2022.06.27
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国語科でのOPPシートの活用法!

今回は、「評価方法」の一つである「OPPシート」を国語科で用いるとどうなるかということを紹介していこうと思います。

明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治

今回は、「評価方法」の一つとして国語科におけるOPPシートの活用法について紹介したいと思います。そもそもOPPAとは、One Page Portfolio Assessmentの略であり、堀(2013)が、「教師のねらいとする授業の成果を,学習者が一枚の用紙の中に授業前・中・後の学習履歴として記録し,その全体を学習者自身に自己評価させる方法」[i]として定義しています。

では、なぜ、今このOPPA論が現場で必要になってくるのでしょうか。その理由として、堀(2018)は、「学習者の学習過程や履歴を中心にした『指導と評価の一体化』や形成的評価の重要性はたとえ説かれていたとしても、その具体的な研究は、ほとんど深められてきていない現実がある。それゆえ、学習者一人ひとりの実態をどう具体的に変容させ、確認するのかという視点が欠如していた」[ii]と述べている通り、現場では、児童自身が自分の学びの変容をメタ認知できるような自己評価方法を試みてきていない現状がありました。
確かに、自分の実践を思い返せば、学びの履歴を残していくという視点はありましたが、その児童自身の変容までを児童にメタ認知させることなく終わっていたように感じます。また、成績の為の「評価」になっている先生方も多いのではないでしょうか。やはり、児童に「評価」するのであれば、児童の力もつくような「評価方法」が必要であることは、教師なら誰もが望むことであると思います。

そこで、私は、OPPシートを国語科の授業に活用しようと試みています。このシートを用いることで、従来重要視されてきた形成的評価だけでなく、診断的評価や総括的評価も行うことができ、また、児童自身が変容をメタ認知できるようになっています。そして、何よりも煩雑さが無いというのは、現場で多忙を極めている先生方にもかなり有効な方法であると思います。
文学作品を読むことに限ると、文学作品を読み、自分の考えの変容をメタ認知でき、成長を感じられると、次なる作品を読もうという意欲にも繋がります。特に、中学年段階は、読書能力の発達段階が「初歩独初期」を終え「多読期」へ差し掛かろうとしている狭間であることが挙げられています。このことについて同じような記述は学習指導要領にも見られます。
平成29年版学習指導要領の国語の「我が国の言語文化に関する事項」の「読書」の項目を取り上げると、中学年から「幅広く」読書に親しむことが求められており、それが次なる「日常的に」読書に親しむことに繋がっていくということを示唆しています。
また、小林(1983)は、「学習者における自己評価を、学習のステップの自覚、意欲・関心の喚起の契機として重視すべきものと思う」[iii]と述べ、自己評価に有効性を見出している。つまり、OPPシートを使用し、自己変容をメタ認知させ、児童の意欲を喚起していくことは、「多読期」に差し掛かろうとしている中学年段階の児童にとっては、とても有効的な方法であると言えます。

具体的な実践時には、図のように一単元で完結するように構成したものを使用します。OPP シートには、単元学習当初にたてた「本質的な問い」について単元前後の自分なりの考えと毎時間の「一番大切だと思ったこと」「学習後の自己評価」について記入できるようにしています。これにより、診断的評価から始まり、形成的評価、総括的評価までを見取ることを可能にしています。
最初、子どもたちは、「一番大切なこと」については、よく理解できずに、学習の振り返りや学習のまとめを書いてくることがあるので、そこは時間をかけて説明します。また、「各々」が考える「一番大切なこと」ですので、書く内容に対しては、基本的に間違いはないと思っております。
ただ、自分の授業の山場とあまりにもかけ離れたところを「一番大切なところ」と記述している児童が多い場合は自分の授業が焦点化されずに伝わっていたということです。そういう意味でも、自分の授業を見直す一つの指標にもなりえます。

[ii] 堀哲夫『資質・能力を育てる教育評価に関する研究-OPPA論を中心にして―』教育実践学研究『山梨大学教育学部附属教育実践総合センター研究紀要』第23巻、2018年3月

[iii] 小林和彦「評価と授業の一体化の追求―基礎・基本・発展と系統・関連から―」全国大学国語教育学会『国語科教育研究2 国語科評価論と実践の課題』明治図書、1984年

川上 健治(かわかみ けんじ)

明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。

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