総合的な学習の時間の取り組み~子どもとつくる課題設定のプロセス~(2)
前回に引き続き、今年度(令和7年)に実施している総合的な学習の時間の様子を紹介いたします。子どもたちとどのように対話し、どのように課題を形成してきたのかをお伝えします。
探求のサイクルの1周目「学校の良さを100点にするために、足りない30点は何だろう?」という、課題の解決からお話を進めていきます。
明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之
情報の収集
「学校をもっとよくしていくために足りない30点は何だろう?」と、学校に内在する課題を探すことにしました。体育館での初めの学年総合の終盤、子どもたちと課題を共有した後に、次のように促しました。
「足りない30点を見つける方法はないかな~」
すると、案の定、数名の子どもから
「実際に見つけに行ったらいいやん!」
「探しに行くというのはどうですか?」
と、情報を探しに行くことに前向きな意見が出されました。
そこで、次時には、学年全体で学校探検をして、学校の何がどうなればもっと良い学校になっていくのかを探しに行くこととなりました。
実際に学校内をめぐり、課題だと感じた点を学習支援ツール(ロイロノート)を使って整理しました(図1)。子どもたちの考えとしては、「プールのシャワーの水を温水にしてほしい」「ブランコをもう一つ増やしてほしい」など設備面に目が向く考えや、「気持ちを落ち着けられる空間がほしい」「みんなが楽しく遊べる中庭を作ってほしい」といった空間利用に関する考えが多く出されました。
こういった記述から捉えられることは、「~を作ってほしい」「~を改善してほしい」と、まだまだ意識が他者へ依存しているということです。1年間の学習を経て、「自分たちが変えていくんだ!」という思いを醸成していく必要があると強く感じました。一方で、「植物の看板を作って名前をお知らせしたい」などの、自分がなんとかしたいという思いを持つ子もいました。
整理分析
情報の収集が終わると、クラスごとにいくつかのグループをつくり、見つけてきた「課題点」を整理しました。
整理といっても画用紙一枚に気づいたことを書き留める程度でしたが、どのグループも一生懸命に取り組む様子が見られました。
まとめ・表現

各クラスで考えた課題を伝え合う
整理の後、再度学年総合を実施し、各クラスで考えた課題を全体で交流しました。
クラスごとに違う色の画用紙にまとめた考えを共有しあう姿はまさに「本気」で、良いアイディアはないかと真剣に聞きあっている様子が見られました。
交流後には、全体で考えをまとめる時間を設けました。
新たな課題設定
全体で交流する中で、子どもたちの考えは「環境面」「設備面」「遊び」の3つに整理されてきました。例えば、「環境面」では、中庭のメダカの池の在り方や近年の暑さ対策などが話題になりました。「設備面」では、中庭にゆったりできるベンチを設置したり、心が安らぐリラックススペースを作ったりするなどの提案がありました。
一通り意見が出そろった後、視点を広げるために「でも学校で生活しているのって4年生だけではないよね?」と投げかけました。
この問いにはどの子も反応し、
「確かに自分たちだけで勝手にしていいのかな?」
「ほかの学年の人はどう考えているかな?」
「校長先生に許可取らずに進めてもいいのかな?」と、自分たち以外の視点で学校の課題について考える必要性を共有することができました。
そこで、次回は4年生以外の人に、鳥羽小学校の課題をどのように考えているのかを調査することになりました。こうして、2周目の課題「4年生以外のみんなはどのような学校にしたいのかな?」が立てられたのです。
次回は、新たに設定された「4年生以外のみんなはどのような学校にしたいのかな?」という課題を解決し、一番大きな課題である「みんなが楽しく過ごせる学校をつくろう」に迫っていく過程を紹介できればと考えています。

友弘 敬之(ともひろ たかゆき)
明石市立鳥羽小学校 教諭
「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。
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