2021.02.19
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「Lifelong Learner」を育てるー自己評価カードの工夫ー(No.7)

前回は、「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」(令和2年3月 文部科学省 国立教育政策研究所)をもとに、「主体的に学習に取り組む態度」を評価する際、①「知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとしている側面」②「①の粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面」ーーの2つの側面に着目する必要があることを確認しました。今回は、これらの側面を評価するために私が取り組んでみた自己評価カードについてご紹介します。

小平市立小平第五中学校 主幹教諭 熊井 直子

振り返りの聞き方を工夫する。

まず、「主体的に学習に取り組む態度」を評価するためには、授業中の観察だけでなく、客観的な根拠となる評価材料が必要であると考えました。特に評価基準を統一するためにも、生徒自身に学習にどのように取り組んだかを記述させる必要があります。そこで、授業の振り返りを行う自己評価カードを工夫することにしました。

これまでも私は、授業で使用しているプリントの最後に「〇〇を理解することができた」「〇〇を活用して文章を書くことができた」など、その授業の目標に即した自己評価項目と、「授業を通して考えたこと」という感想を書く欄を設けていました。この自己評価の目的は、「関心・意欲・態度」の評価材料に使用することではなく、生徒の理解度や困り感を捉えることにありました。この欄に書かれた数字や感想をもとに、次の時間に個別にフォローをしたり全体での確認事項を決めたりしていました。

しかし、今回「粘り強い取組を行おうとしている側面」と「自らの学習を調整しようとする側面」の評価をするためには、これまでの自己評価や感想コメントでは適切な評価材料とはならないと考えました。特に、感想コメントの聞き方を工夫しなければ、「粘り強さ」や「学習の調整」を見取ることができる記述が得られません。そこで、「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」(令和2年3月 文部科学省国立教育政策研究所)にあった振り返りの項目例を参考にして、まずはこれまでの「授業を通して考えたこと」から、「授業の課題を考える時に生かすことができたこと・次に頑張りたいこと」という文言に変えてみました。「課題を考える時に生かすことができたこと」という言葉にすると、例えば漢文の授業では、「前回学習した返り点のきまりを意識しながら本文を音読することができた」「レ点がある時と一・二点がある時の読み方を思い出して一点とレ点の組み合わせを理解することができた」等の記述が見られるようになります。このように、これまでに学習した知識や技能を具体的に記述することによって、生徒が自分の学習状況を把握することができるようになるのではないかと考えています。

生徒に自身の学習を把握させるためには…

自己評価カードの例

このように、「課題を考える時に生かすことができたこと」という文言を用いて生徒にこれまでに学習した知識や技能を振り返りとして具体的に記述させるためには、ひとつの単元の中でどのような順番でどのような内容を教えたり考えさせたりするのか、これまでの単元ではどのような力を生徒に身に付けさせてきたのかを教員自身が明確に把握している必要があると改めて感じました。教師が授業のねらいを明確にしないと、生徒が適切に自分の学習を振り返ることができているかどうかを評価することができないからです。

また、最終的に評価を決定する時に、これまでの生徒の記述をもとにしたいと考えると、毎時間の授業プリントを見返すよりも「自己評価カード」として1枚にまとまっていた方が評価しやすいと考えました。そこで、右のような1枚のプリントにまとめたものを作成しました。このように1枚にまとめることで、生徒自身も授業の流れを見通すことができるとともに、自分の学習を振り返ることができます。こうしたカードは特に実技教科でよく使われているのではないかと思いますが、実際に授業で使用してみると後から生徒の学習の過程が見え、評価しやすいことが分かりました。

しかし、このカードを作成するためには単元の始めに各時間の目標を明確にしておく必要があります。その都度生徒に目標を書かせるという方法もありますが、学習の見通しをもたせることと授業時間を有効に活用することを考えると、事前に印刷されていた方が授業を進めやすいと考えています。この点についても、教師の意図的・計画的な授業づくりが必要であると言えるでしょう。

おわりに

今年度はこのように「振り返りカード」を工夫することによって、「主体的に学習に取り組む態度」を評価してみました。今までに2回使用してみて、このようなカードを用いて生徒の学習調整力を評価するためには、

①生徒がカードを記述する時間をきちんと確保すること

②教師の授業計画をより綿密にすること

の2点が大切であると感じました。これらをふまえ、これからも適切な評価を行うための工夫を考えていきたいと思います。


熊井 直子(くまい なおこ)

小平市立小平第五中学校 主幹教諭
英語もできる国語の先生を目指しています。2016年度に1年間フィンランドの高校で国語の授業を研究していました。英語教育に力の入る今だからこそ母国語教育のあり方を今一度よく考える必要があるのではないかと考えています。

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