総合的な学習の時間の実践~地域とつながるプロジェクト学習の記録と振り返り(5)
今回は、これまでのまとめとして、総合的な学習の時間での子どもの「学び」をお伝えできればと思います。
明石市立鳥羽小学校 教諭 友弘 敬之
今回は、昨年度の総合的な学習の時間での子どもの「学び」を記します。
「活動あって中身なし」とは言われないよう、子どもが学び取った「学び」の中身をお示しできればと思います。
はじめに
昨年度の総合的な学習の時間の実践は、鈴木の提唱する「プロジェクト学習の手法」を用いたものでした。
鈴木は著書の中でプロジェクト学習を8つの段階で提案しています。
今回は主に最後の段階「学びの自覚」の様子についてお伝えします。
学びの自覚の段階
総合的な学習の時間について校内でもよく話題にします。すると、このような話が聞こえてきます。
「総合って発表して終わりって感じがするよね」「何かを発表する場がないと総合が終わった気がしないよね」
その通りでありますが、少し視点を変えると、「発表を通して子どもが何を学ぶのか」を念頭に置く必要があると感じています。つまり、「発表する」という活動に至るまでに、子ども一人ひとりの「学び」があり、「発見」があるわけです。そういった整理をせず、「発表したから学習が終わった」とするのでは少しもったいないように感じています。
だからこそ、プロジェクト学習の手法には「学びの自覚」という段階が用意されています。1年間なり、学期間なりでのさまざまな活動を通して、子どもたちが何を学び取ったのかを子ども自身が自覚し、言語化できる場のデザインが、本プロジェクトの最後に必要となります。
昨年度の実践
環境のデザイン
子どもたちの1年間の活動を「学び」として言語化できるようにしていくために2つの環境をデザインしました。こちらから「学びの自覚化の学習計画」(PDF)をご覧いただけます。
一つ目は、学習を整理できる環境です。学習支援ツール(ロイロノート)内に、撮りためた写真や記録を一覧にして提示しました。子どもたちは、それらの記録を参考にしながら「そういえば、この時大変だったけど、話し合って解決してきたね」「はじめはどうなるかと思ったけど、いい出会いがあってとてもよかったね」と、活動中に感じていたことなどを思い思いに想起しながらプレゼンにまとめていました。
二つ目は、それぞれの学びを共有できる環境です。学年で実施した最後の総合は、体育館で行いました。体育館では、9つのグループに1つの円形ボード「えんたくん」を用意し、チームごとに他のチームへプレゼンを行えるようにしました。その際、気になった言葉やキーワードを付箋に記述してボードへ貼っていく形をとりました。
対話の様子

学習が始まると、どのボードにおいても活発に交流がなされていました(写真)。ほかのチームの活動に対して質問をする姿や、素直に感心する姿など1年間それぞれの立場で本気で取り組んできたからこそみられる姿がそこにはありました。
しかし、活動の中で難しさもありました。それは、「具体的に行ってきた活動を似た活動で仲間に分けて、仲間ごとに名前を付けてごらん」と促したことです。子どもたちは大変戸惑っていました。具体的な活動を抽象化して、そこから学んだことを見出すというのはもちろん大人でも難しい活動です。それを、求めてしまったことが本時での大きな反省となりました。
学習を終えて
学年で対話した後、学びの様子を言語化できるようにアンケート形式の振り返りを記述するようにしました。全体の内容としては図に示す通りです。
「今年1年の総合での学びは何ですか?」という質問に対して、中央に大きく「できる」という言葉が目立つのが分かります。周辺を詳しく見ると、「プレゼン」「対話」「まとめる」「話す」と、他者へと思いや考えを伝えたりコミュニケーションをとったりすることが多く挙げられています。一方で、「最後まで」「粘り強く」「あきらめない」等の、非認知的な側面が言語化される様子はありませんでした。今後は、そういった非認知的な側面も自覚しながら学びを振り返っていけるような工夫を行っていきたいと改めて感じました。
個別の感想もいくつか紹介します。
「一年間の総合的な学習の時間で、わかりやすく他人に自分のしていることを伝える力と、そのためにはどのようなことをすればいいのかを考えることができるようになった」
「街の環境を意識して生活するようになった。例えば、再利用できるものとできないものでゴミを区別したりできるようになった」
「人の話を聞くときに、できるだけ重要なところの聞き漏らしがないようにうまくメモを取れる力と、話し合いで批判されることを恐れずに、しっかりと自分の意見をチームのみんなに提案することができる力と、集団で行動するときに、時に周りに合わせ、時に自分が率先して行動することができる力がつきました」
どの記述を読んでも、それぞれに1年間をかけて得てきた「学び」がそこにはありました。
おわりに
本校では、総合を軸としてカリキュラムマネジメントを行うことと同時に、地域のリソースを最大限に活用して学習を実施し始めています。
子どもたちが学びに「切実性」を持てるように、今年度の実践も力を入れていきたいと思います。年度末にまた実践を報告できればと思います。
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友弘 敬之(ともひろ たかゆき)
明石市立鳥羽小学校 教諭
「単元学習」をテーマに学び続けてきました。その中で、「学習デザイン」「実の場」「問い」と、興味を広げてきました。今は「そもそも学びってなんだろう?」という問いと向き合っています。それは、子どもの学びだけではなく、教師としての、また大人としての学びも含みます。この学びの場を通して、私の問いを解決していきたいです。
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