どう働くのか?ー教員の「働き術」を考える
教員の働き方改革が話題となる中、
私自身も、教員時代の働き方について改めて考えてみました。
西宮市立総合教育センター 指導主事 羽渕 弘毅
どう働くのか?
先日、ある先生から「教員時代はどんなふうに働いていたのですか」と尋ねられました。
思い返せば、日々に追われるばかりで、じっくりと自分の働き方を振り返る機会はあまりなかったように思います。
せっかくなので、今回は自分自身のためにも「働き術」(?)を振り返ってみることにしました。
記憶は外部に任せる
やることリストを教務手帳に書いていたこともありましたが、記憶を自分任せにせず、できるだけ外部に任せるようにしていました。
特にパソコンのToDoリストは便利で、「今日中に終わらせなければならないこと」は色を変える、優先度の高いものを上部に表示する、といった工夫を加えていました。
こうして視覚的に整理することで、頭を空けておきながらも安心感を持ち、他の仕事に集中する余地を確保できました。
記録「も」外部に任せる
同じ発想で、記録も外部に置くことを心がけました。
電子ノートには授業のアイデアや会議のメモだけでなく、子どもたちの様子も書き留めました。
さらに授業の内省を残すことで、自分の振り返りや次の改善につなげることができました。
検索機能があるため「いつ、どんなことを考えていたか」をすぐに呼び戻せるのが大きな利点でした。
紙のノートに比べて自由度が高く、必要な情報をまとめたり貼り付けたりできる点も役立ちました。
保護者との連絡を工夫する
保護者に何かを伝えたいときは、電話を使うことが多くありました。ただ、放課後に連絡を忘れてしまったり、自分の子どもの迎えで学校にいられないこともあり、伝え漏れが出てしまうのが悩みでした。
その後に工夫したのが、連絡帳を活用することでした。何かあればすぐに書き込めるので、タイムリーに確実に伝わります。良いことも悪いことも日常の中で伝えられます。さらに、中学年や高学年になると子ども自身が担任からのコメントを読めるようになり、それがちょっとした喜びにもなっていたようです。
学級通信を毎週発行して子どもたちの様子をまとめて伝えていた時期もありました。しかし、どうしても一人ひとりの良さを細やかに伝えることが難しかったり、作成に時間がかかり、負担が大きく続けにくいという課題がありました。その点、連絡帳は手間をかけずに子ども一人ひとりに寄り添える手段であり、アナログだからこそ大切にしたい道具だと感じています。
働く場所の使い分け
働く場所も工夫の1つです。
学校でできることは、できる限り学校で終える。
学校でしかできないことは、優先順位を高めて学校内で取り組む。
逆に、あまり望ましくはありませんが、集中を要する作業をどうしても持ち帰ることもありました。
それでも、場所を意識的に切り分けることで、気持ちの切り替えにつながったと感じています。
特別な場所?
アイデアを要する仕事は、学校でも家庭でもなく、あえて別の場所で行うようにしました。
カフェや図書館、移動時(電車や新幹線など)といった環境は、雑多な日常から少し距離を置くことができ、発想の幅を広げてくれました。
静かな時間に思考をめぐらせることで、普段は気づかない視点にたどり着くこともありました。
これからの働き方
振り返ると、私の働き術の核は「集中の質を高める」ことにあったようです。20代前半は朝早くから夜遅くまで働き、ヘトヘトな毎日でした。20代後半からは、働きながらの大学院と育児で時間の有限性に気づかされ、24時間をいかに使うかに焦点を当てるようになりました。忙しさそのものは大きく変わらなくても、意識の仕方で働き方は変えられるのだと思います。
これからはAIと共存しながら働くことが大切になるでしょう。たとえば、日々のタスク管理やスケジュール調整はAIに任せ、人にしかできない判断や対話に時間を振り向ける。授業準備や資料作成の一部をAIに補助してもらい、教師自身は子どもと向き合う時間を確保する。こうした分担が可能になれば、忙しさを減らすのではなく、「大切なことに力を注げる働き方」へと近づけるのではないでしょうか。
もちろん、AIに任せきりにするのではなく、自分なりのルールを持ち続けることも欠かせません。情報を吟味する力や、最終的な判断を下す責任は人に残ります。だからこそ、「AIに何を任せ、何を自分が担うか」を考えること自体が、これからの働き術なのだと思います。
忙しさの中でも、自分なりのルールを持つことで少しずつ働き方は整っていきました。読者のみなさんも、ご自身の「働き術」を振り返り、ひとつでも取り入れられる方法を探してみてはいかがでしょうか。
働き方を考える考えるヒント集

羽渕 弘毅(はぶち こうき)
西宮市立総合教育センター 指導主事
専門は英語教育学、学習評価、ICT活用。高等学校や小学校での勤務経験を経て、現職。これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科博士課程前期)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。自称、教育界きってのオリックスファン。
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