ネイホウ! 香港より教育事情探訪記(vol.3)
ネイホウとは広東語でこんにちはの意味。香港に留学中の大学生、須藤綾子さんから、香港での教育事情についてのリポートをお届けします!
みなさんこんにちは!今回は、香港における、ICT(Information Communication Technology)を利用した学習についてお話します。
香港教育省のウェブサイト上で公開されている、リソースの中にIT in Educationというカテゴリーがあります。ここにアップされている約500のデジタルコンテンツは誰にでも無料で利用できます。小学校・セカンダリースクール・特別教育という3つの学校の種類と、教科によって学習者は各自にあった教材を簡単に選ぶことができます。コンテンツの種類は大きく、講義・実践に分けられます。講義は図解付の説明を読みながら学習をするタイプのものと、ビデオを見ながら学習をするタイプがあります。どちらも、英語版を準備している教材も多くあります。
これは、先月のレポートでお話したように、セカンダリースクールではCMI(授業で広東語を使用)とEMI(授業で英語を使用)の2種類があり、英語以外の教科も英語を使って学習している生徒が多くいます。また香港では、英語で書かれた参考書や問題集が書店で気軽に手に入れられることからも、英語の教材の需要をうかがい知ることができます。
今回は、実際にウェブ上で利用可能なデジタルコンテンツをいくつか紹介します。わたしは香港で留学をしていますが、お恥ずかしいながら中国語(広東語)の知識は大変浅いものです。しかし、母国語で漢字を使う日本人であるという特権を生かし、内容をおおよそ察することができました。みなさんも、もし興味のあるデジタルコンテンツがありましたら、是非ウェブサイトにジャンプしてご覧になってください。
◆成語動物園Ⅰ・Ⅱ
動物の含まれる故事成語を学習するためのコンテンツ。パートⅠでは、画面上に現れる動物の上にマウスを移動させると、故事成語が現れます。それぞれの動物が大きく動いたり、鳴き声をあげるなどして、視覚や聴覚も刺激されます。
パートⅡは内容が少し発展的になります。学習したい動物を選び、その動物について集中的に学習することができます。わたしは実際に虎を選択し、その中から「不入虎穴、焉得虎子」という故事成語を選んでみました。そうです、日本語で言う「虎穴に入らずんば虎子を得ず」です。このステージには、電影室(故事成語が出来た話)、資料室(成語の意味、用法、反意語などの解説)、図書館(出典の文献の該当部分を紹介)、遊戯室(ゲーム)と4種類のコンテンツを選ぶことが出来ます。決められた順を追って学習することが強制されておらず、個々の生徒が自由に好きな方法で学習することができるな、と感じました。
これら4つのコンテンツの中でも、生徒達が一番熱心に取り組むのは恐らく遊戯室でしょう。実際に挑戦してみたところ、正解するとポイントが加算され、間違うと動物がオーバーなリアクションをとり、ブザー音が鳴るなど、ゲームとしても十分楽しむことができる内容になっていると思います。ビジュアル的にも映像がカラフルで、常に何かが動いている状態であるため、まさに子供の好きなゲームの典型ではないかと思います。
◆Be Friend with Natures(自然と友達になろう)
◆中英論入楽趣多
このコンテンツは、生徒が授業でITを活用するための、基礎的技術を身につけるためのコンテンツです。中国語・英語でのタイピング練習、インターネットの使い方、手書きパッドの使い方について取り上げられています。英語のタイピングを早速やってみました。近頃は、ストーリー性の高いタイピングソフトが多く見受けられますが、このコンテンツも例外ではありません。
指の置き方を一通り習った後は、実際にゲームで練習をすることができるようになっています。このコンテンツの特筆すべきところは、ゲームを終わったあとに、キャラクターの衣装や背景を自分の好みにカスタマイズできるところです。プリントアウトもできるようになっており、そうすることでゲーム(タイピング練習)をクリアした達成感が味わえるようになっています。
今回は、香港教育省のリソースセンターにある大変興味深く、質の高いデジタルコンテンツから3つを取り上げて紹介しました。香港はかねてから教育へのICTの導入が進んでおり、香港大学にはICTを使った教育について学ぶことのできる大学院のコースがアジア諸国の中で最初に設立されました。また、現役の教員が教育のICT利用について学べる夜間コースが香港大学にあるのですが、約30人いるクラスの男女比は、女性の方がやや多い傾向にあります。
日本で、教育工学関係の学会や研修に参加するのは男性教員が多く、コンピュータというだけで苦手意識が強い女性は多く、初めから取り組む意欲をあまり持たない方も少なくないのではないのでしょうか。外国からの新しいものが日々行きかうという土地柄の香港だからでしょうか、目新しいものに対しても常にオープンな姿勢は目を見張るものがあると言えるでしょう。
※当記事の情報は、公開当時のものです。
取材・文:須藤 綾子
※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。