教育におけるストレングスアプローチ
学期末が近づいてきました。
子どもたちを適切に評価し、次に繋げる大切な時期です。
そこで今日は、教育現場におけるストレングスアプローチについて紹介します。
東京都品川区立学校 平野 正隆
ストレングスアプローチとは
個人や集団の強みや資源に焦点を当て、問題解決や成長を促進する方法です。これまでの問題解決型アプローチが課題や弱点に注目するのに対し、ストレングスアプローチは強みを認識させて目標を達成したり、ポジティブな側面にも目を向けることで、モチベーションや主体性を高めたりします。また、長期的な成長や発展が期待できるため、教育現場でも注目されています。
なぜ教育現場でストレングスアプローチが必要なのか
ついつい、子どもの悪い部分を直そうとしてしまうことはありませんか。私には多々、身に覚えがあります。
しかし、マイナス面を改善しようとしてもなかなかうまくいきませんでした。その瞬間は、うまくいっているように見えても、後から反動のように問題が起きました。それは、欠点に着目した指導・支援であるため、本人の自己肯定感を下げてしまい、改善しようという気持ちさえ持てなくなるからだと思われます。結果、別な部分にその影響が出てしまったのでしょう。
例えば、「授業で集中できず周りにちょっかいをかける子に指導を繰り返した結果、ちょっかいはかけなくなったけど教室から出ていくようになる」といった感じです。
たとえ大人であっても、上司や先輩から失敗や欠点を強く指摘されたら、自信を失ったり、やる気を失ったり、仕事を辞めてしまいたいと思うのではないでしょうか。子どもも大人も皆同じ感情をもつ人間です。若い頃の私は、なぜそんな簡単なことに気付けなかったのでしょう。
だからこそ、ストレングスアプローチによって強みを育てることで、自己肯定感や自己効力感を高めながら個々の成長や発展を促せば、マイナス面の改善も期待できます。
学校教育におけるストレングスアプローチ
①まずは個人の長所を特定します
まずは、児童生徒たちの個々の強みや特性を特定し、それを理解することが重要です。教師は、生徒たちの興味、才能、価値観などを知るために、生徒との対話や活動を通じて関係を構築することが求められます。
②つぎに適切な役割を与えます
生徒は適切な環境のなかで適切な役割を得ることで、自らの強みを育てます。だからこそ、教師は様々な活動を提供することが重要です。一方的に役割を与えるのではなく、本人の意思も確認しながら与えます。
③成果を肯定的に評価する
生徒は数値化しにくい努力や成長、発揮の仕方までを肯定的に評価され、フィードバックや賞賛されることで、自信とモチベーションを高めることができます。「あなたの挑戦する姿勢は、周囲に良い影響を与えていますよ」といった感じです。
肯定的評価をするには
肯定的評価をするには、リフレーミングの手法が有効です。リフレーミングでは、問題や状況のネガティブな側面ではなく、ポジティブな側面に注目します。例えば、「喧嘩っ早い」は、豊かな感受性をもっている証拠です。また、物怖じせず、自分の気持ちを表現できるからこそなのです。(リフレーミングの例は、後述)
このようにストレングスアプローチで、児童生徒たちは自身の強みを生かした学校教育を進めることで、生徒は自己実現を追求することができます。
リフレーミング例
●意見が言えない→協調性があり、思慮深いところが〜さんの良さです。意見や考えを表現することで、その良さがさらに引き立つでしょう。
●だらしない→おおらかな性格で、他人を責めることはありません。興味があることには、とことんこだわって追究することができます。
●おとなしい→穏やかな性格で、人の話をよく聞きながら落ち着いて行動しています。ひかえめで受容性があり、友達関係も安定しています。
●おしゃべり→社交的で、分け隔てなく誰とでも接することができます。受け答えも早く、思ったことを素直に表現できるところが〜さんの良さです。
●ネガティブ→物事を真面目にとらえ、謙虚に受け止められます。落ち着いてこつこつと取組むところが〜さんの良さです。
●落ち着きがない→決断が早く、考えたことをすぐに行動に移すことができます。仕事を与えれば、労を惜しまず働くことができるのが、〜さんの良さです。
●頑固→正義感が強く、自分をしっかりもっています。そのため、周りに流されることなく、自分の意思を貫くことができます。
●飽きっぽい→好奇心旺盛で、様々なことに興味を示します。環境に適応する力もあります。
●自分がない→共感的に物事を捉えられるところが〜さんの良さです。
●しつこい→粘り強く、一度興味をもつと徹底的に取組みます。
最後に
格差・序列を生むような評価ではなく、次に繋がる成長や発展を促す評価をしていきたいものです。

平野 正隆(ひらの まさたか)
東京都品川区立学校
研究会での実践報告や校内での若手教員育成などの経験を通して、自分の経験や実践が広く皆様のお役に立てるのではないかと考えております。大人・子どもに関わらず、「明日から頑張れそうです」「明日が来るのが楽しみです」と言ってもらえるのが私の喜びです。
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