2024.05.31
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国際理解教育〜フェアトレード・インターンシップ〜(1)

こんにちは。
今回から、学校と企業や地域社会が連携した実践活動の例として、フェアトレードを取り入れた活動をご紹介します。

札幌市立高等学校 教諭 齋藤 菜奈子

フェアトレードを教育に

前任校勤務中の平成30年度〜令和元年度、札幌市研究開発事業である国際理解教育研究指定校の担当者となりました。
異文化理解と地域・国際貢献をテーマに定め、具体的な活動の柱を何にするか思案していたところ、北星学園大学教授・フェアトレード北海道代表の萱野智篤先生からフェアトレードの活動について教えていただきました。
以前、萱野先生と学生さんたちが催したフェアトレード商品の展示販売会で、バングラデシュの女性たちが手作りした奇跡の刺繍と呼ばれるノクシカタを見て魅了されたこと、学生さんたちの取り組みに感心したことを思い出しました。
早速、市内にあるフェアトレードショップのお力もお借りして、フェアトレードを国際理解教育研究指定校の活動として取り入れることにしました。

学校祭や、インターンシップにフェアトレードを取り入れよう

3学年の自分の担任クラスの生徒、および、国際コース所属2〜3学年が履修していた学校設定科目(「異文化理解」など)の生徒を対象に実施したのは、以下の活動です。

①フェアトレードの概要学習

サステイナブルな製品や社会について考える

  • ロングホームルーム(LHR)、授業で、海外と日本の動画を視聴し、日英語でフェアトレードについて概要学習。
  • フェアトレード商品のカタログ等を見て、日本でどのようなフェアトレード製品が販売されているかを考え、学ぶ。
  • この学習を踏まえ、学校祭でフェアトレード商品を売ることについて生徒に考えを聞いたところ、とても良い活動なので是非しましょうという前向きな返事が返ってきたことから、実施を決めました。

②学校祭の模擬店で、フェアトレード商品の販売

  • 活動についてのポスターは、事前に絵が得意な生徒が作成。
  • 模擬店会場(一教室を確保)にて、フェアトレードのパネル・資料展示(札幌市から事前にお借りした)、商品販売。いくつかの商品(例えば、インドの女性が作っている皮革を使った製品)については、生産の過程や、生産者の様子がわかる資料を展示。
  • 海外で作られた食品や手工芸品などのフェアトレードの商品を、事前にお店からお借りして、当日は生徒が交代制で店番。生徒がシフト表を作成。
  • 生徒は、お客様と積極的に交流し、商品の説明。
  • Assistant Language Teacher (ALT)二名も生徒と共にお店に出てくれました。

③ 学校祭の売り上げ寄付

  • 活動後、フェアトレードの商品をお借りしていたお店に返却。
  • 売り上げは、生徒と相談の上、北海道盲導犬協会を訪れて全額寄付。夏休み中に、生徒とALTとともに盲導犬訓練施設を見学し、協会や盲導犬の役割について理解を深めました。

④キャリア教育(インターンシップ・ボランティア)

勤務校では、進路指導の一環として、2年生全員がインターシップに参加していました。この年、フェアトレードショップ「みんたる」が、生徒をインターンシップ生として受け入れてくださいました。
参加生徒たちは、店主の和田美加代さんからフェアトレード商品を使った飲食物の提供や、商品の仕入れ・陳列など、フェアトレードや経営全般について学び、職業経験を積ませていただきました。
さらに、週末行われたフェアトレードフェスタinさっぽろでのボランティア活動に、約10名の生徒が自主的に参加しました。

⑤ 英語でプレゼンテーション

年度内に実施した国際理解教育の活動から、自分で特に印象に残ったものを選び、活動内容や感想を英語で書き、練習して発表するという、グループプレゼンテーションを行いました。
スライドを使い、メモなどは見ずに全員が発表し、代表チームのプレゼンテーションについては札幌市研究開発事業の公開授業としました。トピックを自分で選び、実際の自分の経験を伝えるため、英語で書き、発表することがスムーズに進められたと感じました。

活動で大切にしたこと

この活動では、皆で力を合わせれば社会に貢献できるのだという実感を持ってもらえればと思い、気負わずに参加する雰囲気を大切にしました。
また、生徒それぞれの強みや興味・関心を存分に活かし、何らかの学びを得られるように努めました。
例えば、フェアトレードについて学ぶ全員参加の部分もあれば、ポスター作成、陳列、販売、会計といった強みを発揮する場面、盲導犬に会える場面、お客様やさまざまな団体・企業の方と接してコミュニケーションを取る場面、英語で発表する場面。
協働することで、自分や仲間の強みを新たに発見し、サポートし合っていました。
生徒は、フェアトレード商品について家族と買い物の際などに話していたようで、三者懇談では保護者から温かいフィードバックをいただきました。

齋藤 菜奈子(さいとう ななこ)

札幌市立高等学校 教諭


アフリカやアジアで、教育担当官として児童や教員の支援に携わった後、十数年前に公立高校の英語教諭に転職。勤務校では、海外の高校との交流、フェアトレードやSDGsをはじめとする実践を通じ、英語を使いながら学び、多様な文化への興味関心を高め、地域社会や海外に貢献する教育活動を取り入れている。
社会活動では、米日カウンシル が主催するTOMODACHIイニシアチブで、大学生のメンターとして四年間活動し、女性・若者のリーダーシップ能力育成に努めてきた。

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