子どもの学舎(まなびや)で大人も学ぶ
今回は"エメラルドの島"アイルランド・クレア在住の小島瑞生さんからの話題です。アイルランドのある学校では、生徒が帰った後、翌朝まで使われない校舎は『イブニングコース』という夜間授業に活用されているそうです。
午後学校の授業が終わり、夕方まで遊んだり学校行事などで残っていたりしていた生徒でさえも帰宅してしまった後の学校は突然ゴーストタウンのようにしん、と静まりかえる。あんなに騒がしく活気のあった雰囲気が嘘のようだ。
・・・とこれは私が覚えている日本の学校の風景であるのだが、ここ アイルランドでは様子が違っている。私の家の近くにある学校の校舎は日夜大忙し、フル回転なのである。どういうことなのかというと、この学校では生徒が帰った後夕方から翌朝まで使われない校舎は『イブニングコース』という夜間授業のために有効に活用されているのである。
『イブニングコース(またはナイトコース)』とは何か学びたいという大人のための授業で、内容は簿記会計や教育関係の資格取得といった専門的なものから料理、ヨガ、木工・ステンドグラスなどの工芸、そしてフランス語・アイルランド語といった語学など多岐にわたる。
こういった多様なコースを通常は2、3カ月で修了するようにプログラムが組まれているため、途中で挫折したりする可能性も低く、授業料もお手頃な値段で授業を受けることができるのがこのコースの利点であろう。
時間帯が午後7時~10時頃のため16才未満は参加できないのだが、高校生の娘や息子と一緒に親子で同じコースを取っている受講者もいる。
モザイク工芸クラスを『イブニングコース』で選んで受講した、という私の知人は16才の娘さんと一緒にクラスに参加、お互いの作品に茶々をいれながらも仲良く一緒に作品を作ったという。出来上がった作品はプレゼントとして母から娘へ、そして娘から母へとあげる(交換?)のだそうだ。
日本同様、アイルランド人も習いごとに熱心で、多くの子どもたちはボーイスカウト・ガールスカウトやらサッカー、水泳、フルート、ダンスなど様々なお稽古ごとをしているようだが、それと同じぐらい大人たちも色々な習いごとを楽しんでいる。
昼間子どもたちが使っている机と椅子を親も使い、同じ校舎・教室で学んでいるのをみると、生涯学習がこの国の日常生活の中にすっかり融け込んでいるのだなあ、と感心する。そしてそれと同時に自分もアイルランド人の学習意欲には負けられないぞ! という気持ちにさせられるのである。
◆ アイルランド便り
関連情報
http://www.kaigaikakibito.com/
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『オーストラリアの小学校に子どもたちが飛び込んだ.』
アイルランド・クレア在住 小島瑞生
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