2022.11.02
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理由をもっていないと笑っちゃいけないわけじゃない

1年生恐るべし。

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭 今村 行

どうも、今村です。

若手の(もう若手ではなくなってきましたが)男性教員の定めのようなものなのかもしれませんが、私もこれまでの教員経験の中で5、6年生の担任が一番多く、低学年を担任することは滅多にありませんでした。そんな感じなので、担任している高学年の子に「今村先生、1年生の担任とかできないでしょ」と言われてしまうことまでありました。

今年、10年ぶりに1年生を担任しています。
私にとって、毎日がハッとさせられる瞬間の連続で、愉しく過ごしています。

「たいせつなことをおしらせする」

こんな大惨事がありました。

運動会シーズン、応援団担当だった私は、5、6年生の朝練の指導があり、その日は教室で1年生児童を迎えることができませんでした。朝練が終わり、体育館から教室に向かって歩いていると、何やら廊下の遠くの方から、猛烈にこちらに向かってダッシュしている子どもがいます。短い腕や脚を振って走るシルエットから、どうやら1年生っぽいということがわかり、嫌な予感がし始めます。とりあえず近くまできたら、猛烈にダッシュしていることを注意しなければなりません。

声がします。大声の部類です。
「いまむーらーせんせーーーい!」

街中で「他人のふり」をするということがあると思うのですが、今、私は学校の中で「他人のふり」をしたくなっております。

「たんじょうび!おめでーとー!!」
そこからです。大変な1日が始まったのは。

教室に行くと、黒板がお祝いのメッセージで埋め尽くされております。まだ習いたてくらいのひらがなカタカナで、一生懸命何やら書きつけております。きれいとは言い難いですが、気持ちはそれなりに伝わってまいります。

念の為断っておきますと、私、自分の誕生日を声高に子どもにアピールしたりはしておりません。PTAのクラス委員さんのアンケートで誕生日を書く欄があったので、わざわざ白紙で返すのも失礼ですから書いてお返ししただけで、それがなぜか子どもに伝わっております。

子「せんせい、ほーそーしつにいってきました!」
今「…!?放送室、だと…?」
子「きょうはいまむらせんせいのたんじょうびだよってほーそーしてって」
今「あ、アホなの!?」
子「…!?」
今「…!?」
子「ほーそーしつはたいせつなことをおしらせするへやだって…」

子曰く、1学期にやった学校探検では「放送室は大切なことを全校に知らせるための部屋である」ということがわかった、ゆえに放送室に駆け込んだ、ということらしいです…笑
恐るべしです。

教室に、内線の電話がかかってきます。放送委員担当の先生からです。

放「今村さん、いま6年生の放送委員の子が相談に来て」
今「…!?いったいなんですか?」
放「1年生が放送室に押しかけてきて、今村先生の誕生日だから放送してくれって言ってきたらしくて、どうすればいいか聞かれたんだけど、どうする?笑」
今「お気持ちだけいただいておきます笑」

がちゃん。
受話器を置いた手が汗ばんでおります。

今「君たち、ちょっと席に座って落ち着いて聞きなさい」
子ら「…!?」
今「放送室は、大事なことをお知らせする部屋というのは確かに勉強したが、大事なことってのはそういうことじゃない」
子ら「…!?」

もう、なんというか、「キョトン」の手本みたいな感じなんです笑
その後、6年生(昔担任していた子たち)からニヤニヤしながら「おめでとうございます!」と言われたり、同僚からニヤニヤしながら「おめでとう!」と言われたり、もうなんというか、大惨事でした笑

根拠のない自信

先日、クラスみんなで遊びたいという話題になり、じゃあどんな遊びしたいの?ということを聞いていた時のことです。

子①「エレベーターのうえみたいなボタンをこくばんにかいて」
今「ほうほう?」(黒板に△を描く)
子①「それをおしたら、いけめんがたつ」
今「…!?」

子①「あ、いけめんだけじゃなくて、びじんもたつ」
今「…!? え、やってみる?」
子②「えぇーあたし、はずかしい…」
今「えっと、とりあえず、ポチっ」(黒板の△を押す)
子ら「うぇーい!」「きゃー!」(ぞろぞろと立つ)

え、いったい何が起こっているの?笑
大人っぽい女の子が数名座ったままでおりまして、「え、なんなのこの時間は?」的な視線を私と交わすわけですが、周りの子が「〇○ちゃん!立って!」と急かしております。
もう、なんだかよくわからないんですが、うちのクラスで大人気のゲームになっております笑

彼らと一緒にいると、ゲラゲラ笑ってしまうことが多くて、なんというか些細な悩みを抱えて暗い顔をしたままここにいるのは、逆に失礼だなと思わされてしまいます。

私も自然と、根拠のない自信が、特に理由のない笑顔が湧いてきます。

恐るべしです。

今村 行(いまむら すすむ)

東京学芸大学附属大泉小学校 教諭

東京都板橋区立紅梅小学校で5年勤めた後、東京学芸大学附属大泉小学校にやってきて今に至ります。教室で目の前の人たちと、基本を大切に、愉しさをつくることを忘れずに、過ごしていたいと思っています。

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