2024.09.10
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ユネスコスクールへの加盟を通じた、体験型の実践教育〜国際協力機構(JICA)の教育プログラム参加

こんにちは。
今回は、ユネスコスクールへの加盟を通じた実践教育の例として、国際協力機構(JICA)が実施する教育プログラムについてお伝えします。

札幌市立高等学校 教諭 齋藤 菜奈子

国際理解教育の様々な取り組みを、学校として継続的な教育活動の枠組みで行うことが大切だと実感し、ユネスコスクールへの加盟が一つの鍵になるのではないかと考えました。ユネスコスクールは、ユネスコ憲章をもとに平和や世界的な連携の実践を行う学校の枠組みです。
すでに学校としても姉妹都市であるアメリカ・ポートランド市の高校との交流や、地域の経済活動との連携を行っていたことから、これらのグットプラクティスを他校と共有し、他校から学ぶことは意義深いと感じました。

ちょうど勤務校でカリキュラム改革が進行していたため、ユネスコスクールについて調べ、他の複数の高校の担当教諭にインタビューするなど準備を重ねました。学校としての新しい取り組みの一つとして加盟を提案して、申請の手続きに入りました。そして三年を経て、ようやく加盟が認められました。

加盟後、持続可能な開発のための教育(ESD)活動に対する「ユネスコスクールSDGsアシストプロジェクト」に応募し、活動助成金をいただきました。以下の活動は、この助成金と、市立学校国際理解教育研究指定校の予算を活用して実施したものです。

「世界が100人の村だったら」

国際コースの選択科目を履修している生徒を対象に、「世界が100人の村だったら」のワークショップを、二回(二年間)実施しました。講堂を使用し、二時間連続の授業形式で行われました。このワークショップ(JICAの出前講座)は、文字通り「世界が100人の村だったら」と想像し、多様性や経済格差などを、体を使って勉強するプログラムです。

ワークショップ参加を通じて、国際的な問題について身近に感じ、日本と諸外国とのつながり、日本が果たす役割、そして一人ひとりが貢献できる取り組みについて考えるきっかけを作ることを目的としました。また、生徒たちがより積極的に国際協力活動(校内外でのボランティアなど)に参加し、異なるバックグラウンドを持つ人々と交流できるコミュニケーション能力を養うことも目指しました。

ワークショップの内容は生徒の関心を引きつけるもので、富の配分の不公平さや識字率、文化の違いなどを自分ごととして考えられる機会となり、大いに盛り上がりました。講師は、アフリカやアジアなどで活動経験がある海外協力隊のOB/OGで、休憩時間には生徒たちから協力隊への応募や外国語の取得方法などについて質問が絶えませんでした。

JICA北海道(札幌)を見学

「世界が100人の村だったら」に参加したことをきっかけに、市内にあるJICAほっかいどうちきゅう広場(世界的課題や諸外国とのつながりを体感できる体験型展示施設)を訪問し、日本の国際貢献の現状やJICAの活動、海外に関する展示を見学したいと考えました。これを踏まえ、校外活動として見学を計画しました。JICAで受け入れている研修生の出身国や、海外協力隊等の派遣国に関する展示も非常に興味深いと感じていました。

 当日、生徒たちは三時間目の後に学校で昼食をとり、各自で施設に向かいました。学校から施設までは、市内とはいえ移動に時間がかかる場所にあったため、集合時間はお昼過ぎとしました。

施設では、JICAの活動内容や北海道センターの役割、SDGsに関する展示を、スタッフの方々の解説を聞きながら見学し、日本の国際協力や異文化について包括的に学びました。カフェレストランではハラール料理のメニューやバイオトイレを実際に見て、様々な教科での学びが繋がる瞬間がたくさんあったようです。学校祭で販売したフェアトレード商品が、レストランでも販売されていることに生徒も気づきました。

また「世界が100人の村だったら」のワークショップでの学びを反芻するような内容や展示も多く、自分たちが参加してきた活動とJICAのつながりについても学ぶことができました。さまざまな国の伝統的な衣装を着用し、スタッフの方々から海外での経験を教えてもらった時、生徒たちは本当に生き生きとしていました。

活動を終えて

地方都市の公立高校では、海外の方と交流し様々な文化に触れる機会が限られており、また予算も少ないことが多いです。生徒の体験・発見は、大きく成長を促し、時には人生にインパクトを与えます。そのため、いろいろなリソースを活用して情報面や資金面で協力を得ることが大切だと考えます。このような活動を通じて、生徒が国際的な視野を広げ、将来に向けて自分の役割を考えるきっかけになることを期待しています。

齋藤 菜奈子(さいとう ななこ)

札幌市立高等学校 教諭


アフリカやアジアで、教育担当官として児童や教員の支援に携わった後、十数年前に公立高校の英語教諭に転職。勤務校では、海外の高校との交流、フェアトレードやSDGsをはじめとする実践を通じ、英語を使いながら学び、多様な文化への興味関心を高め、地域社会や海外に貢献する教育活動を取り入れている。
社会活動では、米日カウンシル が主催するTOMODACHIイニシアチブで、大学生のメンターとして四年間活動し、女性・若者のリーダーシップ能力育成に努めてきた。

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