2022.08.01
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主体的・協同的に学ぶ児童・生徒を育む~小学校中学年の実践~(6)

小学校で,子どもたちが主体的で協同的な学びを実現できる学習を研究してきました。子どもの実態によっては失敗もありました。が,子どもたちはいつでも生き生きと学習に励む姿を見せてくれました。1つの提案として読んでいただけたら幸いです。 学習づくりについては「(1)課題設定の工夫(2)子どもと子どもをつなぐかかわり合いの活動(3)振り返りの活用」の3つの手立てが大切だというお話ししました。今回は実際に行った授業実践をお伝えします。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

小学校中学年における協同学習

小学校3年生くらいになると,ギャングエイジと呼ばれる通り,行動範囲が広くなり,自己主張も激しくなります。男女の争いも頻発します。先生方も一筋縄ではいかない子どもたちに大変な思いをされているかもしれません。
そんなパワーの有り余っている子どもたちにとっても協同学習を始めるには最適な時期だと考えます。

まず,子どもたちは低学年で「話す・聞く」といった学習の基本を身につけてきています。また,ノートを写す・発表する・話し合いをするなどの学習の仕方もある程度は理解しています。
また,高学年のように自分たちのやり方があったり,なかなか考えを変えられなかったりといったこともありません。学習の仕方についてもすぐに適応してくれます。

以下に3年生の実践を述べます。

3年図工 お話だいすき「みんなでエルマーのぼうけんロードをつくろう」

写真1「エルマーのぼうけん」の掲示

「エルマーのぼうけん」の読み聞かせの後,描きたい場面を選び,場面ごとにグループを作って活動しました。グループごとに,本の挿絵やトランプなどのグッズに触れたり,動物の描いてある図書や図鑑を調べたりして,四つ切り画用紙に動物やエルマーを描いていきます。

色を確認するために何度も本を読んだり,様子が伝わるような角度を相談したりしながら活動しました。
その後,八つ切り画用紙にポーズをとった自分を描き,組み合わせて廊下に掲示しました。廊下には壁画のように「エルマーのぼうけん」物語が並び(写真1),児童も達成感を感じることができました。

この活動でのポイントは,各個人の力量で出来映えが左右されてしまいがちな絵画の単元をグループの力を借りることで,どの子どもも一定の完成度まで達成することができたことです。動物の書き方や色の混ぜ方をお互いに参考にしたり,教え合ったりする中で,絵を描くことが苦手な子どもも友達のまねをしながら,丁寧に作品を仕上げることができたことは大きな成果と言えます。

3年社会 わたしたちのまちのようす「教室に○○小校区を再現しよう」

写真2 教室の地図例(筆者作成)

3年生の社会では、東西南北の方角を学習します。始めに教室の東西南北を考え,教室の地図を作成しました。(写真2)

児童は次に「北校舎の地図を作りたい」という思いをもちました。さらに「学校全体の地図を作ってみたい」と発展していきました。
そして,校区探検をしたあと子どもたちに「校区探検をして何をしてみたいかな」と尋ねると「校区全体の地図を作りたい」と思いがふくらみました。

「みんなの通学路を合わせたら,校区の地図ができるんじゃないか」という児童の提案で,通学方面別にグループを作り,各グループで地図を描いていくことになりました。

子どもたちは「ここから北に曲がっていくから…」「そこは駐車場があるよ」「何かの黒い建物があるよね」「織布工場だよ」など話し合いながら,描いた地図をつなげていきました。「ぼくがこっちは作るよ」「こっちは任せて」とみんなで相談しながら地図を作り上げていくことができました。

途中でやんちゃな男の子が「先生,紙を立てて立体的にしてもいいですか」と聞いてきたので,「それは見た人にもわかりやすいかもね。やってみよう」と応えたら,いろいろな建造物が出現しました。

地図ですから,立体があってはいけない…かもしれない。社会科の先生には怒られるかもしれない案件ですが,私はその子どもが一生懸命学習に向かっていることが嬉しかったですし,何より子どもの発想に自分がおもしろそうって思ってしまいました。
楽しければいいと思っていたわけではありませんが、学習意欲を向上させることは自分の役目でもあると考えています。

これだけ地図を描いたので東西南北はほとんどの子どもがばっちりでしたし,単元テストの成績もとてもよかったです。いろいろご意見いただければと思います。

3年理科 植物の育ち方「ホウセンカのせいちょうすごろくを作ろう」

写真3 子どもが作ったすごろく(見にくくてすみません)

植物の育ち方の学習では,ホウセンカを育てました。ホウセンカって丈夫でお世話がしやすいですよね。ありがたいです。
我が家では,次男が3年生の時に植木鉢ごと持ち帰ったホウセンカの種が落ち,芽が生えました。始めのうちは楽しんでいたのですが,次の年には玄関横で大量に繁殖をしたので、次男がいないすきに撤去しました…。茎も太く,根も深くて大変でした。若いときにはあまり気にしなかったけど,いろいろと家庭では大変なことが起こっていますよね。図工の作品どうする問題とか。あ、本題に移ります。

ホウセンカの学習の最後に,育ち方の順序性を意識させるために,種からスタートして,また種に戻って,ぐるぐる何周も行うすごろくをペアで作成する活動を取り入れました。
春から育ててきた,子どもにとって思い入れのあるホウセンカを題材にすごろく(写真3)を作る活動を取り入れることで,「たねはすごく小さかったね」「大きく育ってうれしかった」など思い出を語り合いながら,「芽が出た」マスや「花が咲いた」マスのあるすごろくを作っていきました。
「種がはじけるまねをする」「『大きくなーれ』と3回言う」といった子どもたちの発想豊かなマスもできました。

「アリがのぼってきて大変だった」「水やりをたまに忘れちゃった」など苦労や失敗の話も出てきたので「それもすごろくのマスにしてみたら?」とアドバイスすると「虫に食われた1回休み」「水やりを忘れた3マス戻る」などのマスが生まれました。
この活動を通して,お互いの考えを認めたり,共有したりさせて,全員が植物の育ち方の学習の理解を深めることができました。

次回は高学年での実践をお伝えします。

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

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