2022.09.09
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主体的・協同的に学ぶ児童・生徒を育む~小学校低学年の実践~(8)

小学校で,子どもたちが主体的で協同的な学びを実現できる学習を研究してきました。子どもの実態によっては失敗もありました。が,子どもたちはいつでも生き生きと学習に励む姿を見せてくれました。1つの提案として読んでいただけたら幸いです。 学習づくりについては「(1)課題設定の工夫(2)子どもと子どもをつなぐかかわり合いの活動(3)振り返りの活用」の3つの手立てが大切だというお話ししました。今回は実際に行った授業実践をお伝えします。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

低学年における協同学習ってどんな感じ?

低学年,特に1年生での協同学習は難しいのではないか,と思われるかもしれません。私も1年生を担当する前はそう思っていました。
しかし,1年生を2回やってみて,そんなことはないなと感じました。むしろ学校生活に何の偏見やこだわりのない分,すんなり入っていくことが多いと思いました。

4月の入門期では,学校生活のイロハを伝えてできるようにしていきます。どこの学校にも入門期のカリキュラムがあるはずです。
一通り教えたら,あとは習熟です。5月の連休明けからは,できていない子がいたら,何度でも「どうするんだっけ?」「どうしたらいいと思う?」「教えてあげられる子いる?」の声かけをしていきます。全員が一度でできるわけはありません。「教えたよね?」なんて小言を言う必要もありません。私も成績処理ソフトの使い方に関しては,何度も隣の若い子に聞いています(^_^;)メンゴ!(←通じます?)
そうするうちに子どもたちは子どもたちで学ぶ素地ができていきます。先生に聞いてもアカン!あの子に聞いてこようって。「先生」はいざというときに出ればいいのです。学校生活のルールなんて知っている子が伝えてやればいいのです。

5月半ばから授業でも協同学習を始められます。

1年 国語「あいうえおであそぼう」

子どもの作った「あいうえおのうた」

入学して2か月,ひらがなの学習も終わり,言葉や文字への関心が高まっている6月の実践。「あいうえおであそぼう」(光村図書)という教材があります。この教材を使って,自分たちの「あいうえおのうた」を作成する流れで3時間完了のがくしゅうとしました。
第1時で教科書の「あいうえおであそぼう」を音読し,第2時には「あ」のつく言葉,4文字の言葉,1の1にぴったりな言葉などを集めていきました。
第3時には,集めた言葉を使って,友達と交流しながら,「1の1のあいうえおのうた」を作る活動をすることにしました。
生活班4人グループで各行を担当して作成していきました。他のいろいろな児童とも交流できるように他のグループを見に行ったり,友達のノートを見せてもらったりして1の1の「あいうえおのうた」を作っていくことができました。(写真)

1年 生活科「じぶんでできるよ」

賞状を書いたり、もらったりしています

2学期に入ると,児童は自分たちの思いや考えていることを積極的に伝えることができるようになってきます。特に生活科は,比較的,単元構成の融通が利く教科です。子どもたちにどんなことがしたいか,どんなふうに展開したいか,児童の思いや願いを聞きながら,進めていきました。

本単元では,始めに自分の一日を振り返り,自分や家族が何をしているか調べます。次に,家族がしていることの中から,自分でできそうなことを見つけて1週間取り組み,最後に振り返る流れとなるが,子どもたちに,この単元でどんなことがしたいか尋ねると「できるようになったことを友達に教えたい」「がんばったことを聞きたい」と言うので,最後に発表会をすることにしました。
さらに,「学習が終わったから,もう手伝いはしない,では意味がないよね。これからも続けるためにはどうすればいい。どうしたら,やる気になる?」と聞いてみると,多くの子が「褒められるとうれしくなってやる気になる」と言うので,学習目標を「じぶんでできるようになったことをともだちとつたえあい,ほめあいっこをしよう」としました。
子どもたちは,友達の発表を聞いて,「すごいな」「まねしたいな」と思った友達に賞状を書く活動に取り組みました。(写真)
1人で目玉焼きが作れるようになった子,洗濯物を干せるようになった子,お風呂掃除をしてきた子,食器洗いをがんばった子など堂々と発表し,みんなの大きな拍手をもらいました。

学活「あったらいいなこんな係」

学級の係は,児童のあったらいいなと思うものを,随時作っていくことにし,人数も自由としました。「きゅうきゅうほけんたい」(保健係)や「ひかりおろちあそびたい」(レク係)などといった定番の係もあれば,給食の食器をチェックしてくれる「つぶつぶチェック」やCDをかけたり,鍵盤ハーモニカを教えたりする「おんがくざむらい」など,児童のアイデアを生かした係が,3学期には,実に27もできることとなりました。

少し自己中心的なところが強くでてしまい,1人になりがちだったAさんは,「もちかえりかかり」として,帰りの会でコップ袋やエプロンを持ち帰るようを毎日みんなに伝えたり,「しゅくだいけいさつ」の係として,宿題をやってこられなかった児童の学習を見てあげたりするなど,意欲的に活動し,みんなの信頼を得ていきました。
友達とのコミュニケーションが苦手なBさんは,生き物の知識を生かして,生き物が好きな友達と「生きものちょうさたい」を結成し,生き物見学ツアーを企画してみんなを校庭に連れて行ったり,植物や魚を持ってきてみんなに紹介したりして活躍しました。

学級で問題があった場合,児童全員が参加して話し合いを行って,ルールや今後どうするのか決めていくようにしました。
例えば,ケンカが起きたとき,みんなで当事者の話を聞いて,どうすればよかったか意見を出し合ったり,これからどうするか考えたりし,今後につなげていきます。
「給食を食べ終わるのが遅く,1時15分に返却すると食べられない子がいる」ときは,「始めの5分はおしゃべりなしタイムにする」とか,「始めに食べられる量に減らす」,とか「タイマー係を作って時間を計る」など,意見が出るので,どんどん実際にやってみます。
中には,「食べられなかったら,昼放課(昼休み)なし」などという意見も出るので,それについても賛成が多ければ,やってみることもあり,やってみてどうだったかフィードバックして次のことを考えていくようにしました。

学び合いを当たり前に

3学期になると,学習において,理解がゆっくりな友達やまだできていない友達に,声をかけることは当たり前となり,自然に周りの子が手助けをする光景があちこちで見られるようになっていきます。
特に,体育科や算数科では,できるかできないかがはっきりしています。そのため,子どもたちは,自分ができると,周りにできていない子がいないか,場所を移動して探します。鉄棒の技のアドバイスをしたり,算数の問題が分からない友達にヒントを出したりして,全員が課題を達成することを目標に学習に取り組んでいけるようになりました。

4月から,教師が一貫して「みんなで伸びる」「全員でできるようになる」ことを求め続けることで,子どもたちもそれを望むようになっていきます。そして,時間内に全員が課題を達成すると,児童は手をたたいたり,飛び上がったりして,喜びを表現し,教室は大きな歓声に包まれます。ただし,時間内に全員が課題を達成することは簡単では時間内に全員が課題を達成することは簡単ではありません。実際には,達成できない日もあるため,児童の意欲が継続するよう,フォローが必要です。

読んでいただき,ありがとうございました

 学校生活においても,よりよい生活のあり方を願って,児童から「おわかれ会をしたい」「クラスのルールを考えたい」「困っていることがあるからみんなと相談したい」などの声が上がり,話し合い,自分たちで解決していくことができるようになります。友達との関わりを通して,子どもたちは学びを向上させます。1年生でも十分できます。
現在、このときの1年生は高学年になっています。私は勤務校を異動してしまったので,彼らの姿を見ることはできませんが、きっと立派に上級生として活躍しているのではないかと思っています。
これからも子どもたちが仲間と協力し合い,さまざまな問題を乗り越え、時代を切り開いていけるように研究を推進していきたいと思います。

長くなりましたが、これで8回に渡る私のとりあえず今までの研究報告を終わりたいと思います。まだまだ進化していきたいものです。
読んでいただき,ありがとうございました。またお会いしましょう。

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

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