愉しい授業を創る「特別活動と教科をつなぐ学び編」
学校生活にはさまざまな活動があります。
日々の生活に潤いをもたらし、非日常性を子ども自身が実感する場面は、子どもたちにとってなくてはならないものです。
特別活動は、教室では味わえない貴重な学びをもたらしてくれます。
今回はそんな活動を、学級通信をもとにつづってみたいと思います。
浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授 川島 隆
12月10日の出来事をつづる
学級通信を書いている先生は、今、どれくらいいるのでしょうか。
私が、勤務していた小学校では、比較的多くの先生が書いていたように思います。
小学校に勤務していたころは、学級通信を書いては、他の先生方と交流する機会をもっていました。
これはある年、6年生を担任したときの学級通信につづった内容です。
学校生活には、いろいろな出来事があります。
この学級通信では、学期末を迎えた12月10日の出来事、委員会主催で行われた「歌合戦」と体育の鉄棒の授業をテーマとして、子どもの声(その日の日記)を紹介しながら、担任としての思いや願いを伝えたものです。
委員会主催の「歌合戦」に参加
ミュージック委員会が、「歌合戦」を企画し、全校の子どもたちに向けて、開催を呼び掛けてくれました。
昼休みに、出場を希望した子どもたちが体育館に集まって、ステージ上で歌声を披露するという、企画です。
クラスで出場するところもあれば、3人ぐらいのグループをつくったり、中には一人で登場する子どももいました。
歌うも自由ですが、聴くのも自由ですから、結構多くの子どもたちが友達の歌声を聴きに集まってきます。
ですから、ステージに上がって、いざ歌うとなると、大勢の聴き手を前にして、緊張感も高まります。
でも、こうした経験は、普段の学校生活では味わえません。
まさに非日常の貴重な経験です。
そんな中で、私が担任していたクラスの子どもたちは、全員での出場を決め、練習して、この日に歌ったのでした。
子どもたちの思いはさまざまです。
大事なことは学級通信にも書いていますが、全員で参加し、一つの舞台、場を共にし、一つの歌を歌えたということに意味があると考えています。
そこでは、自然に子ども同士の関わりが生まれ、問題も起きるかもしれませんが、それも含めて関係が深まるきっかけになります。
体育授業の鉄棒運動「組合せ技」の発表で
一方、その日の5時間目の体育の授業。
単元末の発表の場でした。
「上がる」「回る」「おりる」の組合せ技の発表です。
発表という意味では、共通しますが、こちらは、教科の授業です。
しかも、個人での発表です。組み合わせる技も、それぞれに異なります。
しかしながら、学級通信にもつづっていますが、
この日初めて技ができた友達がいると、自然に拍手が巻き起こりましたし、個人種目なのですが、みんなで創る・みんなで支える、そういう雰囲気が感じられたのでした。
指導する者として、学級担任としてとってもうれしいことでした。
子どもたちの声にはそうした内容はつづられていませんでしたが、子どもたちの次に向かう姿勢は、そうした雰囲気が醸成されていたからこそではないかと思うのでした。
むすびに

特別活動における見方・考え方(筆者作成)
「特別活動(歌合戦)」と「体育の授業」は、学校生活の中でも、全く異なる場面ですが、いずれも子どもたちの自主的な取組が重要ですし、それぞれに培われた力が往還し、相互に影響し合い、より確かな力として、育まれていくのだと思います。
「学習指導要領解説特別活動編」には、特別活動と各教科の関連について次のように示されています。
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特別活動は,実践的な活動として,様々な集団活動において,自己や集団の生活上の課題の解決に取り組むものである。このため,各教科等の学習で獲得した資質・能力などが,集団活動の場で総合的に生かされ,発揮されなければならない。逆に,各教科等で育成された資質・能力は,特別活動において,実生活上の課題解決に活用されることによって,思考力,判断力,表現力等は鍛えられ,知識や技能は実感を伴って体得したり,各教科等を学ぶ意義の理解が深まったりするなど,より確かなものとなっていく。
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また、特別活動における3つの視点、「人間関係形成」「社会参画」「自己実現」は、まさに学級づくりの中核をなす要素であり、各教科の中に息づいているものでもあります。
すなわち、愉しい学級づくりを生み出していく基盤になるのではないかと思いました。
学校生活のさまざまな場面を、子どもの姿を注視しつつ、子どもの育ちを支え、愉しい授業につなげていきたいと思います。
参考資料
- 文部科学省(2018)「学習指導要領解説特別活動編」東洋館出版社、pp34-36

川島 隆(かわしま たかし)
浜松学院大学地域共創学部地域子ども教育学科 教授
2020年度まで静岡県内公立小学校に勤務し、2021年度から大学教員として、幼稚園教諭・保育士、小学校・特別支援学校教員を目指す学生の指導・支援にあたっています。幼小接続の在り方や成長実感を伴う教師の力量形成を中心に、教育現場に貢献できる研究と教育に微力ながら力を尽くしていきたいと考えております。
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