「Lifelong Learner」を育てる―「主体的に学習に取り組む態度」の評価方法―(No.6)
中学校では、次年度から新学習指導要領の全面実施となります。今回の改訂の大きな変化のひとつに、評価の観点がこれまでの4観点(または5観点)から、3観点に変わるという点があります。前回は、その3観点の中でも「主体的に学習に取り組む態度」の評価方法について考えることは、生徒の「学習力」を育てるために重要なことであるというお話をしました。今回は、具体的にどのように評価していったらよいかという点について考えていきたいと思います。
小平市立小平第五中学校 主幹教諭 熊井 直子
「主体的に学習に取り組む態度」の評価について
まずもう一度、「主体的に学習に取り組む態度」の評価について確認したいと思います。前回も参照した「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」(令和2年3月 文部科学省 国立教育政策研究所)には次のように書かれています。
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答申において「学びに向かう力、人間性等」には、①「主体的に学習に取り組む態度」として観点別学習状況の評価を通じて見取ることができる部分と、②観点別学習状況の評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価を通じて見取る部分があることに留意する必要があるとされている。すなわち、②については観点別学習状況の評価の対象外とする必要がある。
「主体的に学習に取り組む態度」の評価に際しては、単に継続的な行動や積極的な発言を行うなど、性格や行動面の傾向を評価するということではなく、各教科等の「主体的に学習に取り組む態度」に係る観点の趣旨に照らして、知識及び技能を習得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりするために、自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら、学ぼうとしているかどうかという意思的な側面を評価することが重要である。
(中略)
本観点に基づく評価は、「主体的に学習に取り組む態度」に係る各教科等の評価の観点の趣旨に照らして、
① 知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとしている側面
② ①の粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面
という二つの側面を評価することが求められる。
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上記の二つの観点のうち、今後意識的に評価方法を考えていかなければならないのは、「② ①の粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面」だと考えています。粘り強い取組を行おうとしている側面は、授業中の観察やこれまでの「関心・意欲・態度」として評価してきた観点を通して見取ることができそうですが、「学習の調整」はこれまでとは違う新しい視点です。また、評価をするとなると客観的に判断するための評価材料の収集と評価基準の設定が必要となります。限られた時間の中で、「生徒が自らの学習を調整しようとする側面」をどのような方法で評価していったら良いのでしょうか。
単元の振り返りシートを工夫して活用してみる。
先程も引用した「『指導と評価の一体化』のための学習評価に関する参考資料」(令和2年3月 文部科学省 国立教育政策研究所)では、「主体的に学習に取り組む態度」の評価方法の1つとして、振り返りシートの活用が挙げられています。振り返りの項目例は以下の通りです。
ア 本時(や本単元)の学習で意識したこと。
イ 本時(や本単元)で身に付いた力やできるようになったこと。
ウ 本時(や本単元)で課題を解決するために試行錯誤したこと。
エ 前時までに学習したことで、本時の学習に役立ったこと。
オ 本時(や本単元)で工夫しようとしたが、十分ではなかったこと。
カ 本時(や本単元)で学習したことで、今後の学習や生活の中で生かせそうなこと。
私もこれまでの授業で本時の振り返りをプリントやノートに書かせていました。しかし、私がこれまで振り返りの際に使っていたのは、「本時の学習を通して分かったこと、考えたこと」という表現だったので、生徒が書いてくることも授業の感想に終始する内容が多く、生徒が単元を通して自分の学習を調整することができたかどうかを見取るには不十分でした。また、授業で使用したプリントの最後に「本時の振り返り」として書かせていたので、単元を通した生徒の変容を見取るためにはすべてのプリントを見返す必要があり、確認するにも管理するにも手間がかかります。
そこで最近では、振り返り用のプリントを1枚作成し、毎時間(または、まとまった時間ごとに)生徒に振り返りを記入させ、単元の終わりにまとめて確認して評価をするという手法を取り入れました。これは、体育や美術など実技教科の先生がよく行っている方法ではないかと思うのですが、私が担当している国語科ではこれまであまり行われてこなかったのではないかと思います。
年度の途中から実験的に始めた手法なので、今年度はまだ2回の単元でしかこの振り返りシートを使うことができていませんが、1枚にまとめることで、生徒の学習の流れを1回で確認することができる点が有効であると感じています。また、今後は生徒自身にも授業の振り返りの積み重ねを意識させることができたら、さらに「学習の調整」につながるのではないかとも考えています。しかしその一方、2回行ってみて見えてきた課題もあります。それについては次回の記事でご紹介できればと思います。
熊井 直子(くまい なおこ)
小平市立小平第五中学校 主幹教諭
英語もできる国語の先生を目指しています。2016年度に1年間フィンランドの高校で国語の授業を研究していました。英語教育に力の入る今だからこそ母国語教育のあり方を今一度よく考える必要があるのではないかと考えています。
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