2021.04.27
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算数科 つまずきを乗り越える授業づくり〜同じ見方・考え方を働かせていることの自覚〜(5)

前回までの記事で、抽象化という思考によって学びを言葉でまとめることで、「一を聞いて十を知る」学びとなると書きました。言い換えれば、知識や技能が汎用性の高い、使える知識・技能を身に付けさせるための手だてを紹介してきました。
さらに、子どもたちに同じ見方・考え方を働かせていることの自覚を促すことにより、さらに知識・技能の汎化が進むと考えています。

名古屋市立御器所小学校 教諭 松田 翔伍

1 見方・考え方も反復練習が必要

反復練習と聞くと、漢字や計算などの学習方法をイメージする方が多いのではないでしょうか。人間の脳は、繰り返し接する情報を重要度の高いものと認識し、覚えるものです。見方・考え方も同様で、繰り返し働かせることで身に付いてきます。
「〜のいくつ分とみる」という数学的な見方を例に説明します。「整数と小数」の学習では、「42.195は、0.001の42195分」や「42.195は10を4こ、1を2こ、0.1を1こ、0.01を9こ、0.001を5こ」という見方を学習します。
続く「体積」の学習では、「1㎤の100個分は100㎤」というように同じ見方をしています。しばらくすると「分数」の学習でも同様の見方が出てきます。
多くの場合、複数の単元をまたいで、同じ見方・考え方を働かせていることは、無意識のうちに行われています。見方・考え方は子どもたち自身が自在に働かせるようにする必要があります。そのために、必要なキーワードが「自覚」です。

2 ネーミングして短冊に

見方・考え方を短冊に

同じ見方・考え方を働かせていることを自覚させるためには、振り返り活動の充実が欠かせません。
聖心女子学院初等科・森勇介先生の実践では、「解決した過程で、どんな『見方・考え方』を働かせていたかを振り返ることで、繰り返し働かせていることに気づいていくと考えている」(子どもとつくる深イイ学び、「新しい算数研究」、2019 No.587 12月号)とし、「見方・考え方」に子どもたちとネーミングして短冊にし、自覚を促しています。
森実践を参考に、私も実践を行ってきました。私は、「レベル」と称して使った回数をカウントすることにしました。カウントすることで、その見方・考え方を「使いたい」という思いをもたせることもできました。写真は、4月末時点で使った見方・考え方とレベルです。

3 やったあ!レベルアップ!

「体積」の導入の板書の一部

「体積」の学習で、ふたのない箱の容積を比べるという導入を行いました。比べる活動ですので、考察対象が2つありました。
1つ目の容積で、単位立方体のいくつ分を計算で効率良く求める方法を共有した後のことです。「先生、今、『たとえば』がありました」とある子どもが言いました。「本当?よく聞いていたね。みんなもそう思う?」と全体に広げます。「あった、あった!」と子どもたち。「『たとえば』を使うとどんないいことがあるの?」と投げ掛けると、「説明が分かりやすくなる」と言います。「やったあ!レベルアップだ!」。

このように、子どもたちが自ら振り返るきっかけにもなります。

4 使った見方・考え方の良さを実感すること

今回は、同じ見方・考え方を働かせていることを自覚させるための手だてを紹介しました。見方・考え方は本来、子どもたちの心の中にすでに芽があり、授業で私たちが場を用意することで、子どもたち自ら働かせるものです。自在に使える道具になるためには、繰り返していることの「自覚」が大切です。そして、もう一つ、「良さの実感」がキーワードになります。
次回は、このことについて書いていきたいと思います。

松田 翔伍(まつだ しょうご)

名古屋市立御器所小学校 教諭
すべての子が考える楽しさを味わえる算数学習を目指し、面白い問題の開発や指導法、子どもとの関わり方について毎日考えています。「できる」「分かる」だけではない、「楽しい」算数授業について私と一緒に考えてみませんか?未来を生きる子どもたちの笑顔のために。

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