2006.04.25
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

16歳の挑戦~カナダ バンクーバー島ナナイモの高校に留学!

15歳でカナダに留学した遠竹エイドリアン君。エイドリアン君は、アメリカ生まれの日本育ち。日本の学校で教育を受け、英語力は一般の中学生と変わりません。そんなエイドリアン君の異国での奮闘ぶりを、お母様の遠竹智寿子さん(学びの場.comの「取材レポート」や「気になる話題」でもおなじみのジャーナリスト)がヒアリングしてくれました!

ナナイモの町の入り口。国内線も飛んでいるが、水上飛行機かフェリーを使ってバンクーバーから渡ってくるのが一般的。

ナナイモの町の入り口。国内線も飛んでいるが、水上飛行機かフェリーを使ってバンクーバーから渡ってくるのが一般的。

クリスマスホリデーにカナダのバンクー島から一時帰国した息子(エイドリアン:16歳)は、都内の駅の人混みで「ナナイモに住んでいてこれだけまとまった人間を見ることはないなあ」とポツリ。「え?」と私。「バンクーバーの街中だってセントラルの駅だって、こんなに人は密集することはないし、あそこに住んでいる人たちにとって駅で人がたくさんいて乗り込めないなんて想像できないよね」と話は続きました。

息子は、カナダ・バンクーバーから高速フェリーで1時間の西に位置したバンクーバー島の港町、ナナイモの公立高校に通っています。中3の2学期からあちらの9年生に在籍し、現在は日本の高1にあたる10年生の2学期目を迎えているところです。文化や性質など日本とは異なるカナダでの様子を聞いて私自身も学んでいます。

そもそもなぜ留学なのか

息子は、アメリカ生まれですが、5歳から日本で生活しており、完璧な日本人体質。英語力も一般的な日本の中学生レベルでカナダに渡りました。

幼少期は日本の教育を受けさせておきたかったこともあり小中学と日本の公立に通っていましたが、アメリカ国籍を持つ息子には、英語力をつけ、また北米の文化も学んで欲しいと思っていました。本人も自然に時期が来たら英語圏の学校に通うんだという気持ちでいたようです。(私個人の考えで)本当は13~14歳で行くのが、子どもが英語を吸収するのにはベストの時期と思っていたのですが、NYテロがあり少し様子をみることに……。

その他、就学前から続けていた野球やボーイスカウトといった活動を中途半端にしないためにも、また、中学の修学旅行をみんなで行きたいといった本人の希望などもあり中三の2学期からの留学になりました。

単位の取り方&Timetable (タイムテーブル)

現在お世話になっているホームスティ先の部屋。

現在お世話になっているホームスティ先の部屋。

「一科目の授業時間が長くて80分もある。一学期に4科目をとり、それぞれがA、B、C、Dのブロックで時間割が組まれる(表)。月から金曜日を通して、ランチタイムの後、サイレントリーディングの時間となり、どの授業にいても読書タイムとなっている。前学期(9月-1月)に取ったのは、英語、数学、サイエンス、プランニング。

英語のクラスはインターナショナル用で、クラスには中国人、タイ人、日本人、韓国人、台湾人などが混ざっている。ヨーロッパからの留学生はすでに英語のレベルが高く、こういったクラスに入ることなく高2や高3のレベルから編入する人たちが多い。変わっているのは、ランチが11時8分から12時13分までなど(学校によって)中途半端な時間編成になっていること。休み時間も、自分のロッカーに行って教科書を取り、次の授業のあるクラスへと移動するだけのギリギリの時間となっている(エイドリアン)」。

カナダの公立高校は、一般的に自分で授業を選択する単位制になっています。高校卒業時までに取らないといけない単位数、必須科目なども決まっていて、それにすべてパスし、英語と数学の卒業試験に受からないと卒業は認められません。

そのため毎学期、選択した科目をパスしていくことに必死のようです。学期は9月から1月、2月から6月までの2学期制でそれぞれに異なる科目を4つずつ取るようになっています。必須科目や興味のある科目を学校のカウンセラーと相談しながら決めていくので、自分の気持ちをきちんと訴えられるか、カウンセラーとの相性なども親としてはいつも気になるところです。

バンクーバー州公立高校の必須科目の一つ、プランニング10について

教科書はその学期に使う分を貸し出してくれる。

教科書はその学期に使う分を貸し出してくれる。

「とにかく毎日の宿題が大変。今の勉強内容を考えると、日本にいた時は、日本語での勉強は"英語の苦労"がない分、もっと楽にできたはず……なのに何でしなかったんだろうと思う(笑)。今学期で一番ハードだったのは、プランニング10(Planning10)。このクラスでは、一週間に2、3本のジャーナル(レポート)を書かされる。

トピックは『土日にあった最も悪い出来事』、『ストライキはいいことか?どう思うか?』、『どんな仕事につきたいか?なぜ?』などいろいろで、レポート用紙を使って、ノースペースでびっしり一枚分というのが決まりとなっている。僕にとってこれはきつい。先生に英語での文章作りに時間がすごく掛かるというハンディを訴えたが、『ここまではできるだろう』という感じで、それほど甘くはされなかった。一学期を通じて、毎回のテストや提出物の採点も厳しくギリギリだったが、とにかく授業を出席し、提出物を出すことで、何とかパスできたのでよかったヽ(^o^)丿(エイドリアン)」

スーパーマーケットにあるカップラーメンの種類は豊富。お気に入りは韓国モノの辛いヌードル。

スーパーマーケットにあるカップラーメンの種類は豊富。お気に入りは韓国モノの辛いヌードル。

このプランニング10とは、卒業の必須科目となっていて、実際の授業では、ティーンエイジャーが興味を持つSEXやドラッグの話などをトピックにディスカッションなども行なわれるそうです。模型を使っての避妊の方法説明や性病や妊娠した時の病院や相談のシステムについても教えるとのこと。息子が「(SEXについて)日本では、しないための教育をするけれど、こっちではすることが前提でその正しい方法や問題を教えるんだね」と言ったのが印象的でした。

どちらがいい教育方法かという論点ではなく、日本と外国ではモノの見方が違ってそれによって教え方が違うことがあるということ、両側面からの知識を得るという体験が彼にとって貴重なものになればいいなと感じています。また、キャリアや人生ゴールについての課題では、レポートそのものが大変というよりも今まで日本ではそんなことを考えたことがなかったという点で、何も思い浮かばないことに苦労しています。英語での履歴書を書く練習では、何でその職業に就きたいか、何が自分のアピールポイントなのかを書く欄で、自分をアピールすることの難しさを学んだようです。

ランチタイム&校則

「カフェテリアがあり、そこに家から持ってきたランチを持ち寄って食べる。インターナショナルの生徒はそれぞれホームステイをしている家からサンドイッチなどを持ってくる。ホストが台湾人や韓国人の家では、焼そば風のヌードルを持ってきていておいしそう……。校内には、スナックや飲み物の自動販売機があって、ランチタイム以外でも授業中などにお菓子などを食べている人もいる。校則は日本とは違い、授業中の飲食については注意されない。学校内にCDやMDプレーヤー、携帯電話の持ち込みもOKとなっている。絶対してはいけないのは、アルコールと車の運転」。

毎日の食事

1年目にとったクッキングクラスで、単位を落としそうになり家で課題をこなしているところ。クラスではピザ、パンケーキ、チーズ&マカロニ、ベジタリアンスープ、パンなど10種以上を実践。

1年目にとったクッキングクラスで、単位を落としそうになり家で課題をこなしているところ。クラスではピザ、パンケーキ、チーズ&マカロニ、ベジタリアンスープ、パンなど10種以上を実践。

「カナダではお寿司が人気だけれど、カナダ人は本当の寿司を知らないと思う。ナナイモに住んでいるカナダ人は、寿司とはアボガドやキュウリを巻いたカリフォルニアロールのことを寿司だと思っている。醤油の味も違う。前のホームステイ先では、スーパーで買ってきたご飯の固くなったカリフォルニアロールに『はい醤油あるわよ』といって、『テリヤキソース』を出された(絶句)。ここでの食事は、パスタばかりなどで食べられるものがなくて困った。パスタと言っても、日本のミートソースやカルボナーラなどとは違って毎日缶詰のトマト味をかけるだけとか手をかけないからおいしくない。

今のステイ先の食事はおいしいので困らない。カレーライスを作ったら気にいってくれて今では月に1、2度はカレーを作る。日本のカレールーはナナイモのスーパーに売っている。近くにあるチャイニーズレストランの食べ放題もたまに連れて行ってもらうが、ここの"醤油"も日本のとは味が違う。醤油が違うと味が変わる!」

カナダの中高校生たちのランチは、サンドイッチ類が一般的だが、日本で育った子どもにとっては、これが苦痛となっていきます。今お世話になっているホームステイのご家庭は、プエルトリコ人のお母さんがホームメイドのランチを持たせてくれるらしく、ありがたいことに苦労をしていることはないようです。以前のお家では前日に作りおきしたサンドイッチや白いご飯だけを持たせるといったことも続き、閉口していました。

 しかし、そのお家では、冷たいサンドイッチはあたり前だし、日本人だから米が好きだろうという発想で、悪気があってのこととは言い切れません。そして、私がカナダを訪れた時に息子からリクエストがあったのが、"お弁当"でした。それほど凝ったものではなく、卵焼きやおにぎりで感激していました。

よく日本人の味感覚は優れていると聞きますが改めて見直してみると、ママたちが作る色とりどりのお弁当はまさに日本の食文化の一つで、そのお陰もあるのかなと感じています。また、醤油の味にこだわるのは日本人ならでは。日本の家で食べていた朝食や夕食、毎日の給食や手作りのお弁当などがあたり前でなかったと気がついたようで、日本に一時帰国した時は、朝ごはんの味噌汁にさえ感動していました(笑)。

◆ バンクーバー島ナナイモ便り

  • バスの停留所はサインが目立たない。ダウンタウンやショッピングモールなどに行くときはバスを利用。1時間に1~2本の路線を逃すと延々に歩く羽目に。

    バスの停留所はサインが目立たない。ダウンタウンやショッピングモールなどに行くときはバスを利用。1時間に1~2本の路線を逃すと延々に歩く羽目に。

  • 車道のすぐ横は自然。帰り道に探検したくなって横道へ・・・。

    車道のすぐ横は自然。帰り道に探検したくなって横道へ・・・。

  • ナナイモの夏の景色は最高~。でも冬は寒くて何もない。

    ナナイモの夏の景色は最高~。でも冬は寒くて何もない。

  • ハロウィンの日は先生も生徒も仮装して登校。昼休みにカフェテリアに集合して仮装大賞を選ぶ。

    ハロウィンの日は先生も生徒も仮装して登校。昼休みにカフェテリアに集合して仮装大賞を選ぶ。

留学先:カナダ バンクーバー島ナナイモ
(構成:遠竹智寿子)

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

pagetop