深い学びに誘う流れとは......??(第3回)
中教審答申から「主体的・対話的で深い学び」というキーワードが示されてから早くも数年......。日々、「主体的・対話的で深い学び」を日々の授業で目指しています。なかなかうまくいくものではありませんね。特に「深い学び」......。今回は、子ども達を「深い学び」に誘う私なりの考えを公開させていただきます。
明石市立錦が丘小学校 教諭 川上 健治
まず、自分が授業をする上で、大切にしているのはもちろん、クラス全員の子どもが「主体的・対話的で深い学び」を実現することです。つまり、クラス全員の子どもが「やらされている感」を醸し出しながら学習するのではなく、主体的に学ぼうとしており、その中で、他者と協働して学んだり、時には合意形成を図ったりしながら深く学んでいる姿がみたいわけです。では、ここでいう「深い学び」とは何なのか。数年前にも誰もが感じた“あるある”の疑問だったように思います。
この疑問について昨年の第4回日本授業UD学会全国大会(2018年9月一般社団法人日本授業UD学会)の中で上智大学の奈須正裕先生は次のように説明されています。
- 浅い学び:個々バラバラの学び、自分と無関係な学び
- 深い学び:知識が相互に、また自分と意味的に関連づく学び
- 精緻化(elaboration):既有の知識と、新たに学ぶ知識が関連づくこと
- 深い学び=精緻化された知識を生み出す学び
つまり、表面的で一元的な知識が、新たに学ぶことでその知識が多元的になっていくというイメージを私は持ちました。そして、そのイメージの基、日々の授業に取り組んでいます。
その日々の授業の中身(ソフト面)を前回の流れを汲みながら詳しく紹介させていただきます。
まず、授業の始めは、前回の授業と繋がりあるものにするために「前回の授業の振り返り」をします。この振り返りは前回の授業での「まとめ」の部分を全員が自分の言葉で表現し、確認します。ここでやっと、全員が授業のスタートラインに立てます。次に、「めあて」の確認です。ここでは、単元最初の子ども達の読後感を基につくります。ここで、子ども達にとって魅力的な「めあて」でなければ「主体的」には当然なれませんし、自動的に「深い学び」にも繋がらないので、この「めあて」は慎重に選びます。
そして、「めあて」に対して、「一人学び」をしてからの「グループトーク」に移っていきます。グループトークにも台本を用意しています。その中で、「深い学び」を誘うために、必ず班の友だちの意見に対して「お尋ね」をすることを約束しています。というのも、小学生という発達段階で「深い学び」を実現するには、他者の存在が必要不可欠だと考えるからです。つまり、他者からの働きかけ(お尋ね)があって、初めて「深い学び」になっていくのです(もちろん、その深さの程度はどうなんだという問題もありますが……)。
校内の研究授業の事後研でも同じですよね。授業者に対して、「いや~子ども達とうまく空気をつくっていて良かったよ~」や「話し合いがあんまりできていなかったね」などの感想を伝えるだけでは、なんの発展性もなく、それこそ「浅い学び」で虚しく時間が過ぎ去っていきます。
それよりも、「~はどういう意図で仕組んだの?」「この場面ではこういう言葉の選択でもよかったのでは?」等々、大人バージョンの「お尋ね」をしていくことで授業者はもちろん、その一つの授業さえも奥行きのある深いものとなっていきます。従って、子どもたちなりの「お尋ね」を通して表面的で一元的であった考えに、深さをもたすことができると考えています。
そして、このグループトークが終われば、次は「全体交流」で更に学びを深いものにしていきます。この時こそ、教師のファシリテーション力が問われるところです。いかに、子ども達から出た意見を繋げたり、突っ込んだりしながら、「めあて」に対する子ども達の考えに深みをもたせていきます。
一連の子ども達とのやりとりが終わればできるだけ子ども達の言葉で「めあて」に対する「まとめ」を作っていきます。
最後に「振り返り」です。この「振り返り」は「○○さんのおかげで」という言葉を必ず書かせます。なぜ自分の考えが深まったのか。それは、友だちがいたからです。先にも書きましたが、自分一人ではたどり着けなかったけれど、友だちがいたからこそ、「深い学び」が実現するのです。そのことを子ども達にも常に意識をさせたいと考えているので書き出しの型を決めた振り返りを書かせます。
前回と今回で国語科の授業のハード面とソフト面を紹介させて頂いたので、次回は、実際の授業のやりとりなどを紹介させていただきます。
川上 健治(かわかみ けんじ)
明石市立錦が丘小学校 教諭
クラスの全員が楽しく学び合い「分かる・できる」ことを目指して日々授業を考えています。また、様々な土台となる学級経営も大切にしています。
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