算数科における学び合いの仕掛け― 算数の発表を「対話的説明」に変える ―
従来の一方向的な発表の課題を踏まえ、四角形の内角の和の授業実践を通して、異なる考えや誤りも対話で検討し、集団で思考を深める学びの姿を示します。
ここでいう「対話的説明」とは、発表者が聞き手を意識し、問いかけや反応の確認を通して説明を調整しながら、共に理解をつくる活動を指します。
東京都品川区立学校 平野 正隆
「対話的説明」とは何か
この活動では、話し手(発表者)が聞き手を意識しながら、問いかけを交えたり、聞き手の反応を確かめながら、その反応に応じて説明を調整するといったやりとりを通して、自分の考えや理由を説明していきます。
単に考えを伝えることが目的ではありません。説明しながら、共に理解をつくることをねらいとしています。
発表が「学び合い」から切り離されていた課題
これまでの授業を振り返ると、自力解決の場面では学び合いが行われているのに対し、集団検討(発表)の場面になると代表の児童が一方向的に説明するという構造になっていました。聞いている子どもたちは、聞き続けるだけの立場になりやすく、協働的な学びとは言い難い状態でした。
この形では、説明者自身の理解の深まりや、聞き手の思考の活性化のどちらにも、十分につながりません。そこで生まれたのが、説明者は理解を確かめながら説明し、聞き手は主体的に参加する発表、すなわち対話的説明です。
「伝えながら、つながる」発表への転換
対話的説明では、説明者と聞き手の間に問いが往還する、分かったつもりが表に出る、その場で考えが修正・更新されるといった動きが生まれます。
説明は、個人の発表ではなく、学びを共同でつくる場面へと変わっていきます。
実践例:四角形の内角の和を考える
5年生「図形の角」、四角形の内角の和の求め方を考える授業での実践です。
まず、対角線を引いて2つの三角形に分ける方法を考えた児童C①が発表します。
児童C①「ここに線(対角線)を引いて、2つの三角形にしました。だから360°です」
教師はすぐに評価せず、こう促します。
教師「もう少し詳しく、対話的に説明してみようか。どうして三角形が2つできると360°なのかな」
すると、児童Aは問いかけを交えながら説明を進めます。
児童C①「この三角形のこことこことここの角を合わせると?」
全体「180°」
児童C①「では、こっちの三角形は?」
全体「180°」
児童C①「2つの三角形の角は、四角形の角の部分だから、式は?」
全体「180+180」「180×2」
児童C①「答えは?」
全体「360°」
発表が、一人の説明から、全体の対話へと広がっていきます。
異なる考えを「対話」で検討する
別の対角線で分けた児童C②も、同様に対話的に説明します。
児童C②「こっちで分けても三角形が2つできます。それぞれ180°なので、360°です」
ここで教師は一般化を促します。
教師「どんな四角形でも、2つの三角形に分けられますか」
児童C②「はい」
教師「ということは、四角形の角の和は?」
児童C②「360°」
さらに、他の方法との比較に話題を移します。
教師「分度器で測る方法や、切って並べる方法だと、一度で360°だと説明できますか」
児童C②「いくつか調べないといけないと思います」
ここで、どの方法が“どんな四角形にも説明できるか”という視点が共有されていきます。
誤りも、対話によって学びに変わる
三角形を3つに分けてしまった児童C③の考えも取り上げます。一見、360°にならないこの方法を、間違いとして終わらせません。
教師「何か、必要ないところまで角を入れていないかな。班で相談してみよう」
班での話し合いの中で気付きが生まれ、児童C③が再び前に出ます。
児童C③「この3つの三角形の角を見てみると、四角形の角じゃない部分があります」
全体「真ん中の角だ」
児童C③「だから、180°を引く必要があります。式は180×3−180で、360°です」
誤りが、全体の理解を深める教材として生きました。
対話的説明がつくる学びの姿
対話的説明では、説明者は分かってもらえたかを確認しながら話します。聞き手は次に何が問われるかを考えながら聞く、という関係が生まれます。発表は発言する人のものではなく、教室全体で思考を進める場になります。
学び合いを、自力解決だけで終わらせず、集団検討の場面まで貫く仕掛けとして、この対話的説明は大きな役割を果たしています。

平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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