ワクワク実践 学級経営にひと工夫「スパイだぁ作戦〜ターゲットの良さを探せ〜」(第1回)
自分の長所を知り、自分らしく生きることの重要性は、教育現場において非常に大切なテーマです。
そのために、自己理解を促したり、ポジティブな環境を構築したり、目標設定をして自己の成長に気付けるようにしたりしているのではないでしょうか。
本実践が、皆様の取組の一助になれば幸いです。
東京都品川区立学校 平野 正隆
はじめに
私が勤務する東京都の品川区では、市民科の学習でリフレーミングを扱う学習があります。リフレーミングとは、物事の見方を変えて、違う捉え方をして、ポジティブに感じられるようにすることです。例えば、飽きっぽかったり、ひとつのことに集中できないような性格を、「こだわりをもたず、好奇心旺盛で、様々なものに関心をもてる性格」と前向きに捉えることです。
他地区では、特別の教科道徳「主として自分自身に関すること」「主として人との関わりに関すること」の内容項目や、保健「心の健康」などの学習にも生かせる内容です。このリフレーミングについては、インターネットにも様々に紹介されているので、ぜひ検索してみてください。また、以前に私が書いた記事「ストレングスアプローチ」でも紹介しています。
今回は、この手法を生かした学級づくりを紹介します。
実践「スパイだぁ作戦〜ターゲットの良さを探せ〜」
①教師がリフレーミングの手法を例示しながら紹介する。
・意見が言えない→協調性があり、思慮深い
・しつこい→粘り強く、一度興味をもつと徹底的に取り組む
など
②例題を出し、子どもたちがリフレーミングをしてみる。
③出席番号が書かれたクジを子どもたちが引く。自分の番号を引いてしまった場合は教師が調整する。
④クジに書かれた番号の子を一定期間「ターゲット」とする。スパイとして相手に気付かれないように、その子の良さを3つ見つけ、ワークシートに書く。
⑤ワークシートを教師が回収・確認する。
⑥3つの良さを読み上げ、誰のことかを当てるクイズにして出題し、みんなで良さを認め合う。
例:ヒント1「よくしゃべる明るい子」、ヒント2「算数が得意な子」、ヒント3「教室に落ちているゴミを休み時間に拾って捨てていた」。誰でしょう。
注意点
この取組では、いくつか注意すべき点があります。
◆リフレーミングはあくまで手法のひとつであり、3つ全てをリフレーミングで挙げなければいけないわけではありません。前向きに「ターゲット」を捉えながら3つの良さを探すことが目的です。最初に必ずこのことを子どもたちに伝える必要があります。また、性格的な部分に限らず、具体的なエピソードがあれば、それを書いたり、得意分野があればそれを書いたりしても良いこととします。
◆クジを引いた際に「そんなに話したことないから分からない」と感じる子がいることが予想できます。しかし、この取組はそういう相手だからこそ意味があるのだということを、クジを引く前に伝えておくのが良いでしょう。
◆お互いにターゲットが誰なのかを知らない状態でやること。自分の良さを見つけてもらうことよりもターゲットの良さを見つけることに重点を置くように徹底させて下さい。
◆回収したワークシートは必ず教師が見て、教師から見た良さを追加したり、誤解を生むような表現がないか確認して下さい。
◆クイズは必須ではないので、学級の実態に応じて、やるかどうかを判断する必要があると思います。「今日のクイズ」として、一日1人を紹介してもいいですね。「今日、自分が紹介されるかも」というワクワクが生まれます。
私の場合は、この取組で回収したワークシートは返却しませんし、誰がターゲットだったのかを全体に紹介することもしません。
そのかわり、通知表の所見欄や保護者との面談で「周りの友達から〇〇と思われています」と伝えます。
このようなストレングスアプローチにより、自分らしさを知り、自尊感情や自己肯定感を高めていきます。
終わりに
この取組が、子どもたちの自他理解や教師の児童理解につながり、自尊感情を高めたり、認め合える人間関係を築けたりする一助になればと願っています。
なお、この取組は学級の実態によっては、実施が難しい場合もあります。

平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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