2019.01.07
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定時制という選択肢(2)

前回、定時制高校の紹介ということで、設置の目的や就労の状況、給食などについて、全国的な状況と勤務校での状況を交えて記事を書きました。
今回は、学校行事や授業、部活など、学校生活により関わるような内容について紹介したいと思います。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

授業は?

定時制の授業はどんな内容でしょう?課程が違うだけなので、教科・科目については全日制と同じ授業が開設されています。教科書や副読本も、定時制用のものがあるわけではないので、全日制の高校と同じものを使うことになります。

ただ、前回の記事で引用した中教審の配付資料によると、文科省や全国定時制通信制教育振興会の調査結果から、定時制の生徒は勤労青年の数が減少する一方で、以下のような生徒が増えているとされています。

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 ・全日制課程からの進路変更等に伴う転編入者(中途退学経験者)※1
 ・中学校までの不登校経験者など自立に困難を抱える者
 ・過去に高等学校教育を受ける機会がなかった者

(平成25年5月23日高等学校教育部会(第19回) 配付資料『定時制・通信制課程について』より)
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※1:高校を中途退学した場合、再入学や編入先の9割は定時制・通信制となっています。


こうした現状を踏まえ、

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通信制の課程は、従来からの勤労青年のための教育機関としての役割だけでなく、多様な学びのニーズへの受け皿としての役割を増している。とりわけ、自分のペースで学べる定時制・通信制の教育は、不登校・中途退学経験者等への学び直しの機会の提供など、困難を抱える生徒の自立支援等の面でも大きく期待されるようになっている。

(平成25年5月23日高等学校教育部会(第19回) 配付資料『定時制・通信制課程について』より)
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との記載があります。

したがって、教科・科目の名称や教科書に違いはないものの、実際の現場では一人ひとりの理解度やペースなどの個々の事情に配慮しながら授業が進められています。何がなんだか分からないままどんどん進んでしまい、置いてけぼりに…といったことはほとんどなく、分かるまで丁寧にサポートしてもらえる学校が大部分だと思います。

また、1日の授業時間が短いので、それ以外の時間に質問したり、個別指導の時間も確保しやすいです。勤務校では17時から授業がありますが、定期試験前になると昼くらいから登校して自学したり、個別に指導を受けたりしている生徒もいます。

部活は?

小規模な学校が多いこともあって数は少ないですが、定時制にも部活はあります。全員加入制をとっている学校もあれば、希望者のみというところもあります。

全日制高校との違いというと、活動時間が限定されるというところでしょうか。例えば夜間定時制の場合は授業終了が21時前後になり、その後に長時間の活動は難しいです。また、全日制と併置されている場合は体育館やグランドが共用となり、使用できない時間帯も出てきます。さらに、就労している人が多い学校の場合は、翌日の勤務に備えなければいけませんし、土日は学校が休みでも就労で多忙を極め部活に参加できないということになります。こうした事情から、時間的な制約は大きくなります。

ただ、だからといって部活が活発でないかというと、そうとは言い切れないところがあります。短時間の活動だからこそ、慌ただしい学校生活の息抜きの場として、部活を楽しみに登校してくれる生徒も多いです。顧問からの強制でなく、生徒が自分の体調や学習、就労などへの影響をしっかり予測して、自発的に行っているという点で、本来の部活のあるべき姿に近いような気がします。

ちなみに大会に関しては、定時制・通信制だけの大会があります。毎年6月に都道府県予選が行われ、上位に入ると夏に行われる全国大会へ出場することができます。これについては以前いくつか記事を書いているので、そちらを参照してください。

「もうひとつのインターハイ」
https://www.manabinoba.com/tsurezure/016105.html

「もうひとつのインターハイ2」
https://www.manabinoba.com/tsurezure/017682.html

この記事にもあるとおり、全国大会もピリピリしたような雰囲気ではなく、選手や監督はもちろん、審判やスタッフの方も含め、会場全体が温かでなごやかな雰囲気に包まれています。

学校行事は?

学校行事については、全日制高校とほとんど変わらないと思います。変わるとすれば、定時制だからというより、少人数ということで雰囲気が違っているというところでしょうか。

例えば修学旅行については人数が少ないと1つの年次だけで実施することが困難なので、2つの年次が合同で隔年で実施という学校もあります。それでも少人数なので、アットホームな家族旅行という感じで、居心地は良く楽しめると思います。ただ、貸切バスのように人数で頭割りするような経費は高くついてしまうので、現地で公共交通機関で移動したり、食事を貸し切りでない会場でとったりといったことが出てくる場合もあります。

定時制ならではの行事として、生活体験発表会というものがあります。これについても以前記事を書いているので、そちらを参照してください。
「話す≠伝える」
https://www.manabinoba.com/tsurezure/016169.html
この発表会も、校内での審査の後、都道府県の発表会を経て、全国での発表会へと繋がっています。

どの学校でも交通安全講話とか交通安全講習といった行事はあると思います。定時制には様々な年齢層の生徒がおり、就労を続ける上での必要性からバイクや自動車での通学を認めている学校もあります。そんな事情から、講話の内容に運転者側の立場での話が入ったり、交通安全実技講習会として自動車学校に出向き自転車や自動車を運転する行事を行っている学校もあります。

避難訓練もどこでもやっているわけですが、夜間定時制となると、地震による停電などで真っ暗な状況も想定されます。そこで、電気がつかない状況で教室にある懐中電灯を使用しての訓練を行う学校もあります。

儀式については入学式や卒業式、始業式、終業式などがあります。普段は制服を定めていない学校が多く、私服での登校になりますが、こうした場面では正装となります。ただ、制服はないわけなので、入学後すぐは中学校の制服を着ている(高校によって不可の場合があるかもしれません)場合も多く、その後、年次が上がるにつれスーツを購入する生徒が増えます。普段の私服とは対照的に、スーツを着用すると、一気に大人びた表情になるのが印象的です。

文化祭については学校によって様々です。勤務校は全日制と併置されているため、日程(2日間)は同じになっています。1日目は夜間に定時制だけの文化祭ということで、年次ごとの出し物や制作の発表、レクレーションなどを楽しみます。2日目は昼の時間帯に行い、全日制の文化祭の中に模擬店を出したり、制作物の展示を行ったりします。ただ、あくまで別の課程なので、2日目の集合時刻や閉祭式などは別々になります。

この他、体育祭や企業見学会、スキー授業、生徒総会など、学校によっていろんな行事が企画されます。

ということで、今回は定時制高校の授業や部活、学校行事について紹介しました。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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