いろんな側面から見ることによって物事の捉え方は変わる
「私たちが今見ているものは、物事のほんの一面だけなのかもしれません」
こんなことを言われると、ちょっとドキッとしてしまいますね。でも、子どもたちが各教科で毎日学んでいることは、物事をいろんな側面から見せようとしていることが実に多いのです。今回は、算数を題材に「いろんな側面から見ることによって物事の捉え方は変わる」ことについて考えていきたいと思います。
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 神保 勇児
「ルビンの壺」からわかること
ルビンの壺はよく心理学などで見かけることが多いですね。とても不思議な絵で、白い部分と黒い部分のどちらかに注目することで、この絵の印象が変わります。大きな壺に見えたり、向き合った2人の顔にも見えたりするのです。
ここから私たちが考えたいことは、「いろんな側面から見ることによって物事の捉え方は変わる」ということです。白い壺を見ているだけでは、物事のある一つの側面からしか見ることができない。私は、子どもたちがいろんな側面から物事を見ていけるようにしていきたいなと日々感じながら授業をしています。
算数での「いろんな側面から見ること」とは?
算数の場合でいうと、例えば、数の学習では1つの数をいろんな側面から見ていくことをします。2年生「10000までの数」について考えてみましょう。この学習の第1時は、数を①〜④のように見ていきます。(ここでは、2923という数についてみていきましょう)
①2923は1000を2個、100を9個、10を2個、1を3個合わせた数。
②1000を2個、100を9個、10を2個、1を3個合わせた数は2923になる。
③2923は、千の位が2、百の位が9、十の位が2、一の位が3です。
④千の位が2、百の位が9、十の位が2、一の位が3の数は2923です。
興味・関心の高い子は、数直線で表したり、たし算やひき算で表そうとしたりするかもしれませんね。このように、1つの数をいろんな側面から見ていくことで、10000までの数の理解につなげていくのです。
しかし、このように数をいろんな側面で見ていくことが難しい子どももいます。その場合は、①と②反対の考え方をするものを交互に問うようにすると良いです(これは算数の授業スキルなので、次回以降にお伝えしますね)。
例えば、「2923は1000がいくつ、100がいくつ、10がいくつ、1がいくつの数かな?」「1000を2個、100を9個、10を2個、1を3個合わせた数は何かな?」と交互に聞いていくのです。4桁の数をいろいろ変えながら問題を出しているうちに、子どもは「逆のことを聞いているだけじゃん」とわかるようになってきます。
また、いろんな側面から見ていく学習をしていると、子どもは正しい部分とそうでない部分について考えるようになります。例えば、「いろんな解釈が出てくるものについて話し合う」(No.14)について改めて考えてきましょう。ここでは、35−24=11と24+11=35いう式はそれぞれ何を表しているのかをお伝えしました。この問題では、友達は何人かを求めている式はどれなのかを吟味することがこの授業では求められます。同じ問題を見ているのだけれど、表した式が異なるので、子どもたちに議論をする必要性が生まれてきます。
このように、「いろんな側面から見ることによって物事の捉え方は変わる」ことを算数でも大事にしてます。3学期は、学年のまとめの時期。教科書の見る角度を変えて見るのも面白いかもしれませんね。
今回のお話はいかがでしたか?この内容は、授業スキルアップ研究会でも扱っています。また、話し合いの進め方などについては『子どもがなぜか話したくなる 算数ファシリテーション入門』(東洋館出版社)や『学び合いコーディネートスキル60』(明治図書)をぜひ参考にしてみてください。
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神保 勇児(じんぼ ゆうじ)
東京学芸大学附属大泉小学校 教諭
2020年度はコロナウィルスでの休校期間でオンライン授業を多く行うことがありました。その時に得た、オンラインでも使える問題の見つけ方、子供の自力解決の見取り方、つぶやきの拾い方、発表検討のさせ方など紹介していきます。
「jimbochanのブログ」https://jimbochan.hatenablog.com/
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