2022.06.21
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主体的・協同的に学ぶ児童・生徒を育む~子ども同士のかかわり合いの学習を創ろう・コロナ禍編~(4)

小学校で,子どもたちが主体的で協同的な学びを実現できる学習を研究してきました。今年度は,中学校へ異動となり,新たな気持ちで研究を継続していこうと思います。子どもたちはいつでも生き生きと学習に励む姿を見せてくれました。1つの提案として読んでいただけたら幸いです。 前回までに、学習づくりについては「①課題設定の工夫②子どもと子どもをつなぐかかわり合いの活動③振り返り」の3つの手立てが大切だというお話しをしました。今回は学習の中心となる「②子どもと子どもをつなぐかかわり合いの活動」(コロナ禍編)について話します。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

文法の学習も協同学習で

中学校での国語の授業でのことです。1年生、初めての文法の学習。1人の男の子が「わからない」といって机に伏せてしまいました。おそらく、その子の他にも「わからない」と言えずに困っていた子がいたのだろうと思います。

そこで、彼のために、というか全体のために、次の学習ではグループでの学習を取り入れました。例文をみんなで話し合いながら、文節に分けたり、単語に分けたりしていきました。前回の授業で「わからない」といってジャージをかぶってしまった彼も、グループの友達に「教えて」と伝えて、一緒に学習に取り組みました。

さらに、次の時間にはプリントで習熟の時間をとりました。全体での学習ですが、誰と学習してもいいし、1人でもいい、何を見てもいいから、とにかく全問解けるようにしようと話して、学習を始めました。彼は率先して教室を歩き回り、前回自分が教えてもらったことを他の友達に教える姿も見られました。彼は意欲的に学習に取り組み、この学習に自信をつけました。私は子ども同士で学ぶ良さを改めて感じました。

余談ですが「わからない」が言えるように

学習内容は同じです。教科書の文法の2ページをやることですが、私がやったことは説明を最低限にし,協同学習の時間を増やしただけです。

大阪の大空小学校初代校長の木村泰子先生は、著書の中で「生徒がわからないことがあったときに『わからない』といえる学校をつくる」ことが大切だとおっしゃっていました。教師が全体に向かって「わかりましたか?」と問いかけ、わからない子がいても一斉に「はい!」と答えさせる場面を、見たことがあるのではないでしょうか。私は授業で「わかりましたか?」を使ったことは多分ありません。言うのなら「わからないところはどこですか」です。「わからない」と素直に声に出してくれた彼には感謝しています。

その学習後、うちのクラスでは「~ね」を入れて話す文節ごっこ?が流行っています。「そうじにね、行くね」「黒板をね、ぞうきんでね、ふくね」「かばんをね、下に置けね」「だまりなさいね」……なんか、ちょっとかわいいですね。

コロナ禍での学習

コロナ禍において,行動が制限され,教室での学習の仕方も大きく変わりました。私が進めている協同学習においても、この2年間は本当にピンチの時期でした。しかし、子どもたちがお互いに学び合う協同的な学習を止めるわけにはいきません。そこで、この2年間は感染症が再び猛威をふるっても学びを止めない方法を考えてきました。たとえば……

○低学年 ペア活動で 声を出さずに「ジェスチャークイズ!」
たとえばこんな場面……おむすびころりんの場面・鑑賞曲の猫・体育まねっこ遊び

○中学年 グループ活動で「立ち上がれホワイトボードミーティング」
個人で付箋に書いて,立てたボードに貼っていく。
机の上でやると子ども同士が頭を付き合わせてしまうので,ホワイトボードは立てましょう!
壁に貼るペラペラタイプもあり。

○中学年 ペア活動で「作文リレー」 ・ 高学年 ペア活動で「鉛筆トーク」
各自の鉛筆を使用して,声を出さずに!
たとえばこんな場面……算数の問題づくり・ウェビングマップづくり・連想ゲーム

○高学年 全体で「ディベート大会」
ロイロノートのアンケート機能でジャッジ!!理由もタブレットで投稿する。

本当はみんな気づいている 一斉講義型学習は非効率的

先生方はとかく「時間がない」と言いがちです。元麹町中学校の工藤勇一先生は著書の中でこう述べています。「一斉講義型の授業は、子どもの主体性を奪うだけでなく、とても非効率的です。この点を改善するため、麹町中学校では数学の授業で、従来の一斉授業スタイルを3年間いっさい行いませんでした。(中略)結果として、取り残される生徒がいなくなるだけでなく、下位層、上位層すべての生徒たちの学力が大きく向上しました。なにより驚くべきことは、学ぶのが遅い子どもたちでも従来のおよそ半分の時間で学習が済んでしまったことです。」(『学校の未来はここから始まる―学校を変える、本気の教育論議』木村素子・工藤勇一・合田哲雄 2021.3 教育開発研究所)

かかわり合いの時間をあえてとらないといけないのではなく,今やっている学習内容をかかわり合いで進めましょう(当事者意識を持たせる)ということなのです。伝わりますかね?

協同学習が苦手な子

しかし協同学習を続ける中で、そういった学習が苦手な子どももいました。同級生同士の対人関係に苦手意識をもった子どもです。そういった子どもたちが安心して学習に取り組めるように、「1人で解きたいってこともあるよね」と伝えます。

その子がわからなくてキョロキョロしていたり、ぼーっとしていたりしたら、そっと声をかけて「一緒に聞いてみようか」「誰に聞いてみたらいいと思う?」と言ってみたりします。

2学期にもなると、私より対応が上手な子どもが出てきて、いつの間にか一緒に活動していたり、私よりもその子のすごいところを知っていて、教えてもらったりしています。それも「やってあげる」「助けてあげる」という雰囲気ではなく、本当に自然に。対等に接しているのだな、子どもってすごいなと感心します。

また、そういう子どもに有効だったのは他学年や大人相手の協同学習です。物怖じしない彼らの特性が生かされ、学習が進むことも多かったと思います。

次回は最後3つ目の手立て、「振り返りの活用」についてお話ししたいと思います。

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

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