2019.03.15
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「これならできる!」詩の創作指導(5)

第23期の連載では、『「荒れ」と向き合う詩の授業』というテーマで、私的な実践報告をさせていただきました。第24期の連載では、連載中に読者の皆様からいただいた「うちの教室でも実践できる方法はないか」とのお声に応え、より一般化した詩の指導の方策について、ご提案していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

なお、本文中で採り上げる児童の作品等につきましては、成年した元児童のものにつきましては基本的に本人に、未成年の元児童のものにつきましては本人および保護者の掲載許諾を事前に得ておりますこと、念のため申し添えます。

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長 杉尾 誠

詩のもつ力(Iくんの作品より)

これは、以前担任したIくんが書いた詩です。

 「詩」(すうっとする)

 すぎお先生のクラスになって、はじめて詩を書いた

 いっつも詩を書いた

 国語はきらいだったけど 詩があるからすきになった

 詩はおもしろい

 詩は楽しい

 だって 詩は何を書いてもいいから

 詩は心の中が書ける

 書けたら何だかすうっとする

 詩は友だちの心の中が読める

 読めたら何だかすっきりする

 詩は大切なぼくの友だちだ

学習全般に対し、決して前向きとは言えなかったIくんは、この作品の通り、詩のもつ力のよさに気づき、1年間で数十篇の詩を綴ってくれました。「ええのん(いい作品)できたから見て!」と朝早く私のところへ、まるで新聞の朝刊配達のように、届けてくれました。

このように、子どもたちの作品と初めて出逢った時、私が必ず、その作者に問い返すことがあります。

これならできる!その5「お気に入りのワンフレーズを」

「この作品の、特にどの部分が好き?」

数行から、長い作品では数十行にもなる詩。その中でも、特に作者が気持ちを込めたところ、思いをうまく表現できたところを探します。「全部!」とか「ない!」などと言う子もいますが、一緒にじっくりと作品に向き合いながら、その子の心の奥底にせまる箇所を見つめます。

詩や作文、あるいは学術論文などでもそうですが、伝えたい思いや考え、その中心となる核は、実はたった一つであることが多いです。肉付けされ装飾されたものを丁寧に読み解き、作者(子ども)が一番大切にしたいものを見つけ出し、読者(教師)と共有します。

そして、そのワンフレーズのよさを、徹底的に評価します。使う褒め言葉は、その詩の内容や子どもの発達段階などにもよりますが、必ずその部分を復唱しながら具体的に、一読者としての高評を伝えます。その子の伝えたいことを教師が的確に理解し、感動を分かち合うことで、子どもが自分の心情を改めてメタ認知し、次の作品創作への意欲をつなげる効果もあります。

ちなみに、上掲の詩で、Iくんは「詩は心の中が書ける 書けたら何だかすうっとする」の部分が好きだそうです。私が「そうやなぁ、跳び箱が跳べたり、テストで100点が取れたりするのと同じくらい、思いがちゃんと書けたら、気持ちいいよな!」と言うと、Iくんはニコッと笑い、駆け足で運動場へと遊びに行きました。

一方、自分で書いた詩の題名を、なかなか決められない子もいます。また、出来事(例:運動会)などをそのまま単純に題名にする子も多いです。その場合も、このワンフレーズを一緒に見つけ出すことで、それを題名に活かすことができます。題がよりよいものになれば、その詩自体も、いっそう輝きを増すことでしょう。

先述のⅠくんは、「詩」という題名でしたが、お気に入りのワンフレーズのよさを伝えると、あとで(すうっとする)を、自ら題名に加えました。これで、読者がよりⅠくんの心情をヴィビッドに感じることができるようになったのではないでしょうか。

第24期最終稿にあたり

第23期の連載では、『「荒れ」と向き合う詩の授業』というテーマで、第24期の連載では、より一般化した詩の指導の方策について、ご提案を続けてまいりました。全国のたくさんの先生方からの反響を頂戴し、身の引き締まる思いで毎回書かせていただきました。ご愛読いただき、ありがとうございました。

続く第25期でも、連載を担当させていただくことになりました。次期では少しテーマを変え、読者の方々によりいっそう「やってみたい!」と思えるような実践をお届けしたいと考えております。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

最後に、私たちのこれまでの取り組みの一部は、ありがたいことに、いくつかのメディアで採り上げていただいております。そのうち、読売新聞に掲載された記事の転載許可を、同社知的財産担当部署より頂戴しましたので、下掲させていただきます。一部、個人情報にあたる部分は伏字にさせていただいておりますが、おおよその内容はお読みいただけるかと存じます。私の拙い記事内容を補完するために、よろしければご高覧ください。

読売新聞 朝刊(平成25年11月21日付)『おもしろ学校参観日』より転載

杉尾 誠(すぎお まこと)

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
子どもたちの「自尊感情」を高めるため、「綴方」・「詩」・「短歌」・「俳句」などの創作活動を軸に、教室で切磋琢磨の日々です。その魅力が、少しでも読者の皆様に伝われば幸いです。

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