2022.12.16
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保護者から見た学校 ―お礼の手紙は事前に書く話―(4)

我が家には中学生の子どもがいます。数年前から「これ今の保護者の立場としてどう思いますか?」と行事の計画や配布プリントについて,職場で意見を求められることが増えました。私の考えていることが保護者にとっても学校にとっても,役に立つことがあるのかもと思うようになりました。保護者から見た学校について,また一教員として前向きにあくまで前向きに!考えてみたいと思います。 この連載は私の個人的な意見であることと合わせて,今までの勤務校や教職員の方たちへの批判,我が子の通う学校や担任への苦情では決してないことをご理解いただけると幸いです。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

「修学旅行ってもう行ったんだっけ?」

子どもが6年生の時。もうすぐ修学旅行。
学校では、総合的な学習の時間などを使って、事前の準備が進められているのだろうなあと思っていました。小学校生活の中でも大きな行事です。子どもたちも楽しみにしています。教員も、やることが多く大変ですが、ワクワクしながら当日までに子どもたちの動きを計画していきます。
家庭での日々の会話の中で、我が子に何気なく「今日は修学旅行のこと何したの?」と尋ねました。そしたら、変なことを言うのです。
「今日はお礼の手紙を書いた」と…。
「ん?修学旅行ってもう行ったんだっけ???」

なんと、行ってもいない修学旅行で会ったこともないガイドさんに渡す手紙を書いた、と。私は目が点になってしまいました。
子どもは「先生が言うから想像で書いた。もし当日違っていたらそこは飛ばして読む」などと宣います。そんな手紙もらって嬉しいのか!?いや、それやる意味あるのか。
何も考えずにせっせと書いている子どもも「あちゃ~」という感じですが、(画用紙に貼って飾り付けまでしているらしい)書かせる方も書かせる方。旅行から帰ってきて、いろいろ教えてくれたガイドさんに何かお礼がしたい、手紙を書きたい、と子どもたちから出てくるのなら分かります。それなら子どもの思考の流れに沿った教育活動だと思います。

私は本当にがっかりしてしまいました。毎年こんなことやっていたのか…誰か何か思う人もいないのか…

がっかりする活動は他にもあるのでは…

手紙の件はあまりない例(あってほしくない)だと思いますが、学校には「何のためにやってるんだろう」とか「これやる意味あるのかな」という活動が残っている、というか何も考えずに慣例になっているというようなものがある気がします。

学習についてもせっかく学習したのに、生活に生かされていない、何のためにやったのということも多いと感じます…SDGsについて総合でやっているのに、ゴミがたくさん出たり、道徳であいさつの大切さを学んだはずなのにあいさつできない、とか。それを解決するためには子どもたちの思考に沿った単元計画や学習計画が必要です。子どもたちが本当に必要だとか切実だと納得できるように学習を進めたいものです。

逆もアリ。日常生活でルールを守っていないのに、道徳でルールについて自分たちで変えていくという高尚な話し合いをさせている、とか。当然、ちゃんとした話し合いにはなりません。見ている方はしらけます。それについては、子どもの実態をきちんと把握していないとそういうことになります。

本当に必要なものはなんだろう

以前の連載で、宿題の在り方を考えようという話を書きましたが、宿題を出すと本当に学力は伸びるのか、学習の習慣は身につくのか、科学的な検証が必要です。いや、本当は先生たちも気付いていると思うのです。あまり意味がないのではないかと。

千代田区立麹町中学校の校長だった工藤勇一先生が「宿題は必要ない。固定担任制も廃止。中間・期末テストも廃止。中1から中3まですべて授業や行事を組み替える」と学校改革の舵を取ったとき、前に立ちはだかったものはどんなに大きかっただろうと思わずにはいられません。
多くの全国の学校で行われていることを問い直し、本当に次世代を担う子どもたちにとって必要な学校の形を追求する姿は純粋にすごいなと思います。そして、結果、今では生徒や保護者に強く支持される学校となっています。

何でも他人のせいにする風潮、ありますよね。国が悪い、行政が何もしてくれない、私は岸田さんのインスタグラムをフォローしているのですが、コメントは批判(ほぼ悪口!)ばかりです。工藤先生の言葉を借りれば「自律」していないということなんだと思います。とても気になります。今、目の前の子どもたちをこんな大人にしたくないと強く思います。

宿題や授業開始のあいさつや日常的なものもそうですし、家庭訪問や連絡網が残っているところもあるようですし、単元テストや定期テストの在り方や行事や会議や報告などの必要性も議論されているのかいないのか…全てなくせばいいと言っているわけではないのですが、今一度子どもたちにとって必要なものはなんだろうと考えることが必要です。そして、自分もまずは現場のおかしなところにはきちんと異を唱え、皆さんととことん話し合い、子どもたちにとってよりよい学校になるように行動していこうと思います。

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

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