2022.06.01
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

主体的・協同的に学ぶ児童・生徒を育む~子ども同士のかかわり合いの活動を創ろう~(3)

小学校で,子どもたちが主体的で協同的な学びを実現できる学習を研究してきました。今年度は,中学校へ異動となり,新たな気持ちで研究を継続していこうと思います。研究といっても「ちょっとやってみたい」程度のものや「こうしたらどうかな」的な思いつきだったものもあります。子どもの実態によっては失敗もありました。が,子どもたちはいつでも生き生きと学習に励む姿を見せてくれました。1つの提案として読んでいただけたら幸いです。
初回で学習づくりについては「①課題設定の工夫②子どもと子どもをつなぐかかわり合いの活動③振り返り」の3つの手立てが大切だ(資料①)というお話ししました。前回は「①課題設定の工夫」についてお伝えしました。今回は学習の中心となる「②子どもと子どもをつなぐかかわり合いの活動」について話します。

愛知県公立中学校勤務 都築 準子

子どもと子どもをつなぐ「かかわり合い」の活動の重要性

<資料①>研究の構想

仲間とかかわりのない学びに,広がりや深まりは期待できません。仲間とかかわり合う時間を確保し,子どもたちの学びを豊かなものにしたい! しかし,教師主導の話し合いでは子どもの主体性が損なわれてしまいます。
そこで,子どものかかわり合いが促進され,個々の学びが豊かなものとなるようなペアやグループ,全体でのかかわり合いを学習に取り入れることが重要になります。

学級経営などに対して実証的な知見を多数提供されている、河村茂雄氏(早稲田大学教授・学級崩壊,教師のリーダーシップ,『学級ソーシャルスキルCSS』著者)は,学習意欲と学力向上について,自身のホームページ内で次のように述べています。
  ①みんなとかかわる中で,学習意欲が喚起される。
  ②互いを認め合うことができるので,学習意欲が持続する。
  ③友達のよい学習方法をモデルとして取り入れる。
  ④主体的な学習意欲が形成され,学習活動に広がりと深まりが起こり,学習が定着する。

以上の①~④を意識して授業を考えていくと,子どもたちの学習が深まり,学習意欲が継続するということが言えます。

「かかわり合い」の活動を考えるときに大切なこと

子どもたちが「知りたい!」「やってみたい!」と思えるような学習課題を作ったら,今度は「みんなでやりたい!」活動を考えましょう。(実際,指導案を立てるとき,私は「こんなことやってみたい」という活動から考えます)

 ①子どもたちにとって,ゴールが見える(イメージできる)ようにする
   学習課題と同じく,ゴールは明確に。闇雲に走ってもたどり着けません。
 ②1人ではなく,友達とかかわり合う良さが実感できるものにする
   1人ではできないことも,みんなとならできそうという期待をもたせましょう。
 ③個の学びと,かかわり合う学びがつながり重なり合っていくようにする
   自分の学びがみんなの学びになることをきちんと実感させましょう。
 ④ノート・ホワイトボード・付箋・chromebookを活用すること
   いろいろな便利な道具を活用しましょう。
参考:『やる気を引き出す全員参加の授業づくり』赤坂真二・2016・明治図書

実際に学習を創ってみましょう(実際の活動例)

資料②かかわり合いの活動イメージ図

子ども同士の「かかわり合い」を生む協同学習型授業が,従来型授業と異なる点は,答えとその道筋を教師が導かず,学習者同士で協同しながら,多様な考えとその道筋を学習者自身に辿らせることを重視する点であると言えます。つまり,結果よりプロセスを重視するということです。
そこで,「誰かと何かをしながらあることに気付いていくプロセス」が生まれる活動が必要になります。
学習者の気付きを引き出すためのしかけとして,次の3タイプがあります。学習者の気付きを引き出すためのしかけとして,次の3タイプを提示しました。

 ①遊び・ゲーム的活動……ゲーム・クイズ・遊びなど
 ②表現・制作的活動 ……作文・ロールプレイ・スピーチなど
 ③対話・討論的活動 ……ランキング・ディベートなど
参考:『ワークショップ型授業で国語が変わる』2015,上条晴夫,評論社

学習クイズや学習ゲームを授業の中に取り入れ,児童の興味・関心を引きつけたり,学習への意欲付けをしたりすることも初期の「かかわり合い」の活動といえるでしょう。
さらに,グループで1つの作品を作ったり,話し合ってまとめたものを発表したりすることも,友達と協同しながらの活動です。
そして,学年が上がるにつれ,討論やディベートなどより言語力が必要な学びへ進めていく必要があります。(資料②イメージ図)
子ども同士の「かかわり合い」の活動を取り入れる際に,最も留意すべき点は,いま目の前にいる子どもたちの「資質・能力」などを,変化・変容させるための学びのしかけをどう選んでいったらいいか考える点にあります。子どもたちの実態に合わせて,「かかわり合い」の方法を考察していく必要があります。

資料③は「かかわり合い」の活動例です。

資料③「かかわり合い」の活動例

ただ,この2年ほどは感染症対策が入ってきてなかなか思うように学習が進められなかったことも事実です。次回は感染症の中でもできるような活動の提案もしていきたいと思います。

※文中の図表は筆者作成

都築 準子(つづき じゅんこ)

愛知県公立中学校勤務


仲間とかかわり合いながら主体的・協同的に学ぶ児童の育成を研究・実践しています。18年にわたる小学校勤務において,協同学習を取り入れた,全員が参加する授業作りを行ってきました。まずは,読んでくださる方に寄り添い,思いを共有していただけるよう心がけます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop