2018.12.11
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定時制という選択肢(1)

定時制高校と聞いて、どんなイメージを持っていますか?働きながら学んでいる、夜に勉強している、人数は少ない...など。実際に見たことはないけど「こうかな~?」という人や、全然イメージがわかないといった人が多いのではないでしょうか?夜間に限らず、定時制の学校数自体がどんどん減っているので、今の定時制高校を知っているという人は、教員をしている人でも少数派かもしれません。今回は、勤務校に限らず、定時制高校の現状について記事を書いてみました。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

そもそも定時制って?

そもそも定時制高校とは、どんな高校のことを言うのでしょうか?就労しながら通いやすい夜間のイメージがあるかもしれません。しかし、学校教育法上では「夜間その他特別の時間又は時期において授業を行う課程」とされており、夜間部以外に午前中や午後に授業を行っている学校も多くあります。全日制に比べて授業を行う時間帯が短いので、卒業までに4年間を要する場合が多いですが、通信制と併修したり、他の部(時間帯)の授業を受けたりすることで、3年間での卒業が可能になることもあります(学校によるため一概には言えませんが)。

もともとの設置の経緯としては、中学を卒業して就職するといった理由から、全日制に通えない勤労青少年の学びの場としての役割が強かったようです。そうした事情もあって、定時制=夜間というイメージを持つ人も少なくないのかもしれません。

ちなみに定時制の課程を持つ学校数(以下は公立と私立合計数)を見てみると、
(平成14年)843校 
(平成24年)681校
と、162校減少しています。一方で、在籍する生徒数は平成14年の約11万人(全日制は約380万人)という数は平成24年も同程度(全日制は約320万人)で横ばいとなっています(出典:文部科学省「学校基本調査」)。

働いている?

もともとの設置目的が勤労青少年の学習の場と述べましたが、現在はどうでしょう?文科省や定通振興会の調査によると、以下のような状況になっているようです。
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(昭和57年度)
就労率:82.7%(定職:68.4%、アルバイト:14.3%)

(平成6年度)
就労率:69.9%(定職:34.7%、アルバイト:35.2%)

(平成23年度)
就労率:42.0%(正社員・契約社員・派遣社員:1.9%、パート等:39.3%、自営:0.8%)

(出典)
昭和57年度、平成6年度資料…文部科学省
平成23年度…平成23年度文部科学省委託事業「高等学校定時制課程・通信制課程の在り方に関する調査研究」 (公益財団法人全国高等学校定時制通信制教育振興会))
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簡潔に言えば、かつては多くが定職に就いた状態で学校に通っていたのに対し、現在は就労していない生徒が半数以上を占め、就労の形態もバイトがほとんどという状況になっています。この背景には社会の変化とともに多様な働き方が生まれたこともあるでしょうが、入学している生徒たちも設置当初とは大きく変わってきていると言えると思います。

ただ、就労に関しては学校や地域によっても差があるようで、私の勤務校のように8割近くが就労している学校、正社員として雇用されながら通学している生徒が一定数いるという学校、逆に就労している生徒がきわめて少ないという学校もあったりするようです。

定時制高校では、就労していることによるメリットも存在します。「実務代替」といって、職業に関する教科・科目を履修する際に、その科目と密接に関連のある仕事に就いていると、それを教科・科目の単位の履修として認めてもらえる制度があります。もちろん、年間を通して一定の日数や時間数勤務したり、レポート等を提出したりして、その成果が良好であるといった条件をクリアする必要はあります。

また、一定以上の就労があれば、教科書や給食に関する費用の一部が補助されたり、自治体によって修学資金の貸し付け(条件により返還免除あり)などの制度もあるようです。

ちなみに定時制高校にはPTAでなく、ETAという組織がある学校もあります。雇用主(Employer)と教師(Teacher)の会で、就労先と学校とが連携するための組織です。私の勤務校の場合では、職場を訪問して情報交換したり、生徒の活動に対して金銭面での支援をいただいたりするなど、多くの協力をいただいています。

給食がある?

以前の夜間定時制の場合は、仕事が終わって登校する生徒が多く、夜間に営業している店なども少ない社会情勢なども踏まえ、給食が提供される学校が多かったようです。給食の時間帯は、登校してすぐや、1時間目が終了してからなど、学校によりますが、午後5時~6時くらいの比較的早い時間帯が多いです。

ただ、最近は夜間に営業する店が増えたり、始業ギリギリまで就労している生徒が減ったりしたため、完全給食を提供する学校はかなり減ってきているようです。私の勤務校では完全給食が提供され、地域の食材を使ったメニューが出たり、給食担当職員からLHRで食育講座をしていただいたり、給食も教育の一環になっています。他方、パンと牛乳だけの提供や、給食自体を取りやめる学校が多くなっていると聞きます。時代の流れとは言え、少し寂しい気もします・・・。

ということで、今回は定時制の設置経緯や就労、給食について書きました。次は、授業や行事、大会など、もう少し学校生活に関連の深い内容を紹介したいと思います。

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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