2025.06.10
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資質・能力を育成するスポーツフェスティバル~異学年交流で育む主体性

体育大会でもない、運動会でもない、本校独自の学校行事である「スポーツフェスティバル(通称:スポフェス)」。
1年生から9年生までが一堂に会してのビッグイベントです。

姫路市立白鷺小中学校 主幹教諭 竹内 哲宏

スポーツフェスティバルの目標

スポーツフェスティバルの目標は、次のように設定されています。

【異学年交流】

同学年のみならず、異学年と共に取り組む中で仲間意識を実感させることで、小学部児童は中学部生徒への憧れや尊敬の念を、中学部生徒は小学部児童への思いやりの心を育む場とする。

【特別活動の資質・能力の育成】

生徒会・児童会で計画、運営、進行を担い、教師がそれをサポートすることで、本校特別活動の重点目標「あい・こと・ば」を基に、認め合い、関わり合い、高め合う場としての学校行事として取り組み、特別活動の資質・能力を育成することを目指す。

このように、学校行事である「スポーツフェスティバル」では、本校が目指す子ども像の中でも【社会をつくる子:他者を大切にしながら社会とつながろうとする子】や【がんばりぬく子:なりたい自分を目指し挑戦し続ける子】に重点が置かれています。その姿がよく表れているのが、【競争演技】と【表現演技】です。それぞれの取り組みについて紹介します。

異学年交流を重視した競争演技

競争演技は、3・4・7年生の「大玉運び」、5・6・8年生の「トリプルハリケーン」、1・2・9年生の「チェッコリ玉入れ」が行われます。それぞれの学年を3つに分け、赤組、白組、青組の3チームで行います。

「大玉運び」は、ブルーシートの上に直径150cmほどの大きさの大玉をのせます。3・4・7年生で構成されたメンバーがそれを運びます。全員のスピードを合わせたり、玉を落とさないようにみんなで声をかけ合ったりする姿が見られます。

「トリプルハリケーン」は、いわゆる「台風の目」です。長い棒を5・6・8年生で構成されたメンバーが持ってスタートします。折り返しのコーンをまわって、次のチームに渡す際に、全員が棒をジャンプしたり棒の下をくぐったりします。

「チェッコリ玉入れ」は「チェッチェッコリ」の曲に合わせてダンスをし、合図で玉入れをするというものです。ダンスタイムでは、1・2・9年生だけでなく全校生が観客席で踊り出します。その光景は壮観です。

これら競争演技は、中学部の9年生、8年生、7年生が練習を計画し、進行を務めます。教師は、サポート役に徹します。この競技を通して、他学年が関わり合い、それぞれの役割を認め合う態度を養います。

踊りの楽しさに触れる表現演技

これまで、小学部の表現運動は1・6年生、2・4年生、3・5年生のペアで創作ダンスを行っていました。それぞれ、上の学年がダンスを考え、下の学年に教えるというものです。これはこれで、上級生と下級生という関係の中で、思いやりや憧れという気持ちを抱きながら触れ合うことができてよかったです。
一方で、体育科としての表現運動系の目標を達成するには、不十分でした。異学年交流は競争演技に委ね、今年度は、より体育科の表現運動系の目標に迫れるように、1・2年生、3・4年生、5・6年生と発達段階に応じて行うことにしました。なお、中学部は、7・8・9年生が合同でソーランを行っています。小学部のダンスリーダーが、中学部ではソーランリーダーが中心となって進めることで、子どもたちが主体性を発揮して取り組めるようにしました。

例えば、今年の3・4年生では、新学期が始まってすぐにダンスリーダーを募集しました。休み時間に集まって、ダンスのテーマを話し合い、様々な意見の中から「おばけやしき」に決めました。そして、おばけやゾンビに関する動きを出し合ったのち、自分たちが表現する世界観に合う曲を決めました。その後、曲に合わせてグループごとに担当を決めて、振り付けを考えました。3・4年生の全体練習では、自分たちが考えた振り付けを他の子たちに披露し、教えていきます。曲の中には、クラスごとに振り付けを考える場面を入れました。そうすることで、多くの子がダンスの創作に関わることができました。さらに、プログラム名や衣装についても話し合う機会を設け、「自分たちのダンス」という意識を育んでいきました。

スポフェスで自分を成長プロジェクト

図1

スポフェスふり返りシート(筆者作成)

スポーツフェスティバルの練習を通して、資質・能力を育てるために図1のような振り返りシートを活用しました。本校が育成を目指す9つの資質・能力を表記しています。練習後に、自分の取り組みを振り返るようにしました。ふり返りの一例を紹介します。(①学びの力について②頑張ったこと③次にむけてがんばりたいこと)

①「自分のよいところを知る」です。理由は大玉運びの応援でとても声を出したからです。
②大玉運びで少しでも早くできるように全力で走ったことです。
③もっと全力でダンスをおどりたいです。

①「協力する」。理由はみんなで協力してダンスをおどったから。
②ダンスリーダーとしてがんばり、中間と昼休みにあきらめずにダンスリーダーをやったこと。
③スポフェスのダンスリーダーとしてまちがえないように練習をがんばる。

①「あきらめない力」だと思います。理由はダンスでまだ完ぺきではないけれど、ややできていないところを誰かにおしえつつ自分でも練習したり、いえでも練習したりするようになったのでそう思いました。

学校行事をイベントとして終わらせるのはもったいないです。その過程をいかに成長の機会に位置付けることができるか、それを大切にしたいです。

竹内 哲宏(たけうち てつひろ)

姫路市立白鷺小中学校 主幹教諭


世界遺産姫路城の目の前にある姫路市初の義務教育学校に勤めています。
資質・能力を育成するための授業づくりを中心に発信できればと考えています。

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