ワクワク実践 学級経営にひと工夫「タイムトライアル」(第3回)
以前、授業の実践で「タイムトライアル」を紹介させていただきましたが、今回は授業以外の学校生活における実践です。時間的な目標を持つことで、主体的に動いたり、協力をして活動したりすることができるようになります。学校生活のどんな場面で生かせるのか、私なりの実践を例示しながら具体的に紹介します。
東京都品川区立学校 平野 正隆
「タイムトライアル」概要
授業の場面では、計算練習をする場面、都道府県名を言い当てる場面などで時間を計る取り組みを行ってきました。
その際、時間を縮めるように声をかけることで、子どもたちが主体的に活動するようになったり、集中力が高まったりします。声の掛け方次第では、協働的な学習になることを以前にご紹介しました。
この取り組みは、整列や給食準備、下校準備など普段の学校生活の様々な場面で応用させることができます。時間を短くするという目標を共有することで、主体的に協力して活動するようになります。
しかし、教師はこの活動が「協力して手際よくすることで、次の活動を充実させること」が目的であることを忘れてはいけません。
あくまで、時間を計るのはきっかけです。そのことを子どもたちが理解できるように、どうもっていくかまでが大切だと思っています。
まずは、整列の場面で
朝会や集会、専科の学習などで移動する際、それに要する時間を計ります。最初は、そのことを告げずに時間を計り、その結果を伝えます。注意点としては、その結果を指導するネタにしないことです。あくまで「記録を伸ばしたい」と思わせるためのきっかけであり、教師が時間を計っていることにネガティブな印象を与えてはいけません。
私の場合は、どんな記録であっても、まずは褒めるようにしています。「すごい記録が出ました!!さすがです」と言われて嫌な気はしないでしょうし、子どもの中には「本気出せば、もっとできるはず」なんて思う子もいるでしょう。
最初の頃は、頻繁に時間を計ってあげてください。そして、良い記録が出て喜んでいる時に、この取り組みをしている理由を子どもたちに考えさせてください。
小学校高学年くらいであれば、「記録を伸ばすため」ではなく、「みんなで協力すると短い時間でできる」「時間が短くなればなんでも早くできて他に時間が使える」なんて考え方に気付けたらいいですね。
次に、給食準備
給食準備中の指導の難しさを感じる先生方は多いのではないでしょうか。手洗いに行ったきりなかなか戻ってこない子もいれば、給食当番であることを忘れている子、4時間目の課題が終わらずに教室に残っている子などがいます。
様々なところに気を配りながら、給食ワゴンを運んだり、給食当番の配膳のサポートをしたり、アレルギー食材の確認をしたりと、想像を絶する忙しさです。しかし、ここでもタイムトライアルを実践してみてください。
私の場合は、給食ワゴンを持ってきてから「いただきます」までの時間を計ります。それは、私の事情でワゴンを持ってくるのが遅れれば、子どもたちのモチベーションを下げてしまうかもしれないからです。
気をつけなければいけないのは、焦りすぎてこぼしてしまったり、食器を割ってしまったりしないようにすることです。配膳は気をつけながら慎重にやることと、配膳前の準備はみんなで協力すれば短縮できることは、この取組を始める際に事前に子どもたちに話します。
最後に、下校準備
下校準備は、授業終了後から帰りの会(学級活動)が始まるまでの時間を計ります。これが、今回紹介した3つの中で一番難しいです。それは整列や給食準備に比べて、日によって準備する内容が異なるからです。
週末なら上履きや体操着、給食当番の白衣を持ち帰る必要がありますし、学期末なら持って帰るものが増えます。
翌日が校外学習なら、特別に持ち帰らなくてはいけないものも出てくるかもしれません。その指示を支度が始まってから出すのでは遅いです。
私の場合は、朝の会(学級活動)で知らせておいたり、紙に書いて黒板に貼り付けておいたり、学級委員(クラスのリーダー)に指示しておいたりします。
慣れてきたら、自分たちで
この取組を続けていると、新鮮味がなくなってきます。しかしそれは、よく捉えれば「慣れ」です。そのままにせず、そう感じ始めた頃に、次のステップに移ります。
①時間を計るのを子どもに託す
低・中学年なら係活動と、高学年なら給食委員や学級委員などの委員会と関連付けて、子どもたちに託します。しかし、計る人が変われば、記録も変わります。だから、「先生が計ったときより良い記録が出たらすごい」なんて言っておきます。すると、結果が悪くても、明日また頑張ろうって思えます。
②記録更新ではなく目安タイムを決める
早くすることそのものが目的ではなく、みんなが協力して手際よくすることで、次の活動を充実させることが目的です。記録更新にも限界がありますし、時間ばかりを気にしていると、遅い子に強くあたってしまったり、ミスを犯してしまったりします。だから、このタイムトライアルに慣れたころに、目的にあった程よい目安タイムを自分たちで決めさせます。
③結果を見える化
この段階まできたら、毎回のかかった時間を書くというより、目安タイム内で出来たかどうかを残すくらいでいいかと思います。カレンダーにシールを貼るなどして、結果を見える化し、時折それを確認しながら反省することで、一過性ではない継続した取り組みが期待できます。
終わりに
学習だけでなく、生活の場面でもタイムトライアルを活用することができます。しかし、最終的な目的は「時間を早めること」の先にある、「みんなが協力して手際よくすることで、次の活動を充実させること」であることを忘れてはいけません。
また、継続した取り組みにするためにも、子どもたちに時間を計るのを託したり、目安タイムを決めさせたり、結果を見える化したりして、与えられた取組ではない、自分たちの取組にしていきます。

平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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