2018.12.26
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「これならできる!」詩の創作指導(3)

第23期の連載では、『「荒れ」と向き合う詩の授業』というテーマで、私的な実践報告をさせていただきました。今回からの第24期の連載では、連載中に読者の皆様からいただいた「うちの教室でも実践できる方法はないか」とのお声に応え、より一般化した詩の指導の方策について、ご提案していきたいと考えております。引き続き、よろしくお願いいたします。

なお、今後本文中で採り上げる児童の作品等につきましては、成年した元児童のものにつきましては基本的に本人に、未成年の元児童のものにつきましては本人および保護者の掲載許諾を事前に得ておりますこと、念のため申し添えます。

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長 杉尾 誠

子どもたちに人気の遊びは…

休み時間、教室の窓から運動場にふと目をやると、子どもたちが元気に遊んでいる様子が窺えます。一番人気は、不動の「ドッジボール」です。その近くでは、「鉄棒」をしたり、「なわとび」をしたり、「鬼ごっこ」をしたり…と、限られた時間の中で、それぞれ思い思いに過ごしているようです。

そして、子どもたちの間で意外と人気を博しているのが「リレー」です。参加している子どもたちだけでなく、運動場のトラック周りにいる子どもたちの応援にも、熱が入っています。運動会でリレーは、各クラスの代表選手による花形競技なので、年に一度のあの興奮のシーンをみんなで再現し、楽しんでいるかのようです。

学習にも「遊び」の要素を

教員たるもの、子どもたちの遊びには、何より敏感になるべきです。例えば生徒指導の観点からは、いい意味でも悪い意味でも、学習中の教室では見られない、様々な子どもの姿が見られるからです。私も一緒に遊ぶことで、子どもたちとの心の距離を縮めたり、人間関係のつまずきなどを遊びの場面から見つけ出し、指導を入れることもしばしばです。

そして学習指導の観点からは、子どもたちのホットな関心事を知り、それを学習場面にうまく取り入れていくことで、いっそう学習への意欲を高めることもできるでしょう。今回は、そんな取り組みを一つご紹介します。

これならできる!その3「みんなで詩のリレーを」

まず素材として使うのは、谷川俊太郎さんの詩『生きる』です。高学年の国語の教科書にはよく採用されていますが、その学習を待たなくても、少し難しいと思われる表現について解説を加えれば、どの学年で採り上げても構わないでしょう。

読み聞かせをすると、「それはミニスカート」のあたりで笑いが起き、「それはヨハン・シュトラウス」のあたりで首を傾げだす光景を、何度となく見てきました。しかし、全文を通しておおむね分かりやすい表現が多く、谷川さんの伝えたい思いが、子どもたちにもよく理解できるようです。

そこで、「このクラスのみんなの『生きる』を、リレー形式で創ってみよう!」と呼びかけます。一人一行、それぞれこれをしているときが、これを見ているときが、これを考えているときが「あぁ、充実しているなぁ」などと、子どもたちなりに「自分は今、生きている」ということを感じるものを挙げさせていきます。

本来、それが他の子どもと重なっても全く問題ないのですが、ここはリレー形式ですから、バトンがつながるように、一人に複数、できるだけ多く考えさせます。また、子どもたちが意見を表明しやすいように、画用紙などで作った短冊を用意しておくとよいでしょう。

そして、ブレーンストーミング方式で、どんどん発表していきます。出てきた意見は、『生きる』の各連の出だしにある

生きているということ
いま生きているということ
それは…

の後に順次はめ込んでいきます。同じ意見のものも、短冊を重ねるように黒板に貼っていくと、せっかく子どもが考えた大切な意見ですから、決してそれを無駄にはしないという、教員の姿勢を示すことができます。

子どもたちは、意見がつながる喜びを、リレーの様子を彷彿とさせながら、楽しんで活動してくれるでしょう。

子どもたちの『生きる』

そして一時間後、できた作品がこちらです。

『生きる』六年二組オールスターズ

生きているということ
いま生きているということ
それはあいさつをするということ
忘れ物をするということ
今日の給食が気になるということ
ドッジボールで当てること
友だちとハイタッチをすること

生きているということ
いま生きているということ
それはソフトボール
それはプレイステーションヴィータ
それはYoutube
それはだんじり
それはボーカロイド
すべての楽しいものに出会うということ

そして
多すぎる宿題は絶対にこばむこと

生きているということ
いま生きているということ
おならをするということ
ヒマすぎてだらだらするということ
夜ご飯のリクエストを聞いてもらえるということ
早く遊びに行きたいということ

生きているということ
いま友だちといてうれしいということ
いま先生といてうれしいということ
いま学校で勉強しているということ
いまわからないことがわかったということ
いまどこかですきな車が走っているということ
いま両親がぼくのために働いているいうこと
いま毎日がゆっくりすぎてゆくこと

生きているということ
いま生きてるということ
ダンスをがんばるということ
リフティング記録を伸ばすということ
しょう来のゆめをもつということ
すきな人をすきになるということ

あなたの手のぬくみ
いのちということ

できた作品は、みんなの「宝物」に

こうしてできあがったクラスみんなの『生きる』の詩。画用紙の短冊を模造紙に貼り付けたことで、そのまま掲示物として活用できます。教室の中に、みんなの思いが込められた作品が飾ってあるって、素敵なことだと思いませんか。

私はいつも、学級開きの際に必ずこの実践をし、作品は年間掲示にしています。参観にいらっしゃった保護者にも、毎年ご好評を頂戴します。この記事をご覧の先生方にも、クラスの「宝物」探しのための『生きる』の詩作、ぜひおすすめします。

杉尾 誠(すぎお まこと)

大阪府公立小学校 主幹教諭・大阪府小学校国語科教育研究会 研究部長
子どもたちの「自尊感情」を高めるため、「綴方」・「詩」・「短歌」・「俳句」などの創作活動を軸に、教室で切磋琢磨の日々です。その魅力が、少しでも読者の皆様に伝われば幸いです。

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