでニューヨーク州、マサチューセッツ州。カリフォルニア州への学生の集中率は高く、1999-2000年にカリフォルニア州へ1500人以上の学生が行ったのに比べ、第2位のニューヨーク州へはその5分の2程度の600人ほどのようです。
アメリカ合衆国に留学する学生の73%が学士過程へ、21%が修士課程へ在籍しています。残りは2年制大学やその他の機関で学んでいるようです。
専攻する分野としては、40.8%もの学生がビジネス・マネージメントを学んでいるようです。次いで工学・コンピューター科学・数学が23.1%、芸術科目・社会科学・人間科学が13.5%と続きます。
◆香港の雇用者に高く評価されている留学
90年代の初めの急速な教育の拡大によって香港内での教育の質が低下したとこともあり、海外の教育の方がより質が高いと考える人が多いようです。そして、注目すべきなのが、多くの雇用者は海外の大学で学ぶことを高く評価しているということです。
Institution of International Education(国際教育協会)の調べによると、雇用者たちは香港内の大学を卒業した学生より、海外の大学で学んだ学生のほうが以下の点で優れていと評価しています。
柔軟性がある
オープンである
独立心が強い
発言力がある
国際経済の動向に対して視野が広い
雇用者がこのように、海外留学経験のある学生を高く評価することを若い世代も実際に感じており、海外で学ぶことを選ぶ学生が多い要因とも言えるでしょう。上記の6つのポイントは香港の学生のみならずとも、情報化・国際化社会と言われる今を生きるわたしたちにとって、心に留めておく価値のあるものではないかと思います。
意外なことに海外へ留学する学生の数は近年減少傾向にあるようです。香港内での教育の場が広がったことや、香港内の経済の悪化がそれに拍車をかけたようです。
IIE(国際教育協会)は公式ウェブサイト上で、今後の香港の学生の海外留学について以下のような見解を示しています。
さて、短期留学等で海外に行くケースはどうでしょうか。私の学んでいる香港大学での様子を。
◆香港大学での短期交換留学
香港大学と交換留学の提携が結ばれている大学は世界に100大学ほどあり、東・東南アジア、オセアニア州、北アメリカ、ヨーロッパの20カ国ほどの国にまたがっています。海外留学でも人気の高い国、アメリカ合衆国、カナダ、イギリス、オーストラリアのそれぞれには順に16校、10校、8校、9校の提携校があります。アメリカ合衆国の16校のうち9校はカリフォルニア大学の分校であるため、やはりカリフォルニア州との関わりが密接のようです。カナダの10校に並んで、香港大学は日本にも提携校が10校あります。また、この短期交換留学は、香港内の多くの基金団体に支援されているようです。
この制度を利用しての短期留学の他にも、夏休みに語学研修に日本や韓国、ロシアに行くコースもあります。また、英語教育専攻の学生は、2年次に(日本では3年次にあたる学年)オーストラリアにて2ヶ月間の語学研修とホームステイを経験することになっています。夏休みに、学部や学科ごとの団体で研修旅行を計画し、アメリカ合衆国や中国にフィールドトリップへ行く学生も多いようで、海外での経験を多くの学生が意識しているものと思えます。
取材・文:須藤綾子
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