2021.06.04
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子どもを動かす魔法の言葉(その6)

おかげさまで拙著「低学年担任のためのマジックフレーズ」が重版しました。そこで今回は、その元となった、連載「子どもを動かす魔法の言葉」第6弾をお届けします。本には載っていない、新しい魔法の言葉です。

東京都内公立学校教諭  カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)  特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事 林 真未

力は、善いことに使いなさい

自分の思いを通すために、他の子を抑えつけてしまったり、つい腹を立てて、乱暴してしまったり、あるいは、悪い気持ちに負けて、意地悪なことをしてしまったり。
とにかく、眉をひそめられるような行動をしてしまった子に、私はよくこう言います。
「あなたは、なんのために生まれてきたの? 人をイヤな気持ちにするために生まれてきたわけじゃないでしょう? 誰かをイヤな気持ちにさせるより、イイ気持ちにさせるほうが、ずっと素敵でしょう? せっかく持って生まれた力は、善いことに使いなさい」

実はこれ、柔道家なら誰でも知っている、講道館の始祖・嘉納治五郎が唱えた「精力善用」という言葉を噛み砕いて表現したもの。
私の長男は長く柔道をやっていたので、この言葉は、私にとってとても馴染み深い言葉なのです。
初めて聞いたときからとてもいい言葉だなあと思って、たびたびクラスで紹介しています(ちなみに、この「精力善用」は、「自他共栄」とセットで「精力善用自他共栄」という言葉として使われるのが常です)。

〇〇できる人だけ、どうぞ

全員が何かものを取りに来るときとか、しまってあるものを取り出すときとか、子どもたちが一斉に動くときがありますよね。
そういうとき、列順や名前順で順番に並ばせるとか、班ごとに少人数を呼ぶとかするのが、定番の指導だと思います。
けれどそればかりでは、子どもが、いつでも指示待ちの人になってしまいそうで、私は違う方法を使っています。

たとえば、図工で一斉に粘土を取りに行くとき、まず、みんなに問いかけます。
「粘土を取りに行ってもらおうと思うんだけど、みんなでいっぺんに行ったら押し合いになっちゃうよね? どうしようか」
すると、気の利いた子が必ず、
「いっぺんに行っても、取っている人が終わるまで、後ろで待っててあげればいいと思います」
などと発表してくれて、他の子も、ぶんぶんと勢い良く首を縦に振るので、
「そうだよね。では、そのようにして取りに行きましょう」
と言います。
でも、これで安心してたら、さあタイヘン!
実際に取りに行くと、結局、押し合いへし合いになってしまうのが子どものサガなんですよね……。


そこで、GOサインを出す前に、
「では、自分が先に取りたいからと人を押しのけていくんじゃなくて、前の人が、取り出すのをゆっくり待ってあげられるんだよね?」
と再度条件を確認して、
「では、そうできる人だけどうぞ」
と条件付きでスタートします。

こうすれば、子どもたちが一斉に取りに行っても事故が起きることはありません。
「そうできる人だけどうぞ」
と言われ、自分はできる、と判断して来ているわけですから、押し合いへし合いするわけにはいかないのです。子どもたちは必ず前の人が取り終わるまで、後方でゆっくり待ちます。
このやり方を繰り返して、最終的には、こちらが何も言わなくても、自分のアタマで考えて、一斉にものを取りに行くときでも、自然と譲り合って行動できるようになればいいなあ……と思っていたのですが。

なんと、ある年の子どもたちの賢さは、私の想像を超えていました。

実際に図画工作の時間に、色画用紙を、前に取りに来させるときのこと。
全員に来てもらいたい場面だったので、恒例のやり方をするチャンス。
私は、皆に、
「どうすればいい?」
と聞いてみました。

すると、子どもたちの間から、
「給食の時と同じように、一方通行で順番に並んで取りに行けばいいじゃん」
と、私が想定しているより、ずっと賢い答えが返ってきたのです。

その子たちは1年生ですから、給食の配膳の方法は覚えたて。
その、覚えたばかりの方法を思い出し、それを応用して、色画用紙を取りに行く方法にも採用するという工夫。

しかも、その提案を受けて、他の子どもたちも、
「そうだね、そうしよう」
と、自分たちで行動し、さっさと整然と並んでスムーズに取りに来たのには、さらに驚かされました。

子どもって、こちらが想定するよりずっと力を持っているんだなあと、毎度感心させられます。その力があれば、魔法の言葉なんか、いらないこともあるのですね。

林 真未(はやし まみ)

東京都内公立学校教諭
カナダライアソン大学認定ファミリーライフエデュケーター(家族支援職)
特定非営利活動法人手をつなご(子育て支援NPO)理事


家族(子育て)支援者と小学校教員をしています。両方の世界を知る身として、家族は学校を、学校は家族を、もっと理解しあえたらいい、と日々痛感しています。
著書『困ったらここへおいでよ。日常生活支援サポートハウスの奇跡』(東京シューレ出版)
『子どものやる気をどんどん引き出す!低学年担任のためのマジックフレーズ』(明治図書出版)
ブログ「家族支援と子育て支援」:https://flejapan.com/

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