授業"観"を変える前に、研修"観"を変えるー教員研修と授業改善のこれから
「最近の若い子は......」
近年の学校現場は、大量採用時代のベテラン教員が退職し、若手教員が増えてきています。
職員室の雰囲気が、年々フレッシュになっている学校も多いのではないでしょうか。
残念ながら、そのような学校で聞こえてくるのが冒頭の言葉です。
岡山県和気町立佐伯小学校 教諭 角田 直也
学校現場の変化と「授業観」の課題
私は、教育は温故知新と捉えています。「昭和世代の人の考えは、今の考えに合っていない」「最近の世代の考えは、子どものためになっていない」などと決めつけるのではなく、それぞれの考えを尊重しながら、よりよい教育に向けてチーム学校として切磋琢磨していきたいと願っています。
現在、中央教育審議会では、次期学習指導要領に向けて話し合いが進んでいます。柔軟な教育課程の編成や、ICT の活用技術を授業内で教えることなどが話題の中心になっています。しかし、現行の学習指導要領の実施上の課題に着目すると、次のように書かれています。主体的で対話的な授業やカリキュラム・マネジメントなどを指して「授業改善に一定の効果をもたらした一方、地域や学校によって差があるなど、趣旨の浸透は道半ば」とされている点です。これからの教育は、教育観の転換が必要であると言われるようになって数年が経つ中で、どうして「趣旨の浸透は道半ば」とされたのでしょうか。また、これから新しい学習指導要領を元に教育が進められる中、どうすれば学習指導要領の趣旨が浸透し、全教員が授業改善を行うことができるのか考えていきたいと思います。
一斉授業と個別最適な学びのはざまで
数年前から、さまざまな教員研修で「主体的で対話的な学び」「協働的な学び」などがキーワードになり、児童が主語となるような個別最適な学習に向けて個別学習と協働学習のバランスを意識した授業づくりが進められています。一方で、学校現場では従来の一斉指導型の授業が進んでいる場合も少なくありません。
一斉授業は、教員の技術によりわかりやすく教えることで知識を獲得しやすくテストの点数も向上することに加え、授業をマネジメントしやすいメリットもあります。そのため、教員は教科書の内容をわかりやすく伝えることに自己研鑽をしてきました。一方で、個別最適な学習は、児童によって学び方が違うため臨機応変に対応することも求められるうえ、協働学習を行うための土台となる学級の雰囲気づくりも重要です。一斉授業とは異なるスキルが必要とされます。
そのため、教員にとって授業観を変えることは大きなエネルギーを要することから、新しい授業スタイルに挑戦することに難しさを感じていることが学校のリアルな声なのではないでしょうか。ましてや働き方改革によって、研修時間が割愛され、教員の自発的な研鑽に委ねられている場合が多いため、新しい教育を実践して改善する教員が珍しい存在になっているのかもしれません。
「研修観」を変え、学び続ける教師へ

「聞き出さない」「教えない」ことを ルールに、雑談をベースに話し合う
ベテラン教員の授業観の転換や若手教員の養成など学び続ける教員の姿を目指すことは、今後の管理職や研修担当教員にとって大きな課題であると感じています。
文部科学省は、「主体的に学び続ける教師の姿は、児童生徒にとっても重要なロールモデルである。「令和の日本型学校教育」を実現するためには、子供たちの学びの転換とともに、教師自身の学び(研修観)の転換を図る必要がある。」としているため、教員研修も、教員の主体的な学びと協働的な学びを進めるため、個別最適な学びを目指し、管理職や研修担当が伴走していく必要があります。
現在、勤務校では有志による S&B 研修に加え、若手教員に対して 1on1 ミーティングを行っています。この研修の成果は、年度末にお伝えする予定です。
持続可能な教育であるために、教員のワークライフバランスを保ちつつも、質の高い教育を目指すための研修方法や実践を紹介していきます。また、若手教員に向けて、教育現場にある「今さら聞けない教育現場の習慣」を解説することによって、学ぶことの楽しさや教えることの大切さなどを発信していきたいと考えています。今後ともよろしくお願いします。
参考資料

角田 直也(かくだ なおや)
岡山県和気町立佐伯小学校 教諭
特別(聴覚)支援学校、青年海外協力隊(マラウイ)、公立小学校に勤務。
近年は、総合的な学習の時間に行う地域をフィールドにした活動を軸として、教科横断的なカリキュラム編成を実践・検証し、地域学習と教科学習の双方の深化について研究しています。
また、先輩教員のノウハウと新しい"観"の教育を融合しつつ、若手教員と共に学ぶ新しい研修方法を実践しています。
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