2022.04.18
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

主体的・協同的に学ぶ児童・生徒を育む~主体的・協同的な学びってなんだろう~(1)

小学校で,子どもたちが主体的で協同的な学びを実現できる学習を研究してきました。今年度は,中学校へ異動となり,新たな気持ちで研究を継続していこうと思います。
研究といっても,「ちょっとやってみたい」程度のものや「こうしたらどうかな」的な思いつきだったものもあります。子どもの実態によっては失敗もありました。が,子どもたちはいつでも生き生きと学習に励む姿を見せてくれました。1つの提案として読んでいただけたら幸いです。
第1回は「主体的・協同的な学びってなんだろう」についてお話したいと思います。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

主体的ってどんな感じ?

先日,こんなことがありました。
我が家には中学生の息子が2人います。長男が,登校前に慌てて何かを探しています。何を探しているのか聞くと「今日は生徒会役員の選挙があるのだけど,生徒IDカード(身分証明証)がない。あれがないと選挙に参加できない」と宣(のたま)います。
大騒ぎで一緒に探しましたが,時間になってしまいました。「もう時間ないから行きなよ!」と諦めて私が言った時,彼はひらめいたのです。「身分を証明するものなら,IDカードじゃなくてもいいんじゃない。保険証を持って行く」と。彼は自分の保険証を制服のポケットに入れて慌てて出かけて行きました。
保険証で生徒会役員選挙に参加できるのか?という疑問を持ちながら,朝からおもしろいことやってる息子をちょっとおもしろがりながら,大事なものだからなくさないでくれと心配しながら,自分は勤務校に出勤しました。

その日,朝の話を同僚にすると「いいじゃないですか。自分で主体的に考えてそうしたんだから。主体性が育ってますよ」と言うので,一緒に笑ってしまいました。
主体的ってこんな感じ? では,前日に1つ違いの弟(当時小6)の真新しい制服を間違えて着ていったのも,なかなか提出物を出してこないのも,勉強をほとんどしないのも,主体的に考えてのことなのかしら。(ほぼ愚痴)

協同的ってどんな感じ?

はたまた,こんなことがありました。
小学校4年生の給食の時間,みんなに配膳が終わった後,Aさんが「先生,四角い食缶の端に食材がまだ付いているので漁ってもいいですか」と言います。「いいけど,1口もないと思うよ」と伝えると,Bさん(「漁り隊」と名付けられている隊員の一員)もやってきて,2人で無言で食缶の隅にへばりついた食材をせっせと集めています。お皿に1口大のおかずを載せて,Aさんは「Bくんが一緒にやってくれたからこんなに取れた!協力することは大事だな」とうれしそうに言うのでした。Bさんもうれしそう。
協同的ってこんな感じ? その日から「漁り隊」の隊員がどんどん増えて,Bさんが毎日「漁り隊。集合!」と号令をかけるようになってしまったけど,これも協同的な活動ってことでいいのかしら。

文部科学省の答申では,ご存じの通り「協働」が使われいます。広辞苑第6版によると「協力して働くこと」となっています。仕事や労働をすることにフォーカスされている言葉で,全員が同程度に達成したり,関与したりすることが求められています。
私は意識して「協同」を使用しています。広辞苑第6版では「共に心と力を合わせて助け合って仕事をすること」となっています。仕事を成し遂げるだけでなく,心理的な側面も重視した言葉立場や状況を超え,能力に応じて助け合ったり,高め合ったりする意味が込められています。
注(1):能力に応じて助け合ったり,高め合ったりする集団を目指したいという思いから「協同」を使うことで統一しています。

どうして主体的・協同的な学びが必要なの?

それでは,なぜ今,子どもたちの主体的で協同的な学びが必要となってくるのでしょうか。現在の社会では,グローバル化や情報化が急速に進展し,多様な価値観が存在しています。技術革新等の影響により、社会の在り方そのものが、劇的に変わる状況が生じつつあります。
このような中で、「持続可能な社会の創り手」として,当事者意識をもって価値観の違う多くの他者と協同していく姿勢は大変重要となってきます。自分の考えをもち,価値観の違う人々とコミュニケーションをとりながら,自分や周りの幸せのために他者と協同していく姿勢がなければ,これからの共生社会の一員とは言えない時代がやってきます。

そこで,さまざまな子どもたちが通う学校では,子どもたちが意欲をもって自分の考えや思いを伝え,他者と関わり合う中で,学びを深めていくことのできる学習・活動づくりが重要であると言えます。学習や学校生活において,子どもたちが主体的に行動し,学習でも生活でも問題を解決していけるとしたら,ある意味理想の学校と言えるのではないでしょうか。まあ.教師はいらなくなるかもですが。いえ,ファシリテーターとして存在したいところです。この話はまた次回以降。

主体的・協同的な学びを創り出すには

子どもたちがそのような学習をしていくためには,以下の3つの手立てが有効であると考えています。

①子どもをやる気にさせる学習課題の作成
子どもの疑問や考えを重視し,児童の思考の流れに則した学習課題を作成し、子どもが「やってみたい」と思う課題を設定することで、児童の意欲を高めます。

②子どもと子どもをつなぐ学習活動の工夫
子ども同士の対話が必要な学習や協同が必要な学習を行ったり,教師が子どもと子どもをつなぐ役割をしたりすることでより深い学びを創ります。

③振り返り(リフレクション)の活用
学習の最後に振り返りを行い,子どものよかったところを認め,みんなだからできたという達成感を児童に与えるとともに,この学習が今後の自分の生活にどう生かされるのかを考えさせます。

詳しい内容については次回にお話ししたいと思います。

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop