2019.01.24
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定時制という選択肢(3)

前回まで、定時制高校の設置目的や実態の変化、授業や学校行事、部活などの様子について記事を書きました。今回は、学校内での生徒同士や生徒と先生との距離感など、人と人との関係について書いてみました。ただ、勤務校に該当するように、少人数であることを前提で書いたので、大規模な定時制高校ではまた違った事情になるかもしれません。

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭  山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路

良くも悪くも少人数

定時制高校も、1学級あたり40名という募集人員自体は全日制と変わりません。ただ、志願者が少ない学校(特に夜間)も多く、その場合は少人数となります。学校によっては1クラスが数名というところもあります。そこに選択科目が開講されるとなると、さらに少人数の授業も出てきます。例えば、1クラス5名のうち、Aの科目を2名が選択、Bの科目を3名が選択といった具合です。当然、クラス替えもなく4年間を過ごすわけなので、そこでの人間関係はとても濃いものになります。

(1)一人ひとりの存在が大きい
 少人数ならではといえば、一人ひとりの存在が非常に大きいということです。意見・要望は通りやすいですし、一人ひとりが与える全体の雰囲気への影響も大きいです。学校行事などでアンケートを実施しますが、「これをやりたい!」と書いたものがすんなり実現することもあります。
 一方、校内で生徒会や行事の運営について役割分担しようとすると、一人に割り当てられる仕事は多くなりがちです。学年が上がれば、クラスの大部分が生徒会役員ということにもなります。また、体育祭などで出番が回ってくることも多く、様々な行事はまさに全員参加という感じです。

(2)年次が違ってもお互いに分かる
 4つの年次が一緒の学校で生活しているわけですが、少人数だと年次が違っていてもお互いに知り合いです。場合によっては、年次を超えて仲が良く、年齢などもあまり気にせずに話し合えるような雰囲気もあります。
 修学旅行や体育などを2つの年次合同で実施したり、大規模校なら年次ごとにやる行事(進路講話など)も全校生徒で行ったりするため、他の年次の生徒と顔を合わせる機会も多いと思います。勤務校で講話などでグループワークをやる場合もあり、異年次の生徒が一緒で大丈夫だろうか?と心配したりするのですが、実際やってみると、上級生が下級生をリードして同じ年次だけのときより盛り上がっている印象です。
 学校というと、どうしても同じ年齢の生徒同士の繋がりが強くなりがちで、1歳違うだけで大きな差を感じてしまうという生徒もいます。そういう意味で、定時制の場合は、異なる年齢層の生徒たちが入り乱れており、そこから学べることも多いのかなと思います。

(3)うまい距離感・お互いを尊重
 少人数の中で険悪ムードというのは、子どもでも大人でもツライと思います。卒業まで4年間ずっと同じメンバーとなると、ちょっとしたすれ違いもあって当然です。それでも、近づいたり離れたり、お互いにうまい距離感を保ちながら生活できている生徒が多いと思います。少人数だからこそ、お互いの大変さも分かっていて、尊重し合っているのだろうと思います。

先生との距離も近い

生徒同士の距離だけでなく、先生と生徒の距離も非常に近いと思います。

(1)教員も生徒全員のことが分かる
 勤務校は全校生徒で1クラス分の人数ですので、授業を担当しているかどうかに関係なく、校長先生・教頭先生も含めて、全職員が全校生徒のことをよく知っています。顔と名前はもちろんですが、「先日こんなことがあった」という学校生活での出来事まで、皆が知っている状況です。ですので、普通は職員会議などであれこれ報告するようなことも、皆で生徒を見ているので、会議を待たずして皆分かっていることになります。
 生徒側からすれば、これはメリットでもあり、例えば何か相談事があったとき、自分が話しやすい先生が1人いれば、授業や年次の担当に関係なくスムーズに相談できると思います。

(2)一人ひとりとのエピソードが濃い
 高校生活を通して、先生と面談したり、個別に呼ばれて指導されたという経験が少ない人もいると思います。人数が多ければ、一人ひとりというより、クラス全体や学年全体に話をすることになります。他方、定時制では少人数な上に、本当に多様な生徒が在籍しています。なので、同じクラスといっても、全員に共通してすべき話よりも、個別に一人ひとりに合わせてすべき話が多くなります。
 年に何度か全員と面談する機会を設けているのですが、何もない時期でも1人と30分以上は話します。例えば、バイトが決まらず悩んでいる生徒がいたら、現状を聞いて、一緒に探して、面接の練習をして…といった具合で、1週間くらいの間に何時間も一緒に話をすることになります。そういう事情もあり、人数は少ないですが、担任している生徒全員について、それぞれ深い思い出があります。


少人数で生徒も教員も距離が近いと、メリットも多いと思います。当然、デメリットもあり、それを心配する人もいます。でも、うまくメリットを活用して、その環境で成長していくことが大事だと思います。ということで、今回はどうしても少人数になってしまう定時制高校(特に夜間)の人間関係について記事を書きました。

ちなみに、先日、withnewsの取材を受け、勤務校の様子が掲載された記事が配信されました。ここまで紹介してきた「定時制という選択肢(1)~(3)」の記事の内容が、より具体的に書かれており、現在の夜間定時制高校の様子を知るには、すごく分かりやすいと思います。良かったら、こちらもぜひ読んでみてください。
https://withnews.jp/article/f0190111000qq000000000000000W07z10401qq000018484A
「夜の定時制、地区唯一は工業高校 訪ねると、不登校越え「人生最高」」
(withnews2019.1.11.配信)

高橋 英路(たかはし ひでみち)

前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭


クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。

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