スポーツの秋にピッタリ Baseball5(1)
みなさんは、「Baseball5(ベースボール・ファイブ)」というスポーツをご存じですか?
W杯が開かれるほど人気を高めてきている、今が旬のスポーツ「Baseball5」。
このスポーツについて今回は紹介していきたいと思います。
明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之
まだまだ続く酷暑をよそに、暦の上ではすでに秋が到来している今日この頃。夏の終わりをさみしく思いながらも、本格的な秋が待ち遠しい時期となってまいりました。
秋といえば、「食欲の秋」「読書の秋」「芸術の秋」と言われますが、今日は「スポーツの秋」にスポットを当てて記していきたいと思います。その中でも「Baseball5」というスポーツについて紹介します。
「Baseball5」との出合い
このスポーツとの出合いは、先輩からの一言でした。
昨年度の秋口、私は次の体育の単元づくりで悩んでいました。そんな時に声をかけてくださったのが同じ学年のK先生です。「友弘さん、この間の神戸新聞見ました?面白そうなスポーツが紹介されていましたよ!」私は、すぐに飛びつき、その記事を読んでみました。
「新鮮!ベースボール5」「ボールを手打ち、男女でワンチーム」
ワクワクする見出しに思わず「すぐ教材化します!」と、その先輩に一言いい残し学校を後にして、そのまま行きつけのカフェに立ち寄りました。
Baseball5って何?
Baseball5というのは、男女5人1チームとなり、自分のこぶしでボールをたたいて出塁し、ホームベースを目指して進塁する簡易型ベースボールです。
基本的なルールは野球と同じですが、このスポーツにはピッチャーがいません。
バッターは自分の手のひらかこぶしでボールをたたいて塁に出ます。塁間も野球に比べるとずいぶん狭く、一見するとだれでも出塁できそうに感じるくらいの距離感です。
また、扱うボールも柔らかいソフトボールくらいの大きさの球を使い、グローブは装着しません。
つまり、必要な道具はボールだけ。塁も地面に直接書いて遊ぶことができます。
教材としてのBaseball5
私は、このスポーツを教材化するにあたり、ルールや学習過程、この競技の特徴を1枚の紙にまとめました(図1)。そうすることで、同じ学校の仲間にも教材として提供しやすいと考えたからです。この教材の大きな特徴は、なんといってもピッチャーの不在です。
ベースボール型のゲームの課題について梅野(2017)は以下のように述べています。
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野球やソフトボールの教材化を困難にしている問題点がいくつか認められる。具体的には、「ピッチャーがいること(ストライクが取れないため、ゲームが進まない)」「1塁への送球時間と打者の疾走時間との競争になる(1塁への送球が正確にできない)」「3アウト制であること(チーム力に差があるとき、ゲームが終了しない)」「運動量が少ない)(外野とベンチを往復するだけで終わることがある)」などである。
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これらの課題点を克服できる可能性があるのがこのBaseball5なのです。なぜなら、このBaseball5にはピッチャーが存在せず、バッターは自分で投げたボールを自分の手で打つことができるからです。
ピッチャーがいないということによって生まれる教材としての良さはほかにもあります。それは、打つ場所や守る場所、守り方に重点を置いて作戦を立てることができるということです。例えば、ピッチャーが投げたボールを打ち返すとなると、落ち着いて狙いを定められない児童でも、このゲームでは進塁の実態に合わせて打つ場所を狙い定めることがしやすくなります。また、守備においても、塁に出ている相手に応じて、守備のつき方を工夫したり、受けたボールを投げる場所を工夫したりと、立てた作戦を実行しやすくなるというわけです。
また、公式のルールに手を加えた個所もあります。公式ルールでは、ファウルボールや空振りは「アウト」として判定されます。しかし、教材化するにあたってはアウトのルールは適応しませんでした。適応しないことで、打者が落ち着いてボールを打ったり、狙いを定めたりしやすいと考えたからです。
さらに、公式ルールには、バッターボックスから2mの位置にノーヒットゾーンという、バウンドすると打ち直しとなる区域があるのですが、教材化するにあたってはその区域を設けませんでした。そうすることで、思い切ってボールを打つことができると考えたからです。
学習の実際
では、実際に第4学年との学習の様子をもとに、もう少し詳しくBaseball5についてお伝えしていきたいと思います。
と思ったのですが、少し長くなりそうですので、一区切りとさせていただきます。次回は、どのような学習過程で、どのように学習が進んでいったのかを紹介したいと思います。
友弘 敬之(ともひろ たかゆき)
明石市立鳥羽小学校 教諭
「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。
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