国際理解教育〜海外との言語文化交流〜(4)
こんにちは。
今回も、海外の人々との交流を通じた国際理解教育活動と、活動を通して学ぶ英語についてお伝えします。
札幌市立高等学校 教諭 齋藤 菜奈子
ジンバブエから、伝統楽器ムビラの講和
札幌市研究開発事業(国際理解教育研究指定校)の活動の一環として、異なる文化への理解を深め、英語を使って交流する活動として、海外からのゲストを招くことを計画しました。
以前、アフリカのマラウィ共和国で勤めていた際、ムビラというオルゴールの原型とも言われる楽器の演奏を聴く機会を得ました。ムビラは、マラウィ共和国の隣国ジンバブエに住むショナ族の伝統楽器であり、美しくかつパワフルな音色が印象的です。ちょうど、ムビラ演奏家のガリカイ・ティリコティ氏(ジンバブエ)とスミ・マズィタデグル氏(日本)が来札されると聞きムビラについての講話を依頼したところ、「日本の若者に、アフリカ文化やムビラを是非知ってもらいたい」と快諾してくださいました。
当日は、英語の授業の中で、グループごとに、ゲストのお二人に英語で質問して交流し、ジンバブエの文化について理解を深めました。質疑応答の中で、お二人が国内外のイベントやメディアでムビラの演奏活動をされていること、ジンバブエでは祭りで楽器を演奏する習慣があること、ガリカイ氏は村のムビラの工房で若者の雇用促進に取り組んでいると教えてくださいました。生徒たちは、ムビラの演奏を聴き、実際に楽器に触れる機会に加えて、伝統を守り、伝え、そして社会に貢献することを生きがいとしているお二人の職業観も知ることができました。
エチオピアのコーヒー・セレモニー
アフリカの中でも、国や地域、民族によってそれぞれ特色があります。上記のワークショップを実施した翌年、エチオピアから北海道大学大学院に留学しているケテマさんを招き、エチオピアの社会や文化に関する講演とコーヒー・セレモニーのデモンストレーションをしていただきました。コーヒー・セレモニーとは、主に女性が、コミュニケーションを取りながらお客さまにコーヒーを淹れるエチオピアの儀式です。事前学習として、学校祭におけるフェアトレードのコーヒー販売や、海外のコーヒー産業についてのビデオ鑑賞を行いました。当日は、豆を煎る作業から始まり、生徒とコミュニケーションを取りながらコーヒーを淹れるプロセスに生徒も興味津々でした。豊かな香りに満ちた調理室で、エチオピアでこのセレモニーが大切に受け継がれていること、そしてケテマさんの学生生活や研究についても教えていただきました。
交流の中で学ぶ英語
上記の活動の際、生徒用にメモや感想を記入するプリントを用意し、自分がメモした内容をもとに、後日ゲストに英語で感想とお礼のメッセージを書くこと、またこれらの活動の学びを英作文し、英語でプレゼンテーションする(評価に入る)ための参考にすると伝えていました。そのため、英語を聴き、話し(やりとりとプレゼンテーション)、書くことにさらに熱心に取り組んだのではないかと感じました。
また、三年生の教科書には世界の楽器についての章があったため、ムビラのワークショップの前にこの章の学習に取り組み、さまざまな楽器や音楽についてブレインストーミングし、ディスカッションする時間を取りました。
アフリカに関しては、戦争、飢餓、貧困などのニュースが報道されることが多いのですが、大自然や美しい芸術、素晴らしい伝統文化といった多様な面を学ぶことは意義深いと感じています。このような活動を通して、生徒の主体性や興味・関心を育むことを大切にしたいと思います。
齋藤 菜奈子(さいとう ななこ)
札幌市立高等学校 教諭
アフリカやアジアで、教育担当官として児童や教員の支援に携わった後、十数年前に公立高校の英語教諭に転職。勤務校では、海外の高校との交流、フェアトレードやSDGsをはじめとする実践を通じ、英語を使いながら学び、多様な文化への興味関心を高め、地域社会や海外に貢献する教育活動を取り入れている。
社会活動では、米日カウンシル が主催するTOMODACHIイニシアチブで、大学生のメンターとして四年間活動し、女性・若者のリーダーシップ能力育成に努めてきた。
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