2025.12.10
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日々の授業研究をどうつくるか ―子どもファーストで語り合う学校・職員室へ―

前回は、巨人の桑田真澄さんの言葉を手がかりに、「学び、挑戦する組織」について考えました。
そこでは、自主性や個別性が尊重され、教師の姿勢が組織の成長につながることを見てきました。

今回は、その視点を学校現場の日常に落とし込み、「日々の授業研究」について考えてみたいと思います。

西宮市立総合教育センター 指導主事 羽渕 弘毅

日常の会話こそ授業研究である

特別な研修の場だけが授業研究ではありません。
むしろ、職員室の日常の会話にこそ授業研究の核心が宿っています。

「今日の授業で、あの子こんな表情をしていたよ」
「この前の単元のここ、もう少し工夫できるかも」

こうした「子どもの姿を中心にした対話」が自然に生まれる学校は、日々の学びが循環していると感じます。
授業の中心は子どもである。
その当たり前を、職員室でも保ち続けられること。これが授業研究の出発点だと考えています。

学ぶ余白はどこへ?

一方で、授業研究の現場では、次のような課題もよく見られます。

・講評が長すぎて、学ぶ余白がなくなる
・子どもの姿より「型」や「指導法」の話に偏る
・若手教員が発言できない雰囲気が生まれる

こうなると、学びが「受け取るだけのもの」になり、挑戦の意欲が失われてしまいます。
本来、授業研究後は、
「次はこうしてみよう」
と語り合うためのスタート地点であるべきではないでしょうか。

試行錯誤を語り合う文化をつくる

前回触れた「主体的に学ぶ姿勢」は、授業研究の場で育ちます。
うまくいった場面だけでなく、うまくいかなかった試みも共有できること。
失敗を恥じることなく、「じゃあ次はどうしようか」と前向きに議論できること。

そうした空気を持つ学校は、挑戦が息づき、学びが止まりません。
「今日は失敗だったんですが……」と言える教員がいる学校は雰囲気がよい。
実践の中に、それぞれの伸びしろが確保されているからだと思います。

校内研修に余白を

では、どうすれば組織として挑戦を支える授業研究になるのか。
私が以前校内研究をデザインする際に意識していたことは、1回を30分で設計することです。

研修を詰め込みすぎず、

・終了後に残って語り合う時間
・クラスに持ち帰って試せるようにデザインする時間
・仲間と雑談しながら深める時間

を意図的に残すのです。

また、討議のグループ編成も年齢・年次・専門をあえて混ぜることを大切にしています。
多様な視点が交わることで、子どもの理解が立体的になり、同じ授業でも違う景色が見えてきます。

子どもを中心に、教師も学び続ける

こうしてみると、授業研究は“イベント”ではなく、学校文化として育てるものです。

・子どもファーストで語り合う
・余白を残して学ぶ
・試行錯誤を共有する
・個性を混ぜる

これらが重なったとき、教師は学び手として再び歩き始め、組織は静かに、しかし確かに前進していきます。

前回紹介した桑田さんの言葉に重ね合わせるなら、授業研究とは、教師が「学びを語り合える日常」を取り戻す営みなのだと思います。

続く…?次回は?

次回は、こうして学校に生まれる「日々の学び」を、どのように子どもの学習へつなげるか。
「授業の質を高めるためのチームづくり」をテーマに考えてみます。

羽渕 弘毅(はぶち こうき)

西宮市立総合教育センター 指導主事
専門は英語教育学、学習評価、ICT活用。高等学校や小学校での勤務経験を経て、現職。これまで文部科学省指定の英語教育強化地域拠点事業での公開授業や全国での実践・研究発表を行っている。働きながらの大学院生活(関西大学大学院外国語教育学研究科博士課程前期)を終え、「これからの教育の在り方」を探求中。自称、教育界きってのオリックスファン。

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