ワクワク実践 学級経営にひと工夫「休み時間充実計画プロジェクト」(第2回)
学校の休み時間は、子どもたちにとって大切な時間であり、たくさんのメリットがありますが、デメリットも多々あります。私が勤める学校では、5年生以上で授業間の休み時間が10分間あります。そんな時間をどう過ごすことが、よりメリットを高めるのか、私なりに考えていました。
そこで、今回は「休み時間充実プロジェクト」と称した、私の取組を課題点とともに紹介します。
東京都品川区立学校 平野 正隆
メリット:休み時間の大切さ
授業で集中して疲れた心身をリフレッシュする時間であり、友達と交流しコミュニケーション能力や人間関係を築く力を育む時間でもあります。また、「中休み」「昼休み」といった長めの休み時間に、体を動かして遊ぶことで、運動不足を解消し、健康な体を維持することができます。授業中の学習効果を高めたり、自分の時間をどのように使うかを考える機会になったりもします。
だからこそ、我々教師側も大切にしてあげたいと思っています。
デメリット:休み時間は危険な時間でもある!?
小学校における学校事故の約半数が休み時間に起きていると言われます。先に述べたように、休み時間はリフレッシュできると同時に、心も開放的になってしまうのではないでしょうか。
私が勤める学校でも、ヒヤッとする場面や実際に子どもが怪我をした場面が多々ありました。友達とふざけて、取っ組み合ったり、廊下を走り回ったりする様子は危険そのものです。また、からかいから喧嘩に発展したり、心が傷付いたりする子もいます。
つまり、このままでは、休み時間は児童生徒にとって危険な時間や悲しい時間にもなってしまうと感じました。
休み時間も教育の機会
では、なぜそういった現状になっているのでしょうか。私が考える説は、遊び方のバラエティが不足していることに起因しているのではないかということです。
校庭や体育館で遊べる時間であれば、ボール遊びや鬼ごっこなど、体育の授業などを通して体を使う遊びの選択肢はある程度もっていることでしょう。しかし、そういった場所や時間がなければ、とたんに時間の過ごし方の選択肢は減ります。普段、動画を見たり、ゲームをしたりして遊んでいる子どもたちは、そういった機器無しでは時間の過ごし方の発想が生まれず、結局は友達をからかって追いかけられたり、友達の背中にダイブしてみたりという行動になります。
けれども、大事な休み時間を奪うことは許されません。以前まで「廊下を走ってはいけません」「取っ組み合ってはいけません」「ふざけて人の物をとってはいけません」「人をからかうのはやめましょう」と、指導してきた私は「自分の時間をどのように使うかを自分で考えられないから、間違った行動をしてしまうのではないか」と考えました。いくら間違った行動を否定しても、別の間違った行動をするだけで、いっこうに解決しないことが分かったのです。そこで、考え方を変え、充実した休み時間を過ごすためのヒント(アイテム)を与えることにしました。
休み時間のアイテム
私が最初に用意したのは、「推理問題」「ナンバープレース」「知恵の輪」「ひらめき問題(クイズ)」「パターンブロック」でした。どれも、子どもたちの頭の体操になればと思い、用意しました。なかでも、知恵の輪の人気は常に高く、人だかりができることも多々あります。
しかし、私が注目したのは「パターンブロック」です。これは、台形、平行四辺形、ひし形、正方形といった4種類の四角形に加えて、正六角形や三角形の各1種類を入れた合計6種類の図形ブロックです。図形に対する感覚が豊かになるため、算数の教材としても扱われます。そのブロックを積み上げてだるま落としにして遊んだり、積み木のように立体的な作品をつくったりしている子がいました。自分なりの遊び方に変えるその発想が素晴らしいと思いました。
また、先日は「ルービックキューブ」や「将棋」を取り入れてみました。休み時間になると、一目散に集まり、色の合わせ方のコツや駒の動かし方を学び合って、楽しそうに過ごしています。
課題
この取組をしていて、以下のような課題が多々見えてきました。
①授業が始まるギリギリまで遊んでしまう
②使用後、片付けが充分にできていない
③たくさんの児童が使うので、物が壊れる
④放課後、なかなか帰らない
しかし、これは大切な教育の機会を得たことにもなります。楽しみを奪って時間を守らせるのではなく、個人の楽しみはあっても、切り替えて時間を守る心や次に使う人のことを考える心、物を大切に使う心を育てるチャンスだと思うようにしています。
終わりに
安全面を考えると、時には「〜してはいけません。」と声をかけることも必要ですが、そういう行動自体を減らす予防策も必要です。
私が用意したアイテムが、少しでも効果を出してくれたらいいなと思っております。そして、子どもたちにとって大事な休み時間をより充実したものにするため、私たち教師側も発想を広げ、ヒントを与え続けていきたいものです。

平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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