2019.08.22
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風化させない、学び続ける ~この夏の学びから~

夏休みもまもなく終わります。リフレッシュできましたでしょうか。私はこの夏は研修が多くて、たくさん学びました。「タブレット研修」のように、もともと目的が決まっていて「学ぶ」ことも多かったのですが、そうではない「学び」も多くありました。この夏の学びを振り返ってみたいと思います。

熊本市立龍田小学校 教諭 笹原 信二

8月といえば

平和について考えた学級通信

「学級通信」平和についての特集号

私の誕生日は8月6日です。小学校低学年の時には「なぜ、ぼくの誕生日には、みんなお祈りするのだろう?」と思いました。学年が上がって、戦争について学習するとともに、自分の意識も変わってきました。

個人的に広島の街が好きで、何度か訪れました。熊本市は修学旅行で長崎を訪れるので、10回以上長崎には行きました。8月6日、8月9日、8月15日は何の日か知っているのは、いわば常識でした。

最近では、何の日か知らないという人も増えてきました。「戦争があった」ということすら知らないという人も。「8月といえば」今なら「花火」「かき氷」「旅行」「イベント」。。。私より人生の先輩は、やっぱり「戦争」となるようです。

公害、差別、災害、etc,風化させてはいけないものがあります。戦争は絶対に風化させてはならないのです。新聞では特集が組まれ、テレビでも戦争についての番組が8月は多くあります。

しかし、戦争について伝えていくことが難しいのは学校現場にいる誰もが「戦争を経験していないこと」です。伝え聞いたり、調べたりしたことで、知ったことを子どもたちに話しているわけです。しかし、それをしなければ、本当に戦争はただの過去の出来事になってしまいます。

写真の学級通信は、修学旅行に行く前に、新聞でスクラップしておいた記事を読んでの思いをまとめたものです。8月の新聞やテレビから、戦争について子どもたちに考える材料をそろえておきたいものです。

大村はま氏の実践から

大村はまさんの黄金の椅子

大村はま先生が使われていた「黄金の椅子」

NIE全国大会宇都宮大会に参加しました。基調講演で、大村はま記念国語教育の会事務局長の苅谷夏子氏のお話を聴きました。その中で、昭和22年の実践が最も心に残りました。

昭和22年、大村はま先生は高等女学校の教師から、公立の中学校の教師に変わられます。戦後まもなく、教室も椅子もノートもない時代。まわりは焼け野原。生きていた喜び、久しぶりの再会、100人の「教室」、子どもたちは「暴れる」状態で、授業は思うように進まなかったそうです。

「もうやめよう」と思い、恩師に相談に行かれると「ホンモノの先生になるチャンスかもしれないね」と言われ、どうしていいかわからなくなったそうです。これでだめだったら、という気持ちで、新聞や雑誌から、一人一人に違う教材を、一睡もしないでつくられた、100の教材を用意して翌日にのぞまれます。

次の日、やっぱり暴れる子どもをつかまえては抱きしめながら教材を渡し「ここはこうやるのよ」「ここはこんな風にしてごらん」と一人、また一人とこなしていかれました。

何人かに渡した頃、教材をもらうための列ができる。当時は配給の時代。並ぶことには慣れています。並ぶのは、よいものを早くもらうためです。初めて、整然とした学級の規律がうまれたそうです。さらには、子どもたちは一心に教材に取り組んだそうです。「いかに伸びたかったか」「何かを求めていたか」
目的意識があり、魅力ある教材があって、やることがわかっていれば、子どもたちは学びたくなる。

写真は、大村はま先生が実際に使われた「黄金の椅子」。これを使って、生徒の横に座り、一対一の対話を続けていかれたわけです。まさに「子どもの目線に立って」。

「魅力ある教材があれば、子どもは主体的に学び、ついつい対話したくなり、深く学ぶことができる」

私は先達の教え、先人の言葉が、今こそいかされる時代がくるのでは、と思っています。優れた先行実践は、これからの教育実践をすでに踏襲されているのです。

残りの夏、一冊でも多くの本に目を通したいと思います。新しい学習指導要領での授業改善のヒントがたくさん隠されていると思っています。

笹原 信二(ささはら しんじ)

熊本市立龍田小学校 教諭
37年の教師人生を終えたが、もう少し学びたく再任用の道を選択。過去の経験を生かしつつ、新しいことにもチャレンジしていきたい。

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