探求:考えさせることの重要さ、大統領選にまつわる授業案を考案した先生にインタビュー(3)
これまで2回にわたり、代表的なグラフィックオーガナイザーを紹介しながら大統領選にまつわる探求授業を紹介しました。グラフィックオーガナイザーとは、考えを整理するために使われる視覚的思考ツールです。アメリカの小学校では低学年から思考を可視化することのできるこのグラフィックオーガナイザーを毎日のレッスンで導入しています。
今回はその一つであるベンダイアグラム(ベン図)を使った大統領選の授業実践を行った幼稚園教諭リズ・クライメック先生を取材しました。
在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師 下條 綾乃
質問1)先生の教師のキャリアについて教えて下さい。

リズ・クライメック先生
教育の仕事に就いて約20年になります。
幼稚園で8年間、小学校1年生、3年生、マルチエイジ(2年生と3年生を同じ教室で教えること)を教えてきました。
また、幼稚園の補助員やプリスクールの補助員の経験も以前していました。
質問2)大統領選にまつわる授業を幼稚園の教室で行ったことに対する意義を教えてください。

最初に行ったのは『Duck for President』(あひるを大統領に)という大統領選にちなんだ絵本の読み聞かせです。アメリカは4年ごとに新しい大統領を選び、国を運営します。大統領は2期務めることができます(2回選出=在任8年)。子どもたちは、自分にとって最良の決断をするために情報を選別する方法を幼い頃から学ぶことが重要であると考えます。
読み聞かせで使用した本の内容ですが、この物語ではブラウン農夫が毎日農場を切り盛りしています。ブラウン農夫は、それぞれの動物に毎日家事をさせています。その中でもアヒルは雑用が嫌いで、ブラウン農夫を追放するためになんと選挙を開催することにしました。 動物たちはみんな投票し、なんとアヒルが農場の経営者に選ばれることになります。経営者になったアヒルですが、農場の経営は楽しくないし、実に大変な仕事だとすぐに知ることになります。そこで彼は、大統領以外の他の役職に立候補することにします。大統領になったアヒルは、国の運営も大変な仕事であることに気づいたので、新聞で募集の広告を出し大統領を辞任し、農場に戻ることとなります。
その次に農夫ブラウンとアヒルの比較点、類似点を検証するためにベン図を使って子どもたちの思考を可視化しました。子どもたちは農夫ブラウンとアヒルがどのように同じで、どのように違うかを視覚的に理解することができました。
最後に教室で選挙を行いました。子どもたちは投票し集めた情報を使って誰が農場を運営すべきかを決めました。なんとアヒルが21対20で勝利しました。
質問3)グラフィックオーガナイザーを低学年の授業で使う利点、特にベン図を用いたことに対して一言お願いします。
特にグラフィックオーガナイザーは、子どもが紙の上で自分の考えを整理することを可能にします。
子どもたちも教師も自分の考えや他の人の考えを、わかりやすくすぐに参照できるのでこの学年でも多く活用しています。
ベン図を使って、読んだ物語を比較し、ストーリーはどのように同じで、どのように違うのか。これにより物語を視覚的に表現することができます。

下條 綾乃(しもじょう あやの)
在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師
日本語学校や領事館等で日本語を教えた後、米軍基地内の公立アメリカンスクールで日本語日本文化を教えて20年ほどになります。何年経っても毎日驚きと気づきがあり、それらの一部を皆さんと少しでも多くシェアできたら嬉しいです。外国の子供達に自分の話す言葉や習慣、文化を教えることの楽しさ、難しさ、面白さを呟いていきます。
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