2023.01.31
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保護者から見た学校 ―授業参観のときに思うこと―(6)

我が家には中学生の子どもがいます。数年前から「これ今の保護者の立場としてどう思いますか?」と行事の計画や配布プリントについて,職場で意見を求められることが増えました。私の考えていることが保護者にとっても学校にとっても,役に立つことがあるのかもと思うようになりました。保護者から見た学校について,また一教員として前向きにあくまで前向きに!考えてみたいと思います。 この連載は私の個人的な意見であることと合わせて,今までの勤務校や教職員の方たちへの批判,我が子の通う学校や担任への苦情では決してないことをご理解いただけると幸いです。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

保護者が安心する学習

先日、自分のクラスで研究授業がありました。道徳「自分らしさを出すこと・その人らしさを受け入れること」についてみんなで学びました。これから社会に出て、いろいろな人と協働していく子どもたちには、自分の個性を表現することと同時に多様な人たちの個性を受け入れることが必要となってきます。今回は特に「受け入れること」についてみんなでGoogle Jamboardを使って話し合う学びを行いました。

1年近く学習を一緒にしてきているので、いつもと違う状況に子どもたちは緊張しながらも、意欲をもって友達と話し合い、考えたり、発言したりしていました。授業参観が感染症対策で無くなってきて、保護者が学校へ子どもの様子を見に来る時間は本当に少なくなりました。今回のように子どもたちのがんばる姿はぜひ保護者のみなさんにも見ていただきたいなあと思いました。

「意見がある人からどうぞ」と促すとほとんどの子が自ら立って発言します。グループの友達と前向きに楽しそうに話し合う様子が見られます。また、なかなか表現できない子もJamboardの付箋をもとに他の友達に「〇〇さんの考えが良かった」って言われたら、嬉しそうにしています。我が子のそういう姿を見られたら、保護者のみなさんも学校でがんばっていることとかクラスで楽しくやっていることとか1年間の成長を感じられて安心しますよね。

自分の授業が良かったという話ではもちろんなく、保護者が参観する機会があるなら、忙しい中ですが保護者に安心してもらうためにも、子どもたちのよい姿が見られる学習を計画していかないといけないと思います。この人は我が子を成長させてくれると思ってもらえれば、それが信頼されることにつながります。

私が見た授業参観

私は自分の子どもの学校公開日などに行く機会があると、自分の子どもだけでなく、他の学年の授業も参観に行きます(指導主事か!)先生たちがこの日のためにいろいろ考えてくれた学習はみていても楽しいからです。また、自分の担当している学年の学習も気になります。

小学2年生。道徳の授業をしています。「いのちをいただく」という絵本を使って命の大切さを考える学習だったと思います。調べたら結構あちこちで実践されているみたいですね。指導案も出てきました。幼稚園から中学生まで…。知らなかった。

そのときの教室の様子は…みんなキョトンとしています。絵本を読んでいるときは聞いていた感じになっていましたが、先生何が言いたいの?という顔です。数名がちょこっと発言していましたが、ほとんどシーンという時間です。よそ事をしている子もいます。先生は満足そうな(いや、内心焦っていたかもしれません)笑顔で「こんな話したらシーンとなるよね。みんなの心に届いたんだな」という表情(想像です)。

私はこのお話が意味するところを理解できた子は何人いたのだろうと心配になりました。いや、かしこい子何人かは話の内容自体は理解していると思います。しかし、子どもたちの心にはどれだけ響いたのか。まずお話自体が重い…2年生では怖いとか不安に思う子もいるでしょう…それまでそういった学習(生き物の学習とか)を少しずつしてきたとか、先生が意図的にカリキュラムを組んでいて満を持して参観日にぶつけてきたのか…。子どもの顔がそうではないことを物語っています。授業が終わったあと、保護者のみなさんもなんだか浮かない顔で無言で教室を出て行きました。次の日の給食で成果が発揮されたかもしれませんので、何とも言えませんが、私は少しびっくりしました。

参観日で保護者が見ているもの

参観日は先生方もしっかり準備をしたり、当日は緊張したりしていると思いますが、保護者もこの日のために時間を捻出したり、着ていく服を考えたり、ママ友がいないからどうやって時間つぶそうとか考えたり(それ私。いや、結構な人が思っていると思いたい)我が子がちゃんとやっているのか不安だったり、他のことで憂鬱だったりしながら、参観日に来てくれています。
ですので、やはり毎日の子どもたちの様子をしっかり把握して、実態に合わせてどの子も輝く学習をお見せしたいものです。

若いときは、参観日はとても緊張して、うまくいかなかったらどうしようとかここまでいくかなとか授業内容についていろいろ悩んでいましたが、保護者の立場になると、先生がどんな学習を展開しているかという内容はそこまでの関心事ではなく、自分の子どもがちゃんとやっているかしか見ていません。

ただ、クラスの雰囲気とか子どもたちの表情とかは保護者でも分かります。保護者同士の会話にも出てきます。そしてよい評価は保護者の間にすぐに広がっていきます。ありがたい。自分の子どもに先生がどう関わっているのかも気になります。多少、よく分からない授業(笑)をしていても大丈夫。日頃の学級経営と子どもたちへの接し方が出ます。

嫌な保護者にならない

参観日は一保護者として、周りの保護者の方々に授業の感想をそれとなく聞いてみたり、日頃思っていることを探ってみたりして自分も勉強させてもらっています。いや、その言い方が教員っぽい。

ここまで書いてみて、自分は嫌な保護者だなと思います。いや、教員の保護者なんて嫌ですよ。まして自分の方が年下だったりしたら余計に。低姿勢でいきたいと思います。

そのうち子どもたちの年齢が上がり、学校へ関わることがなくなっても、アンテナを高くして新しいことを常に受け入れていきたいなと思います。多様化していく価値観や家庭環境や子どもたちの思いなどに対応できるようにしていきたいものです。

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

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