アメリカ・ロサンゼルス 公立校のバイリンガル教育
アメリカでは、公立校といえどもユニークな教育法を取り入れている学校がある。 今回紹介するのは、イマージョン(Immersion)と呼ばれるバイリンガル教育法を導入している、エルマリノ小学校(ロサンゼルス・カルバーシティ市)。一般の小学校では、通常、英語を使用して授業が行われているが、このエルマリノ小学校では、英語以外にもう一つの言語を流暢に話せる、バイリンガルな生徒を育てることを目的とし、二ヶ国語教育が行われている。
5歳から外国語にふれさせるイマージョン教育
今回、電話取材に応じてくれたエルマリノ小学校のサラ・フィールズ校長によると、「他ではまだ試されていない、中国語や韓国語、日本語など特定のマイナーな言語のみに教育資金が与えられることになったのですが、地元の教育委員会がこのうち、おそらく日系人が多いという地域的理由で日本語を選択したようです」(注:ロサンゼルスは、ハワイ、ニューヨークと並び、全米で最も日系人口が多い都市の1つ) 。
この学校には、スペイン語と日本語の2つのコースがあり、キンダーガーデン(小学校に付属している1年教育の幼稚園)入学時にどちらかを選択し、5年生までの6年間をかけて外国語を習得する。
たとえば日本語コースの場合、5歳でキンダーガーデンに入学した当初は、習得を目的としている言語、すなわち日本語を中心に授業が行われ、英語はあまり使用されない。年齢が若く、頭が柔らかいうちに、外国語に日常的にふれさせ、自然に吸収させてしまうのがイマージョン教育の特徴だ。その後、学年が上がるに従い、英語での授業の割合を増やしていき、小学校を卒業した後、一般の中学に入学しても支障がないよう、英語も完璧なネイティブ状態に仕上げる。
バイリンガルを育てるといっても、語学学校と異なるのは、一般的な会話文を習うのではなく、算数、理科、体育などの教科をそのまま外国語で習う点。学年によっては、午前中は日本語、午後は英語で授業が行われており、バイリンガルの教師が時間によって言葉を切り替えて指導を行っている。
「年齢が低いうちは、他校の生徒と比較して、英語に多少の遅れが生じる場合があります。でも、このプログラムは6年間かけて完成させるものなので、長い目でみてほしいと思っています」とフィールズ校長。
ユニークな方針と高い学力で、全米ブルーリボン賞も獲得
教材は先生と生徒で手作り
彼が家で勉強する時に使っているのは、日本語の単語カード。「米」「教室」などの漢字の他、「カルバーシティ」「エルマリノ」など、地元の地名が書かれたカタカナのカードもある。こういった指導教材は、先生たちが試行錯誤しながら考えた手作りの品が多い。生徒にプリントが配られ、それを各自が家で切ったり貼ったりして、カードを完成させるという。
彼に学校のイヤーブック(毎年発行されるアルバム。日本の卒業アルバムとは異なり、全学年の生徒の写真が掲載されている)を見せてもらうと、Taiko(太鼓)、Undoukai(運動会)、Odori(日本舞踊)などで子どもたちが日本の文化にふれているのがよく分かる。またスペイン語クラスの子どもたちはフラメンコを習っているのが興味深い。
ロサンゼルスという場所柄、現地在住の日本人の親を持つ子どもたちの割合も高いが、たとえ苗字が日本名であっても、両親が日本語をまったく話さない日系3世、4世の家庭の子どももいる。
キャメロン君の場合は、ひいおじいさんが日本人。でも家族の誰も日本語を話さない。そのため、近所に住む日本人女性に時々宿題を手伝ってもらったり、学校だけでは分からないところを助けてもらっているそうだ。
5年生になると、卒業旅行があり、日本でホームステイをするのだという。その日まで、頑張って日本語を勉強してね、キャメロン君。
5歳から外国語にふれさせるイマージョン教育
今回、電話取材に応じてくれたエルマリノ小学校のサラ・フィールズ校長によると、「他ではまだ試されていない、中国語や韓国語、日本語など特定の マイナーな言語のみに教育資金が与えられることになったのですが、地元の教育委員会がこのうち、おそらく日系人が多いという地域的理由で日本語を選択した ようです」(注:ロサンゼルスは、ハワイ、ニューヨークと並び、全米で最も日系人口が多い都市の1つ) 。
この学校には、スペイン語と日本語の2つのコースがあり、キンダーガーデン(小学校に付属している1年教育の幼稚園)入学時にどちらかを選択し、5年生までの6年間をかけて外国語を習得する。
たとえば日本語コースの場合、5歳でキンダーガーデンに入学した当初は、習得を目的としている言語、すなわち日本語を中心に授業が行われ、英語はあまり使 用されない。年齢が若く、頭が柔らかいうちに、外国語に日常的にふれさせ、自然に吸収させてしまうのがイマージョン教育の特徴だ。その後、学年が上がるに 従い、英語での授業の割合を増やしていき、小学校を卒業した後、一般の中学に入学しても支障がないよう、英語も完璧なネイティブ状態に仕上げる。
バイリンガルを育てるといっても、語学学校と異なるのは、一般的な会話文を習うのではなく、算数、理科、体育などの教科をそのまま外国語で習う 点。学年によっては、午前中は日本語、午後は英語で授業が行われており、バイリンガルの教師が時間によって言葉を切り替えて指導を行っている。
「年齢が低いうちは、他校の生徒と比較して、英語に多少の遅れが生じる場合があります。でも、このプログラムは6年間かけて完成させるものなので、長い目でみてほしいと思っています」とフィールズ校長。
ユニークな方針と高い学力で、全米ブルーリボン賞も獲得
ちなみにこの学校は、こういった特殊な教育法を行っているにもかかわらず、市内に6つある公立小学校の中で、最も学力レベルが高く、全米の優れた学校に 与えられるブルーリボン賞も獲得している。そのことを校長にたずねると「それはきっと教師のレベルが高いのと、教育熱心な親が集まっているからではないで しょうか」とのこと。
バイリンガル教育というと、それだけでなんとなく魅力的に聞こえるが、この学校は私立ではないため、カリフォルニア州の基準にのっとった、州標準の教育 カリキュラムで授業を進行する必要がある。一般の学校では、英語のみで授業を行えばよいが、ここでは英語以外の言語も習得するために、生徒も教師も、その 分だけよけいに努力しなければならない。実際、他校と比較すると倍近い宿題をこなさねばならず、親の負担も大きい。そんな苦労があっても、この学校に入る ために、わざわざこの学校に入るために引っ越してきたりする人も多いそうだ。公立でこのような特殊なバイリンガル教育を行っている学校はロサンゼルスでも 例外的で、また市内在住者が最優先のため、知り合いの住所を借りて、越境入学しようとする人がいるほど(これは違法)、エルマリノ小学校は人気が高いとい う。
教材は先生と生徒で手作り
彼が家で勉強する時に使っているのは、日本語の単語カード。「米」「教室」などの漢字の他、「カルバーシティ」「エルマリノ」など、地元の地名が書かれた カタカナのカードもある。こういった指導教材は、先生たちが試行錯誤しながら考えた手作りの品が多い。生徒にプリントが配られ、それを各自が家で切ったり 貼ったりして、カードを完成させるという。
彼に学校のイヤーブック(毎年発行されるアルバ ム。日本の卒業アルバムとは異なり、全学年の生徒の写真が掲載されている)を見せてもらうと、Taiko(太鼓)、Undoukai(運動会)、 Odori(日本舞踊)などで子どもたちが日本の文化にふれているのがよく分かる。またスペイン語クラスの子どもたちはフラメンコを習っているのが興味深 い。
ロサンゼルスという場所柄、現地在住の日本人の親を持つ子どもたちの割合も高いが、たとえ苗字が日本名であっても、両親が日本語をまったく話さない日系3世、4世の家庭の子どももいる。
キャメロン君の場合は、ひいおじいさんが日本人。でも家族の誰も日本語を話さない。そのため、近所に住む日本人女性に時々宿題を手伝ってもらったり、学校だけでは分からないところを助けてもらっているそうだ。
5年生になると、卒業旅行があり、日本でホームステイをするのだという。その日まで、頑張って日本語を勉強してね、キャメロン君。
アメリカ・ロサンゼルス在住:佐々木朋子
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