2022.08.22
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主体的・協同的に学ぶ児童・生徒を育む~小学校高学年の実践~(7)

小学校で,子どもたちが主体的で協同的な学びを実現できる学習を研究してきました。子どもの実態によっては失敗もありました。が,子どもたちはいつでも生き生きと学習に励む姿を見せてくれました。1つの提案として読んでいただけたら幸いです。 学習づくりについては「(1)課題設定の工夫(2)子どもと子どもをつなぐかかわり合いの活動(3)振り返りの活用」の3つの手立てが大切だというお話ししました。今回は実際に行った授業実践をお伝えします。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

高学年における協同学習

勤務校を変わって1年目のことです。5年生のクラスを受けもちました。
私は今まで自分がやってきた協同学習を,当たり前のように授業に取り入れて学習を進めていこうとしました。
算数の時間。「教科書の○ページの問題をクラスのみんなが理解できて,他の人に説明できるようにしよう。今日は3人に説明しようね」と話して学習を始めました。
いきなりではなく,少しずつ段階を踏んで慣らしてきたつもりでしたが
子どもたちが動かない…こちらを向いてきょとんとしています。
「席を立って聞きに行っていいよ?」「1人で分からなかったら誰かに聞いた方がいいんじゃない?」など声をかけますが動きません。
学級委員の男の子が「いいんですか?」と聞くので「いいよ。じっと席に座っているだけじゃ授業が進まないよ」と応えるとおそるおそるまず男の子たちが席を立って動き始めました。
なるほど。子どもたちは授業は座って先生の話を聞いているものだと思っていたわけです。「そうじゃないよ,みんなで学び合って理解していくんだよ」その頃は毎日のように,みんなで学ぶ必要性と大切さを話しました。
始めの2ヶ月は子どもたちの意識を変えることで時間が過ぎました。高学年は今までのやり方があるので,少し難しさがあるなあと思いました。

保護者の理解も必要だった!

子どもたちだけではありません。保護者の中にも一斉学習を求めてくる方たちがいました。
私は今まで協同学習で成果を出してきたし,子どもたちの学力も向上することを知っています。
しかし,保護者から見たら,子どもたちが席を立ってざわざわする授業など言語道断!ですから,驚いたのでしょうね。
少し郊外の学校でしたし,保護者の時代の学習のやり方と大きくかけ離れていたことも原因だったと思います。
私は地域によってやり方も大きく異なることを知り,深く反省しました。学級通信で、自分の思いと協同学習の意図,学力の保証は必ずすることを伝えていきました。
うまく伝わったか分かりませんが,2学期以降は保護者の方たちの協力のおかげで落ち着いた環境を作ることができました。
その頃からすでに5年ほど経過していて,今はそんなに逆風を感じませんが,子どもたちの姿を通して,保護者の理解を得ることもしていかなければなりません。

5年生社会「自動車のカタログを作ろう」

chromebookを使ってカタログを作成する児童

本単元は我が国の産業,ここでは自動車をつくる工業を具体例として国民生活を支える産業の発展について考える学習です。
これからの自動車づくりについて学ぶ時間では,学習課題を「これから発売される新しい自動車のカタログを作って,これからの自動車づくりについて伝え合おう」とし,グループでカタログを作る学習を行いました。
高齢者・障害者・学生・小さい子どものいる家族などのターゲットを決めて,4人グループで作成していきました。
始めにこれからの自動車に求められる要素(環境生・安全性)を全体で確認したあと,自分たちが考えるこれからの自動車のカタログを作っていきました。
児童の双方向の意見交換を促すため,ジャムボードを使って意見を交換することとしました。さらに,カタログ作成にはロイロノートを使用し,1人ずつページは担当するようにして全員参加を目指しました。

ターゲットが障がい者のグループでは「車椅子ごと乗れる」,高齢者のグループでは「ナビが音声で案内してくれる」「事故に合いそうになったら浮く」,小さい子どものいる家族には「子どものおやつを入れる冷蔵庫が付けられる」などターゲットに合わせた機能を考えていました。
児童の振り返りシートには「みんなの意見を聞くと考えたことのない自動車の機能があって参考にしたいと思った」「ジャムボードでいろいろな意見が出てきて『たしかにな』と納得した場面がたくさんあって楽しかった」「自分だけじゃ思いつかないような意見や案を出してくれたので,違った考え方や改善方法が思いついた」「友達から自分も考えてなかった意見が出てきておもしろかった。今,ぼくたちがやったことも,もしかしたら本当の車の会社もこうやって安全機能やドライブレコーダーなどができたんじゃないかと思った」など仲間との交流によって意欲をもって学習に取り組んだ様子が書かれていました。

5年家庭科「教室リフォーム大作戦」

ワークシート

単元の目標を子どもたちの思いから作成していきます。
子どもたちは,学習を生かして毎日過ごす教室を快適にしたいという思いをもっていました。
そこで,単元の目標を「物を生かして 住みやすく 教室リフォーム大作戦!」と設定し,学習を生かして,最後に教室を自分たちなりに工夫をして,快適にすることを目標としました。

まず学習課題を「『かくれているのはどこだ?そうじ場所のよごれを探せ!』よごれ探検で見つけたよごれを調べて,気付いたことを伝え合おう」とし,よごれ探検を行いました。
そうじ場所で見つけたよごれについて,種類や原因を考えてワークシート(写真資料)に書く活動を行いました。
児童の活動の時間を多く確保するために,ワークシートに活動の内容を記入し,指示を極力出さないようにしました。
子どもたちがいろいろな友達と交流できるように自由に移動して交流してよいこととしました。子どもたちは見つけたよごれについて,ワークシートを見せ合ったり,考えを聞きあったりして,グループを固定化せず,流動的に動いて活動していました。

その後は「よごれをやっつけろ!お掃除プロ」で自作の掃除道具を作ったり,いらなくなった歯ブラシを使ったりして,教室を掃除。
最後に「教室リフォーム大作戦」を行いました。
「本の上にほこりが溜まることに気付いたので,要らない布や端切れを使って,本棚のカバーを付けたい」「空き缶を使って,ペン立てにしたい」といった考えや「黒板消しが落ちやすく,下がチョークの粉で汚れるので,黒板消しが落ちないように黒板消し入れを作る」「名札入れが古くなっているので,折り紙で名札入れを作りたい」などのアイデアが出て,実行しました。

本単元を行ったことで,日々の清掃活動にも変容が見られました。
ほこりが廊下や教室の隅や物のかげに溜まりやすいことを学習して,そこをていねいに確認しながら掃除をする姿が見られるようになったり,黒板の上やカーテンレールの上なども自作の道具で掃除してもいいか聞いてきたり,1週間のうち1日は新聞紙で窓をふく日を作ったり,給食のご飯が落ちて床にくっついて固まっていることに気付いて,新たに自作の道具を作ったり。
主体的に清掃活動に取り組む子どもたちが増えました。

長くなってしまったので終わります

道徳の授業でもなかなかおもしろい実践があったので,書きたかったのですが,長くなってしまうのでまた今度書きたいと思います。
子どもたちが楽しく学習に取り組む姿は見ていてこちらも嬉しくなります。自分も楽しいですし。しかも学習は子どもたちが進めていってくれるので,公開研究授業など,こちらも緊張しないで済みます(^_^)

思うように進まず,これはまずい~ということもありますが,それも含めて,失敗してもいい,学びはある!(子どもと一緒)と思っておきます。
次回は低学年の実践を述べます。

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

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