2023.10.18
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

先生にとっての 何だかとても大切なもの 「秋」に気がつく子どもになってほしいな!今年はチャンスかもということの 何だかとても大切なもの

「季節感」を教えることを意識していますか。近年私たちは、何かと「季節感」の乏しい毎日を送ってきた印象でしたが、今年は、暑い夏と爽やかな秋の組み合わせで「季節感」がわかりやすく、また教えやすいチャンスではないかと思っています。 今回も、それとなく担っているけどもしかしたらとても大事なものの話です。私たちが共通認識として持つ季節の感覚も(もちろん地域ごとに個性がありますが)その一つ。学校とそこに関わる人々が、ずっとずっと大切にしてきたものなのだと思います。

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師 渡邊 満昭

注目したい、秋を知らない子どもたち

青空に輝く黄色の鮮やかさ

○○の秋とはよく聞くものの、それは昭和から平成をすごしてきた大人の認識での話。クラスの子どもたちに、春・夏・秋・冬ごとに思い出せることをイメージマップ(ウェビングマップ)で表現してもらったときのこと。

そのクラスは、とっても活発で、都市化の進んだ町なのに、いろいろな植物や生き物を毎日学校に持ちこむような子どもたちがたくさんいました。さぞかしいろいろな体験をしているだろうと思い、季節ごと思いつくことを聞いてみました。するとびっくり、自分の予想に反して、春夏冬と比べ秋の項目数の少なさは圧倒的でした。この傾向はクラスのほとんどの子に表れているのです。

子どもたちに聞いてみると、
「夏の次は冬。だっていきなり寒くなるでしょ」
「秋って何が変わるのかよくわからない」
といった感じです。
今年で言えば、10月まで真夏日が続くのですから、「何が秋なのかわからない」と言われても、なるほどと思うところはありますね。

秋のマーカー「植物・生き物の変化」がポイント

実は私たちの指導内容には 総合的な学習・生活科を中心に、「季節感」を求めるところが出てくるのですが、「学習の秋」というくらい一番学習と結びつきそうな季節を子どもたちがイメージできないというのは、ちょっともったいないことだなと思います。
では教職である私たちはどうすればいいのでしょう。

どうやら、こどもたちの発言からすると、主に肌の感覚で季節を感じ取っているのかなとも思えます。なるほど、着衣の影響はもちろんありますが、春も夏も(特に今年)冬もそれぞれ独特かつ刺激的な肌の感覚の変化がありますね。
冬の冷たさは、服を着ないと過ごせないほどだし、春はやっとそのつめたさが和らぐわけだし。夏に至っては、注意しないと命に関わるような暑さで、子どもたちの体もギリギリの体験を何度もするわけです。

ところが秋は、暑かったり寒かったり爽やかだったりとちょっと感覚的に安定しません。爽やかなのは良いけれど、他の季節感と比べあまり印象に残らないのかもしれませんね。
秋というと自分が思い浮かべるのは、暗い森の中で黄色に輝く木の葉、稲穂の色の変わり具合、ぎんなんの匂い、水の冷たさ、くだもの、家族に連れて行ってもらった秋の行楽地の思い出といったところでしょうか。

なかでも「子どもの自分」が一番強く覚えているのは。環境の変化よりも多分「植物・生き物の変化」です。それも秋のマーカーとなるようなものです。
いつも川で遊んでいる子だったので、川の生き物たちの季節ごとの変化はとてもよく覚えています。
夏を過ぎるとどんどん水が冷たくなり、いつも見慣れた魚たちの動きや種類が変わること、特にアユは体が赤黒くなり、浅瀬に集まりバチャバチャ水しぶきを上げて産卵すること。ものすごく素早いアユなのに、秋が深まるにつれ素手でつかめるほどに弱ったり死んでいたりすることなどなど、子どもながらに毎年見つめてきました。

秋の豊かさを知るのは人としての経験値

大人の今は地面や川面(かわも)との距離も遠くなりました。それでも時折橋を通るたびに川をのぞき込み、魚の状況を確認しつつ秋の訪れを感じている自分がいます。

秋を知るとは、他の季節とは違ってその子がどう生活してきたのかという経験値が色濃く反映するのかもしれませんね。子どもたちの秋の印象がぼんやりしているのも、まだまだこれから経験を上乗せしていく途中なのだからと考えると期待が持てます。そして秋の項目数は、むしろ大人になるに従って、秋と関連付けたさまざまな体験として増えていくものなのかもしれませんね。
大人が秋をよく知っているのはもしかしたら、それだけの経験を積んできたことのあかしなのかもしれません。

私たちも自分だけの観察フィールドを持とう

となると、子どもたちに秋を伝えるには、私たちの経験値が大切になってくる気がしますね。
身近な公園・校庭、ベランダの鉢植え、ビオトープでもいいのです。大切なのは、自分なりの観察フィールドを持つことだと思います。そして、季節の変化(できたら季節を色濃く反映する生き物の変化)を子どもたちと一緒に見つめ、大人としての気づきをそれとなく子どもたちに伝えてほしいと思います。

今年は長くて暑い夏から一転、爽やかな晴れの続く秋がやってきました。温度や湿度の変化もそして生き物たちの行動も、いつもの年より鮮やかでダイナミックでわかりやすい感じがします。私たちの秋の経験値も上乗せできる、絶好のチャンスだと思うのです。

渡邊 満昭(わたなべ みつあき)

静岡市立中島小学校教諭・公認心理師・学校心理士・環境教育インタープリター・森林セラピスト


いつの間にか、小中学校全学年+特別支援学級+特別支援学校+通級指導教室での担任を経験し、生徒指導主任+特別支援教育コーディネーター+教育相談担当経験も10年を超えていました。すると担任を離れたとたんに何かを忘れてしまって、担任に戻ってみると忘れていたことに気がつくということがたびたびありました。それはうまく言えないけど何だかとても大切なもの。先生を続けていくための糧のようなもの。
その大切なものについて、自分の実践と合わせお伝えしていこうと思います。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop