メンターとしての外部人材の活用
現在の学校は、総合的な探究の時間やLHRをはじめ、様々な場面で外部人材を活用することが増えている気がします。同じ内容を話すにしても、教員が話す場合、保護者が話す場合、友達が話す場合、外部の人が話す場合では、伝わり方が違ってきます。もちろん、そのときの目的によってどれが有効かは異なりますので、一概にどれが良いとは言い切れません。
今回は、勤務校の総合的な探究の時間での外部人材活用の一例を紹介したいと思います。なお、本記事での外部人材活用は、教科・科目の授業と総合的な探究の時間、LHRなどの教室内で行う実践を取り上げます。実際には、生徒会活動や学校行事、部活動などでも、多くの外部の方に協力いただいているケースがあると思います。
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭 山形県立米沢東高等学校 教諭 高橋 英路
外部人材活用のメリット
学校において、外部人材を活用することには、どんな目的・メリットがあるでしょうか?
(1)専門家からの話
特にキャリア教育などでは、1人の教員がすべての進路について精通しているとは限りません。特定の分野の専門家に来ていただき、生徒が将来目指している職業の方に話をしていただくことは、仮に教員が事前に同じ内容を話していたとしても、より説得力が増すことになります。
(2)年代の近い人の声
大学生などに協力いただく場合は、生徒にとってより近い年代の人の声を聞くことができます。同じ世代からの意見は、別世代とはまた違った印象で受け止めることができると思います。
(3)多様な価値観
協力いただく方の年代や専門分野はもちろんですが、その人が育ってきた環境の違いから感じるものも多いのではないでしょうか?遠方から来ていただく場合は、自分たちの地域で当たり前と思っていたことが全然通用しないケースもあります。自分の周りにはいない環境で育った方の声というものも、これまた新たな知見を得ることができると思います。
(4)特別感
これはメインの目的ではありませんが、「今日は〇〇さんに来ていただきます!」という特別感は、生徒の興味・関心をひきやすいですし、印象にも残りやすくなります。教室でなく特別教室で行ったり、机の配置を普段と変えたりした場合にも出てくるものです。
勤務校での事例
前述のような目的で外部の方に協力いただくわけですが、様々な形があると思います。もっとも一般的なのは、講話とかワークショップの講師として招くといった形ではないでしょうか?講話であれば生徒の人数に関わらず対応しやすく、できるだけ多くの生徒に還元することができると思います。
さて、勤務校では、総合的な探究の時間に、分野ごとのゼミ活動を行っています。私の担当する地歴公民ゼミでは地域課題解決といった視点で、4~5名程度のグループごとにテーマを決めて活動しています。その中では、「講師」「ファシリテーター」といった立場でなく、「メンター」という立場で主に学生の方々に来ていただいています。
(1)メンターとは?
メンターという言葉自体、あまり聞きなれないという方もいるかもしれません。「助言者」とか「指導者」といった意味で使われているようです。今回の事例で言えば、各グループ1名のメンターが担当し、生徒たちの考えを聞きアドバイスしたり、質問してさらに新たな考えを引き出し、最終的な目標達成に向けてサポートしてもらっています。
(2)どんな人に来てもらった?
今回は地域課題解決を目指しているので、「ワカ者」「ヨソ者」(「バカ者」)の視点ということで、年代の近い学生の方々にお願いしています。具体的には以下のような方々です。
① 起業経験のある人・・・課題を見出し解決に向けて動く!というモデルでもあります。
② 地域イベント開催経験のある人・・・地域のことで何らかのアクションをしているモデルでもあります。一参加者でなく、企画側の経験のある人から大きな刺激を受けてもらいたいと考えています。
③他地域から移住した人・・・学生時代に一時的に住んだということでなく、大学卒業後に移住した若者の声は貴重です。どこに魅力を感じたのか?実際に住んでみて感じることは?といった率直な声を聞くことも可能です。
(3)どうだったか?
今年度のゼミ活動は、8月下旬から2週間に1回くらいの頻度で行われ、毎回メンターの方々に来ていただいています。
①生徒の立場から
グループごとにメンターの方に入っていただくことで、話し合いがスムーズに進んだり、話し合いのヒントが得られたり、生徒たちにとって良い学びとなっているようです。活動時に記入する「探究ノート」を見てみると、メンターの方からの助言がメモされていたり、それが良い刺激・ヒントになった!といった好意的な記述が多く見られました。また、それぞれのメンターが自身で様々な活動を行っているので、希望者には放課後や休日などに行われる、活動と関連するイベントを紹介していただくなど、学校での学びをもとに、外に飛び出すきっかけをもらったりもしています。
②教員の立場から
少人数のゼミといっても、4~5人のグループが複数あると、1人ではなかなかカバーできない部分があり、そこをフォローしてもらえるのは非常に助かります。活動後に、グループごとに気づいた点を出してもらえるので、次回までのアドバイスなどにも役立てることができます。さらに、こちらが当たり前だと考えていたことが生徒にうまく浸透していなかったことがあり、そこは外部の人だからこそ気づいてもらえたと感じたことがありました。
ということで、外部の方の協力をいただくことで様々な効果があるわけですが、今回は「講師」でなく「メンター」として来ていただいた事例紹介でした。他にも、様々な事例があれば、ぜひ教えていただければと存じます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
高橋 英路(たかはし ひでみち)
前 山形県立米沢工業高等学校 定時制教諭
山形県立米沢東高等学校 教諭
クラス担任と、地歴科で専門の地理を中心に授業を担当。生徒達の「主体的・対話的で深い学び」が実現できるよう、p4c(philosophy for children)やKP(紙芝居プレゼンテーション)法などの手法も取り入れながら日々の授業に取り組んでいます。
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