SDGsについての実践教育〜参加型学習を通じた国際貢献活動
こんにちは。
今回は、SDGsの学習を通じてグローバルな課題を自分ごととして考え、協働して国際貢献活動に取り組んだ教育活動についてお伝えします。
札幌市立高等学校 教諭 齋藤 菜奈子
企業がリードする参加型教育プロジェクト、“届けよう!服のチカラ”
コロナ禍で教育活動が大きく制限されていた時期、生徒が協働しながら主体的に学び、社会貢献できる活動はないかと考えていたところ、以前参加したGlobal Citizens Initiative(GCI)の教員研修で知った、“届けよう!服のチカラ”プロジェクトを思い出しました。
“届けよう!服のチカラ”プロジェクトは、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と株式会社ファーストリテイリングが取り組むプログラムです。このプログラムでは、ファーストリテイリングの社員の方からSDGsやプロジェクトについて講演していただけることや、勤務校の一年生が「総合的な学習(探究)の時間」にSDGsおよび企業のSDGsへの取り組みについてすでに学習していたことから、参加する意義を大いに感じました。そこで、早速実施の枠組みについて考え始めました。校内での相談や調整を終えて応募し、二学年で週に一時間確保されていた「総合的な学習(探究)の時間」で実践することになりました。実践にあたり、生徒がこのプログラムの目的や活動内容を学ぶこと、海外の難民キャンプへ送る子ども服の古着回収を通じて仲間と協働しながらSDGsについて深く学ぶこと、国際貢献する経験を積むことを目指しました。
オンライン講演会
ファーストリテイリングが取り組むSDGsと、このプログラムの概要や意義について、株式会社ユニクロの関匡史氏に講演していただくことになりました。事前に何度もミーティングを重ね、オンラインでも生徒が積極的に参加できるよう、講演者の質問内容や質問のタイミング、生徒同士で話し合う時間、質疑応答の時間も確保しました。
当日は、東京のユニクロ本部と勤務校をつなぎ、ビデオ会議形式で講演会を実施しました。まず、関氏の自己紹介やSDGsの概要説明で会を始めました。オフィスの紹介、そして東京を拠点に海外スタッフのマネージメントをされているお話は、普段ユニクロの店舗では見えない職業を知る機会となり、生徒は大変興味を示していました。
続いて、「服のもつチカラとは?」「難民とは?」「活動について」というトピックについて、スライドや動画を用いてお話いただきました。「SDGsについて知っていますか?」「使わない服はどうしていますか?」といった質問に、皆がそれぞれ考え、挙手をする場面が設けられました。参加型形式の講義に、生徒たちはみな熱心に耳を傾け、メモを取っていました。難民など服を必要とする方々へ送る古着の回収についての知識を深めることができました。
共通の目標に向けて協働 ポスター作成
後日、ユニクロが作成した短編映画『服の旅先』を教室で視聴し、4〜5人のグループごとに古着回収を呼びかけるポスターの下書きを開始しました。動画を視聴し、実際に自分たちの服がどのように難民キャンプへ届き、活用されるのかというイメージが湧いたようでした。次回の活動日に、各クラス8枚のポスターを完成させ、校内に掲示しました。また、ポスター掲示のタイミングで、全学年の保護者に、古着回収依頼のレターを配布し、古着回収ボックスを設置しました。
集まった古着の整理と梱包
最終的に、特大サイズ段ボール10箱分の子ども服を寄付していただきました。体育館にて、二学年全員で一枚一枚確認し、たたみ、“届けよう!服のチカラ”プロジェクト事務局経由で海外の難民キャンプへ送るため、箱詰めする作業に取り組みました。たくさんの可愛らしい子ども服を手に取り、喜ぶ姿を見ると、ご協力いただいた方々の温かい気持ちが伝わってきたのだと感じました。
活動を終えて
グローバルな問題について学び、実際に自分たちの生活と関連づけて考える機会になったこと、皆の力を合わせれば大きな目標を達成し国際貢献できると生徒が実感できたことは大きな収穫になりました。このような知識や経験が、学習にも活きてくると感じています。社会的な事柄への興味・関心の高まり、主体性や協働は、まさに自分の担当する英語教育で、自分が一番大切にしていることです。
本来であれば近隣の小中学校や地域にも古着の呼びかけを行いたかったのですが、コロナ禍を考慮して、今回は校内のみで実施しました。その時々で、柔軟に対応することや、できることを最大限にするということが大切だと、自分自身も実感しました。
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齋藤 菜奈子(さいとう ななこ)
札幌市立高等学校 教諭
アフリカやアジアで、教育担当官として児童や教員の支援に携わった後、十数年前に公立高校の英語教諭に転職。勤務校では、海外の高校との交流、フェアトレードやSDGsをはじめとする実践を通じ、英語を使いながら学び、多様な文化への興味関心を高め、地域社会や海外に貢献する教育活動を取り入れている。
社会活動では、米日カウンシル が主催するTOMODACHIイニシアチブで、大学生のメンターとして四年間活動し、女性・若者のリーダーシップ能力育成に努めてきた。
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