誰でもできる授業の中でつながりを作る〜算数じゃんけんの活用編〜
国語も算数もいわば、基礎教科と言われるものです。
「読み・書き・そろばん」と言われたことがあるくらい、「書くこと」「読むこと」はできるに越したことはないですし、ある程度はできなければいけません。
ある程度できる上で、応用や活用が成り立つものです。
ただし、「ある程度」と言っても、個人差はあるのが現実です。
同じ指導をしても、ある児童は記憶に残りにくいこともありますし、他の児童は難なく問題を解くかもしれません。
そういった子ども理解を前提に、授業をし、学習指導することが重要です。
大阪府泉大津市立条南小学校 大橋 健太郎
はじめに 〜算数の導入で繋がりを作る〜
では、授業の導入ではどうすると良いでしょうか。今回は、「算数じゃんけん」をご紹介します。
算数じゃんけん
今回、紹介するのは「算数じゃんけん」です。やり方は次の通りです。
【やり方】
1. ペアでじゃんけんをして、出した指の数を足し算する。(片手)
2. 出した指の合計の数を、瞬時に言う。
3. 終わったら握手をして、次の相手を探す。
4. 時間の許す限り何度も繰り返す。
このように、取り組みます。
ここでのねらいは、以下です。
・計算を素早くすること
・普段、あまり話すことのない児童と交流すること
これを意識しながら、ちょっとした活動のポイントをお伝えします。
ちょいポイント① 子どもの姿から「教師」がルールを作っていくこと
算数じゃんけんのはじめ方は、
・最初は隣とすること
・その後は立ち歩いてどんどんすること
だけです。
このルールで行っていくと、子どもたちは2人だけでなく、3人、4人でじゃんけんをしたりします。人数が増えると、計算の難度が上がります。
子どもたちは、自分たちのルールを適用してもらえると、どんどん工夫をするようになります。その工夫をした姿を見つけ、教師は全体に伝えていくことが大切です。
ちょいポイント② 子どもたちの声からルールを作ること
今度は、子どもたちの声からルールを作る方法です。ポイント①との違いは、なんでしょうか。
ポイント①は子どもたちの姿から教師がルールを設定する方法です。それに対して、ポイント②は子どもたちがアイディアを出し合い、実際に決めていく方法です。
つまり、子どもたちの姿を見て、教師から「〇〇の方法もありにしませんか」と問いかけるのが、ポイント①です。
それに対してポイント②は、子どもたちからの「先生、〇〇の方法も取り入れてほしいです」という意見で作る形です。
例えば、ポイント②では、こんなやり取りをします。
「やってみて、こんな方法がいいとか、アイディアありますか?」
「今日は、2人でしたけど、3人でもしたいな!」
「私もしてみたい!」
「4人もありだと思います」
「みなさんはどう思いますか」
このようなやり取りをしながら、児童と教師で一緒に決めていきます。
ちょいポイント③ 教師からの声かけ
いくら楽しい活動とはいえ、取り組まない児童もいます。特に集団活動が苦手な児童の場合、積極的に取り組むことが難しいことがあります。
しかし、担任としては、そんな児童も巻き込みながら、「算数じゃんけん」をしたいと考えることもあるはずです。そんなときにおすすめな方法は、「教師と算数じゃんけんをする」ことです。
教師側から、「先生とじゃんけんをしよう!」と声をかけると、意外に児童は「いいよ!」と答えてくれます。そのような形で、児童が動き出すきっかけを作るといいです。
ちょいポイント④ 待つこと
「先生としようか」と声をかけても、「やらない」という児童もいます。では、どうやって巻き込んでいくといいでしょうか。
ポイントは、「待つこと」です。
近年、「待つこと」は、マイナスに捉えられることが多いように感じられます。ICTの普及により、便利な世の中になりました。速く正確にできることが何かと大前提で、私たちもそれに慣れているように感じます。
しかし、待つことは本来、「幸せ」の要素もあるはずです。メールができなかった時代は、手紙の返信をドキドキしながら待ったり、携帯電話がなかったころは、家の電話に早くかかってこないかと、そわそわして待ちわびたことでしょう。
また、学校では、子どもたちの成長を「待つ」こともあるでしょう。そっと声をかけたり、見守りながら、児童の成長を願うことも多いはずです。
そう考えると、「待つこと」は耐え難いものではなく、幸せな要素もあるはずです。待つことは教師の大切なスキルと言えます。
では、待ち続けて、声をかけ続けて、どのタイミングでこちらが踏み込んで動くと良いでしょうか。
それは、児童が「先生、やろう」と言ったときです。このタイミングはいつ来るかは、わかりません。わかるのは、その児童と関わっている教師だけです。
その瞬間が来るまで、教師は見守りながら、待ち続けることです。そして、児童が動き出したタイミングで、教師の思いを伝えるとよいでしょう。
終わりに 教師の願いも大切に
ちょいポイントで紹介した、「子どもたちからの提案」は確かに大切です。しかし、必ずしも、子どもたちから出るとは限りません。
教師から、提案することもとても良いことです。
つまりどんな活動でも、ねらいをもち、取り組み続けることで、それぞれの先生方にベストな方法が見つかるはずです。そこにいくまでの大前提は、「教師の願い」をもつことではないでしょうか。

大橋 健太郎(おおはし けんたろう)
大阪府泉大津市立条南小学校、kyoso's サークル所属、国語教育 大阪探究の会所属
「こどもの思考が生きる」授業を目指して、日々子どもたちと共に学んでいます。
子どもたちが教えてくれたこと、子どもの姿から学んだことを読者の皆様と共有していければと考えています。
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